【3093】 ○ 松本 美彦 (原作:松本清張/脚本:田中陽造) 「松本清張シリーズ・事故 (1975/11 NHK) ★★★★

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ミステリ、サスペンスとして愉しめ、メロドラマ的だが情感があり、ラストの改変も悪くない。

「松本清張シリーズ・事故」dvd1.jpg「松本清張シリーズ・事故」dvd2.jpg 「事故」1975.jpg 「事故」m.png
土曜ドラマ 松本清張シリーズ 上巻 DVD 全5枚」佐野浅夫/山本陽子/野際陽子/田村高廣/二瓶康一(火野正平)/千昌夫/渡辺文雄 松本清張『事故』(文春文庫)
「松本清張シリーズ・事故」00.jpg「松本清張シリーズ・事故」01.jpg ある晩、民家の玄関先にトラックが突っ込む事故が起きる。事故を起こしたのは運送会社のトラック運転手の山宮健次(二瓶康一(火野正平))。突っ込んだ先は会社重役宅で、夫人の山西三千代(山本陽子)が寝間着姿で出てきた。後日、運送会社の事故担当の高田(佐野浅夫)は山西宅に謝罪に行くが、三千代夫人が出てきて、夫は「出社」していると言う。その頃、興信所の調査員・浜口久子(野際陽子)は、所長の加納(田村高廣)に辞職を申し出てい「松本清張シリーズ・事故」02.jpgた。有能な部下の突然の辞意を訝しがる加納。久子は、山西三千代の浮気調査を担当していた。実はトラック事故は、久子が三千代夫人の情事の確証を得るため、自分の年下の愛人である山宮に頼んで、夫の留守に山西邸の玄関に突っ込ませたという人為的なものだった。一方、それ以前に加納は、三千代夫人から夫の山西省三(渡辺文雄)の浮気調査の依頼を受けていた。そして、山西の浮気の確証がを得るも、三千代夫人は現場を押さえることなく加納の胸に飛び込んできたのだった。そして今度は、妻の浮気を「松本清張シリーズ・事故」03.png疑った山西が加納の興信所へ調査依頼にきて、それを担当していたのが調査員の浜口久子だった。山宮に事故を起こさせた際に現場に待機していた久「松本清張シリーズ・事故」04.png子は、慌てて二階から下りてきた三千代夫人とその愛人を見て、三千代夫人の密会相手が自分が勤める興信所の所長の高田だったとわかり衝撃を受けたのだった。彼女がそのことを吹き込んだテープを聴いた加納は、同じものを彼女が山西に送れば身の破滅であると悟り、久子と山宮の殺害を決心する―。山梨県「松本清張シリーズ・事故」05.jpg内で同じ日に久子と山宮の死体があがる。遺体安置所には山宮の遺体と久子の遺体が並べられ、運送会社の高田が山宮の遺体確認のためそこを訪れた際には、加納も久子の遺体確認に来ていた。高田にすれば、片や自分の会社の社員で、片やその社員がトラックで突っ込んだ家の夫人である。高田はふと山宮が起こした事故に不自然なものを感じ、山宮の死と久子の死は関連があるのではないかとの疑念を抱く。山宮の事故当時の相方の運転手だった佐々(千昌夫)に事情を訊くなどするうちにその疑念は確証に代わり、加納と久子が公園で逢っているところを直撃して牽制する。しかし、山宮の死体と久子の死体は同じ県内とは言え50キロ離れた場所で見つかっており、その謎が高田にはまだ解けなかった―。

「事故」ぽk.jpg '75(昭和50)年放送のNHK「土曜ドラマ」松本清張シリーズ版('75年-'78年)の第4作で、原作は松本清張が「週刊文春」1962(昭和37)年12月31日号・1963(昭和38)年1月7日号合併号から1963年4月15日号まで、「別冊黒い画集」第1話として連載した文庫で200ページほどの小説です。因みに、過去5回のドラマ化は、帯番組も含め以下の通りとなっています。
 ・1972年「真昼の月(CX)」[全50回]市川和子・土屋嘉男・下條正巳
 ・1975年「松本清張シリーズ・事故(NHK)」田村高廣・山本陽子・佐野浅夫 
 ・1982年「松本清張の事故 (ANB)」山口崇・松原智恵子・中尾彬
 ・2002年「松本清張スペシャル・事故 (NTV)」古谷一行 ・斉藤慶子 ・十朱幸代
 ・2012年「松本清張没後20年特別企画 事故〜黒い画集〜(TX)」高橋克実 ・京野ことみ

 新しいものになるほど原作からの改変の度合いが大きいようですが、この田中陽造(鈴木清順監督「恐怖劇場アンバランス(第1話)/木乃伊の恋」('70年)/「ツィゴイネルワイゼン」('80年)の脚本)による脚本のNHK版は、途中までは比較的原作に忠実ではなかったでしょうか。ただ、原作が事件がいったん迷宮入りした後、不審に思った刑事が再捜査するのに対し、このドラマ版では、佐野浅夫演じる運送会社の事故担当の高田が"探偵役"になっています(ただし、この"探偵"、犯人の確証が得られたら、犯人から息子の大学進学費用300万円をゆすりとろうとするのだが)。

 夫(渡辺文雄)の浮気調査の依頼主(山本陽子)と依頼された興信所の所長(田村高廣)とが矩を越えた禁断の関係に陥ってしまい、その秘密を知った女調査員(野際陽子)とその協力者である彼女の愛人(火野正平)を局長が自分の職業的地位を守るため殺害するのは原作と同じです(原作では女調査員は真面目にこつこつ調査することだけが取柄だが、ドラマでは野際陽子が演じることで"有能な"調査員になっている)。さらに、その夫が今度は妻の浮気を疑って調査を依頼してくるのも同様です(実はその依頼した相手こそが妻の浮気相手だったということなのだが)。

 原作は途中から興信所の局長の自身の犯行の回想が入る変則的な倒叙法と言えるものでしたが、ドラマの方はもっと早くから田村高廣演じる所長が登場して、野際陽子演じる女調査員が辞めるという話もほとんど冒頭に出てくるため、つまり原作の回想をリアルタイムにしていることになります。そして、犯人が追いつめられて犯行を決意するまでが描かれていて、実際の犯行はその後で行われるのですが、スタイルとしてはよりオーソドックスな倒叙法になっているとも言えます(ちょうどNHKで「刑事コロンボ」を放映していた頃だなあ)。

「事故」m3.png.jpg ただ、泥臭い犯行場面は割愛して佐野浅夫が演じる運送会社の高田の推理に任せることとし、田村高廣と山本陽子が不倫関係に陥ってしまった男女を情感豊かに演じることに注力した、メロドラマ的色合いが濃い作りになっていますが、これはこれでいいのでは。その流れで、ラストは"道行き"のような感じで、報道上はこれも「事故」の1つに過ぎないという、冒頭のトラックの「事故」が実は人為的なものだったということに絡めたオチでもありました。

「事故」hino.jpg「松本清張シリーズ・事故」06.jpg ミステリとしてもサスペンスとしても楽しめ、「寒流」が原作の前作「愛の断層」同様にメロドラマ色が強いけれど演技力のある俳優が演じているのでしっとりした情感が出ていてよく、ラストの改変も悪くなかったです。火野正平や渡辺文雄といった脇役陣の演技まで愉しめるし、なぜか「事故」清張 m.png.jpg千昌夫が火野正平の同僚のトラック運転手役で出ていた「事故」m4.png.jpgり、公園の遊具の整備係の役で原作の松本清張がカメオ出演していたりもします。ドラマ化作品の中ではよく出来ている方だと思います。

松本清張(公園の遊具の整備係)

「松本清張シリーズ・事故」●演出:松本美彦●脚本:田中陽造●音楽:眞鍋理一郎●原作:松本清張●出演:田村高廣/山本陽子/佐野浅夫/野際陽子/渡辺文雄/二瓶康一(火野正平)/千昌夫/松本清張(クレジット無し)●放送日:1975/11/08●放送局:NHK(評価:★★★★) 

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和田泰明ブログ

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