【3091】 ○ 富本 壮吉 (原作:松本清張) 「松本清張の熱い空気 (1983/07 テレビ朝日) ★★★★ (○ 松本 清張 「熱い空気」―『事故―別冊黒い画集』 (1963/09 ポケット文春) ★★★★)

「●TVドラマ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3082】 野村 孝 「松本清張の高台の家
「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●ま 松本 清張」の インデックッスへ

後の「家政婦は見た!」シリーズへ発展したドラマ。市原悦子が嵌っている。

事故  dvd.jpg熱い空気 1.jpg 事故 ポケット文春.jpg 事故  文春文庫.jpg
松本清張サスペンス 熱い空気 [DVD]」市原悦子・吉行和子/『事故―別冊黒い画集 (1963年) (ポケット文春)』['63年]/『新装版 事故 別冊黒い画集 (1) (文春文庫)』['07年](「事故」「熱い空気」所収)
熱い空気10.jpg 渋谷の「協栄家政婦会」に所属する家政婦・河野信子(市原悦子)は、他人の家庭を次々と見て回り、その家の不幸を発見するのを愉しみとしていた。外見から見てこの上ない幸せな家庭だと思っても、必ず不幸は存在している...。信子は青山に住む大学教授・稲村達也(柳生博)の家に派遣されたが、体裁屋で二重性格の妻・春子(吉行和子)、出来損ない揃いの三人の子供を始めとして、その内実、家族がばらばらであることを見抜く―。

 1983(昭和58)年7月にテレビ朝日「土曜ワイド劇場」枠で放送されたもので、主演は市原悦子(1936-2019/82歳没)。原作は松本清張が「週刊文春」1963(昭和38)年4月22日号から7月8日号まで、「別冊黒い画集」第2話として連載した文庫で160ページほどの中編小説で、1963年9月に短編集『事故―別冊黒い画集1』収録の一作として、文藝春秋新社(ポケット文春)より刊行されています。

 面白かったです。原作の面白さに拠るところは大きいと思いますが、市原悦子、吉行和子、柳生博といった俳優陣の安定した演技力がそれを支えているよに思いました。とりわけ市原悦子は良くて、設定とサブタイトルを引き継ぐ形での市原悦子主演のドラマシリーズ「家政婦は見た!」(この作品を含め全25作)が制作されていくことになったのも頷けます(あの「家政婦は見た!」の元の話も松本清張なのかとも思わされる)。

熱い空気6.jpg 原作で起きる多くの出来事をどれくらいドラマに反映させることができるかとなあと思いましたが、出てくる順番は原作と異なるものの、夫の不倫や老母の負傷事故、熱海でのチフス事件、最後の主人公が被る仕打ちなど、結局、全部反映させていたように思います。原作の持ち味も損なわず、脚本が良く出来ていたように思います。

 後はニュアンスの違いでしょうか。ドラマでは、主人公は家政婦として訪ねた家の不幸を発見するのを愉しみとしていて、ただし、最初の内は、稲村家がどこをとっても非の打ち所がない家庭に見えてがっかりしますが、原作では、特に主人公にそうした意図はなかったものの、稲村家に出向いてみたら、この家庭がまともではなく、家族がばらばらであるこにすぐ気づくという流れになっています。

熱い空気 えんf.jpg それと、原作では最後には信子自身が災厄に遭うという、因果応報的ともとれる結末で終わっていて(文庫新装版解説のエッセイストの酒井順子氏は、逆にこのことでホッとさせられると書いていて、ナルホドと思った)、ドラマもその通りではあるのですが、ドラマではその後、耳のケガもが癒ないいちから意気揚々と家政婦紹介所を出発し、新たな派出先の門前に立って大声で「ごめんくださいまし。家政婦紹介所から参りました熱い空気 紹介所.jpgtが」と叫ぶ信子の姿で終わっています(後のシリーズ化に繋げる意味で、この付け加えられたラストシーンの意義は大きい。それとも最初からシリーズ化を考えていた?)

 原作の発表が1963(昭和38)年で、それをドラマ制作時の1983(昭和58)年に置き換えています。原作の家政婦の日当が10時間850円なのに対し、ドラマでは9時5時(8時間)で5,800 円(手数料10%)になっています。ただ、家政婦たちが普段は寄宿舎の四人部屋で生活しているというのは昭和30年代を感じます(ドラマでは、この設定を活かして、信子が同僚たちに稲村家の虚偽も皮を剥いでみせるという自身の"野望"を語る場面がありますが、原作にはこうした場面はない)。

松本清張tbs「熱い空気」.jpg 原作「熱い空気」は1966年にフジテレビで望月優子主演で、1979年にTBS「東芝日曜劇場」で森光子、長門裕之主演(監督:鴨下信一/プロデューサー:石井ふく子)でドラマ化されていて、市原悦子版が3回目のド熱い空気 yonekura.jpgラマ化でしたが、「家政婦は見た!」シリーズ化によってあまりに市原悦子の役柄が嵌ってしまったせいか、その後ずっとドラマ化されなかったところ、テレビ朝日系で2012年12月に「松本清張没後20年・ドラマスペシャル 熱い空気」として米倉涼子主演でドラマ化されました。信子と稲村家の結末は、原作と異なるドラマオリジナルの展開となっているようですが、個人的には未見です。

「松本清張の熱い空気―家政婦は見た!夫婦の秘密「焦げた」」●監督:富本壮吉●プロデューサー:柳田博美/塙淳一●脚本:柴英三郎●音楽:坂田晃一●原作:松本清張●出演:市原悦子/柳生博/吉行和子/山口いづみ/鈴木光枝/ 高岡健二/野村昭子●放送日:1983/07/02●放送局:テレビ朝日(評価:★★★★)

    [Kindle版]           [Prime Video]




ブログランキング・にほんブログ村へ banner_04.gif e_03.gif



和田泰明ブログ

1 Comment

2022年4月16日、俳優の柳生博さんが老衰のため山梨県北杜市の自宅で亡くなったていたことが分かった。享年85。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1