【3067】 ○ 斎藤 寅次郎 「珍説忠臣蔵 (1953/01 新東宝) ★★★★

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コメディはしっかり作るべきところはしっかり作ってこそ面白くなるという見本。

珍説忠臣蔵 1953 - コピー.jpg[珍説忠臣蔵 ポスター.jpg 珍説忠臣蔵  1.jpg
珍説忠臣蔵 [DVD] STD-113
横山エンタツ/古川緑波/伴淳三郎/柳家金語楼

 松の廊下の一件にも懲りず、密輸、米の買占め、人身売売から高利貸と吉良上野介(伴淳三郎)の悪徳ぶりは輪に輪をかける有様に、江戸市民の怨嗟が高まる。浪人のアルバイト、辻講釈師の晴山(一竜斎貞山)は「赤穂の浪士が討入りでもしなけりゃ、講談にならねえや」と気を揉むが、果然、浪人達の地下活動は始まっていた珍説忠臣蔵  2.jpg。居酒屋、夜鷹ソバ売り、按摩、飴売り等々に身をやつして吉良邸を窺う一方、主謀の大石(古川緑波)は祇園で放蕩三昧の体(てい)を装う。美男子の珍説忠臣蔵  3.jpg自分に参った娘お艶(星美智子)の父が吉良邸出入りの大工頭梁・平兵衛(柳家金語楼)と知って色仕掛で邸の設計図を持ち出させた岡野(木戸新太郎)は、やがてお艶に真の愛情を感じた。吉良の悪徳いよいよ加わり、晴山が街頭演説でさかんにアジるものの、所詮は庶民の非力さ。そんな中、商人・亜茶兵衛(花菱アチャコ)の支援もあって、やがて討入りも迫り、岡野はお艶を訪れるが、一切を知った平兵衛は「もっと強く抱きつけ!」とお艶を煽るのだった。討入り成功。晴れ上った江戸の空の下で晴山は首尾整った赤穂義士伝を滔々として弁じ立てる―。

横山エンタツ(鴨坂辰内)・伴淳三郎(吉良上野介)/古川緑波(大石内蔵助)・相馬千恵子(苅藻太夫)
「珍説忠臣蔵」4.jpg 1953(昭和28)年公開の斎藤寅次郎監督作。古川緑波、伴淳三郎、柳家金語楼、横山エンタツ、花菱アチャコ、木戸新太郎、堺駿二、清水金一などの喜劇人が総出演しています。互いに共演の多い面子ですが、古川緑波、伴淳三郎、柳家金語楼、横山エンタツ、花菱アチャコらを一つの作品で観られるのは、この作品ぐらいではないでしょうか。

「珍説忠臣蔵」2.jpg川路龍子(浅野内匠頭を演じる役者)
伴淳三郎(吉良上野介を演じる役者)/田崎潤(不破数右衛門)

 ギャグのオンパレードながら、「仮名手本忠臣蔵」の話の骨格は崩していないのがいいと思います(浮橋太夫が苅藻太夫になっているのは講談をベースとしているためか)。冒頭、「松の廊下」が劇中劇として歌舞伎仕立てになっていて、吉良上野介を演じる役者が伴淳三郎。浅野内匠頭演じる役者が川路龍子。刃傷沙汰の場面で、現実のことに思えて憤った観客が舞台に上がって大暴れし、それが田崎潤演じる不破数右衛門でした。田崎潤はリアルタイムで見たのは、東宝のゴジラシリーズ(「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年)のような自衛隊の司令官役が多かった)やNHKの「連想ゲーム」だったと思います。

花菱アチャコ(亜茶兵衛)/星美智子(お艶)/柳家金語楼(大工・平兵衛)
「珍説忠臣蔵5.jpg 横山エンタツは吉良の間者の役(加藤茶に雰囲気が似てるなあ)。一方、花菱アチャコ演じる義侠心の商人・天野屋利兵衛ならぬ天野屋亜茶兵衛は、「天野屋利兵衛は男でござる」ならぬ「何言うてまんねん。亜茶兵衛は男でござる」を連発。「南部坂雪の別れ」もあり(瑤泉院・花井蘭子、戸田局・清川虹子)、岡野金右衛門(木戸新太郎・通称キドシン)とお艶(星美智子)の「岡野絵図面取り」もしっかり織り込まれています(お艶の父親で大工・平兵衛役の柳家金語楼の演技とギャグが楽しめる)。

堺俊二(村松喜兵衛)[右上]/清水金一(清水一角)[左下]
珍説忠臣蔵図10.jpg 討ち入り場面も本格的で、腰元たちが応戦に出てくるのは忠臣蔵では珍しいと思われます。腰元集団に囲まれ苦戦するのは堺俊二演じる村松喜兵衛。また、清水金一(通称シミキン)演じる清水一角の二刀流での奮闘ぶりもなかなかのものでした。一方で、討ち入りの装束に野球選手のような背番号が入っていたり、討入りの間、大石(古川緑波)が屋台で悠々とそばを15杯も食べていたりするのが可笑しいです。上野介が米の買占めや高利貸しなど悪行を働いて江戸庶民を苦しめたというのが映画の設定で、その上野介「珍説忠臣蔵6.jpg(伴淳三郎が役者と本物の二役)が赤穂浪士を怖れて身代わりを雇い、それが冒頭の上野介を演じた役者ということで、討入りで最後に大石らの前に二人の上野介が引っ張り出されることになり(特撮を駆使)、どっちが本物かというお遊びもあります。

月丘千秋(てい)/清川荘司(間十次郎)
「珍説忠臣蔵7.jpg「珍説忠臣蔵8.jpg でも、前半部分で、浪士たちが密かに討入りを志す中、間十次郎(清川荘司)が病身の妻てい(月丘千秋)に本当のことを言えず、仇討ちなど今時流行らない、奉公先が決まったと嘘をついて、夫が亡君の仇を討つと信じていた妻がそれを裏切られた思いで、自分の子どもに「お前のお父様はもうこの世にはいません」というシーンはシリアスだったなあ(ここだけ観ると、全然コメディに見えない)。その分、ラストの討ち入り後の引き上げシーンでの十次郎と妻子の再会シーンはぐっとくるわけですが、このラストシーンは、その前に、大石と亜茶兵衛、岡野とお艶、戸田局と兄・小野寺十内の再会があって、最後に間十次郎と妻子の再会をもってきているところが上手いなあと思いました(その後、沿道の人に酒を振舞われ、がぶ飲みする不破数右衛門がちらっと見えたりする)。

野上千鶴子(おりう)
『珍説忠臣蔵』06.jpg野上千鶴子.jpg コメディはしっかり作るべきところはしっかり作ってこそ面白くなるという、その見本と言える作品でした。気軽に楽しめる佳作だと思います。花井蘭子(瑶泉院)、月丘千秋(間十次郎の妻・てい)、相馬千恵子(苅藻太夫)、市丸(一力の太夫)、川路龍子(浅野内匠頭)、深川清美(大石主税)、野上千鶴子(間者おりう)と美女がいっぱい出てくるのもいいです。戸田局役の清川虹子でさえキレイ(笑)。義士の一人・横川勘平役の田端義夫が江戸の町をギターで流し、エンタツ・アチャコのダラダラ漫才も少しだけ見られます。

珍説忠臣蔵 vjs.jpg「珍説忠臣蔵」●制作年:1953年●監督:斎藤寅次郎●脚本:八住利雄●撮影:友成達雄●音楽:服部正●時間:87分●出演:古川緑波/伴淳三郎/柳家金語楼/横山エンタツ/花菱アチャコ/木戸新太郎/堺駿二/清水金一/阿部九洲男/清川荘司/田崎潤/花井蘭子/月丘千秋/相馬千恵子/市丸/田端義夫/川路龍子/一竜斎貞山/清川虹子/野上千鶴子/中村是好●公開: 1953/01●配給:新東宝(評価:★★★★)
 
 

田崎 潤 in「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年/東宝)
「ゴジラ・エビラ・モスラ 」図3.jpg

          



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2021年9月24日 23:47.

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