【3058】 ○ 渡辺 祐介 (原作:松本清張) 「黒の奔流 (1972/09 松竹) ★★★★

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小川眞由美版ドラマと比べると...。山崎努の演技は愉しめたが、岡田茉莉子の設定年齢がきつい。

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黒の奔流 01 - コピー.jpg 「黒の奔流」0001.jpg
<あの頃映画> 黒の奔流 [DVD]」岡田茉莉子/山崎努

「黒の奔流」0008.jpg黒の奔流 ポスター1.jpg ある殺人事件の裁判が始まった。事件とは多摩川渓谷の旅館の女中、貝塚藤江(岡田茉莉子)が馴染みの客(穂積隆信)を崖から突き落した、というのである。しかし藤江はあくまでも無罪を主張した、が、状況的には彼女の有罪を裏付けるものばかりだった。この弁護を担当したのが矢野武(山崎努)である。矢野はこの勝ち目の薄い事件を無罪に出来たら一躍有名になり、前から狙っている弁護士会々長・若宮正道(松村達雄)の娘・朋子(松坂慶子)をものにできるかもしれない、という目算があったのである。弁護は難行し「黒の奔流」 001.jpgたが、矢野は見事、無罪判決を勝ら取る。「黒の奔流」 01.jpgそして矢野の思惑通り、マスコミに騒がれるとともに、若宮と朋子の祝福を受け、若宮は朋子の結婚相手に矢野を選ぶ。一方、藤江を自分の事務所で勤めさせていた矢野は、ある晩、藤江を抱く。藤江は今「黒の奔流」松坂慶子1 (1).jpgでは矢野への感謝の気持ちが思慕へと変っていたのだ。やがて藤江は矢野が朋子と結婚するということを知る。藤江が朋子のことを失野に問いただすと、矢野は冷たく「僕が君と結婚する「黒の奔流」 1972  okada.jpgと思っていたわけではないだろうね」と言い放ち、去ろうとする。そこで藤江は、あの事件の真犯人は彼女であること、もし矢野が別れるなら裁判所へ行って全てを白状すると逆に矢野を脅迫する。矢野は、藤江はやりかねない、それは自分の滅亡を意味すると憔悴し、やがて藤江に対して殺意を抱く。翌日、矢野は藤江に詫びを入れて旅行に誘うと、藤江は涙ながらに喜び、数日後、富士の見える西湖畔に二人は投宿する。藤江は幸せだった。翌朝、矢野は藤江を釣に誘う。人気のない霧の湖上を二人を乗せたボートが沖へ向う―。

種族同盟 松本清張.jpg 1972(昭和47)年公開の渡辺祐介(1927- 1985/58歳没)監督作で、原作は松本清張が1967(昭和42)年に発表した中編小説「種族同盟」(中短編集『火と汐』('68年/ポケット文春)収録)。原作は、新宿のバーのホステス・杉山千鶴子(23歳)が東京の西の外れの渓谷で殺害され、被害者のペンダントを所持していたことが決め手となり、死体発見現場から2キロほど離れた旅館「春秋荘」の番頭・阿仁連平が逮捕されるというものであり、これを映画では男女を逆転させ、旅館の女中が馴染みの客を殺害したという設定になっています。

松本清張ほか著/日本推理作家協会編『種族同盟―現代ミステリー傑作選1〈策謀・黒いユーモア編〉』(カッパ・ノベルス 1969.01)

 また、原作は中編であり、弁護士(一人称で語られるため、弁護士の名は出てこない)が自分が裁判で救った元被告に恐喝され、殺意を抱くところで終わりますが、映画はそこから、新たな愛憎劇を展開させてみせます。

 この映画化作品のほか、これまで3回テレビドラマ化されています。
 ・1979年「松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人事件」(テレビ朝日)小川眞由美・高橋幸治・金沢碧
 ・2002年「松本清張没後10年記念企画・黒の奔流」(テレビ朝日)渡瀬恒彦・さとう珠緒・純名里沙
 ・2009年「松本清張生誕100年特別企画・黒の奔流」(テレビ東京)船越英一郎・星野真里・黒谷友香・賀来千香子
 これら何れもが、殺人被害者を男性とし、女性を被告にしている点や、裁判終了後に弁護士と女性との間で愛憎劇を繰り広げる点において、原作のドラマ化と言うより、映画のリメイクと言った方が相応しいものとなっており、この映画脚本は(タイトルもそうだが)それだけ後に影響を与えたと言えるかと思います。

 個人的には小川眞由美(千鶴子役、つまり原作で殺害される女性と同じ名前になっている)版と船越英一郎版を観ましたが、映画も含め共通して言えるのは、最後、女性の男性に対する無理心中的な終わり方になっている点です。

黒の奔流l2.jpg この岡田茉莉子版の映画では、矢野がボートを止めると矢野の殺意には既に気づいていたと藤江が呟き、矢野は舟底のコックを抜いて脱出しようとした瞬間、藤江の体が矢野の上にのしかかり、「先生を誰にも渡さない!」と言って、それまで果物の皮を剥いていたナイフで矢野を刺すというもの。これに近いのが小川眞由美版で、見た目はほぼ同じです(船越英一郎版にはボートシーンがなく、星野真里演じる女がいきなり公衆の面前で弁護士を刺す)。

松本清張の種族同盟図9.jpg ただし、岡田茉莉子版の映画と小川眞由美版のドラマでは、ラストに至るプロセスが若干異なっており、映画では藤江はこれから弁護士としての輝かしい道を歩もうとする矢野の前に再三現れ、「私、あなたの女でいいと言ったことを撤回します!」と言って妊娠したことを逆手にとり結婚を迫るのに対し、ドラマでは、小川眞由美演じる女は最後まで「先生とのことは誰にも喋らない」「二度と先生の前には現れない」と言い、ボート上で弁護士を刺すのも、裏切られた恨みからと言うより、「先生、人殺しなんかしないで」という思いによるものとなっています。

「松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人事件」 (1979/05 テレビ朝日) ★★★★☆(小川真由美/高橋幸治)

【黒の奔流】松坂慶子岡田茉莉子.jpg どちらも女性の方に覚悟は出来ている印象ですが、どちらが切ないかと言えば、小川眞由美版の方が上でしょう。最近、この小川眞由美版のドラマを観て、なかなかよく出来ているなあと思って、それで岡田茉莉子版の映画を観直してみたのですが。映画版は、岡田茉莉子、山崎努の演技は愉しめましたが(特に、普段は渋くてクールだったのが、事態が思わぬ方向に行って、何度も鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる演技は可笑しかった)、トータルではやはりドラマの方が上でした(ただし、映画をベースにドラマ化していることを考えると映画もさるもの。渡辺祐介監督の演出も悪くない)。

 映画版は、当時39歳の岡田茉莉子が25歳の藤江を演じているというのも、ちょっと見た目きつかったように思います。後半はその演技力で盛り返してきますが、やはり、受け身的な演技にならざるを得ない序盤の裁判シーンなどで、はっきり25歳と言われてしまうと、抵抗感がありました。実年齢では山崎努が当時36歳で、岡田茉莉子より3歳下だからなあ。当時20歳の松坂慶子が、山崎努演じる弁護士の婚約者役で出ているだけに、薹(とう)が立っているのが対比的に目立ちました。25歳という設定で、原作の23歳より2歳足しただけなのですが、もっと年嵩のいった年齢設定にしてもよかったのでは(まあ、小川眞由美も同じく39歳でこの役を演じていたのだが)。

撮影合間写真(松坂慶子/岡田茉莉子)

の奔流」山崎努0.jpg 黒の奔流」山崎努0図1.jpg の奔流」山崎努1.jpg

山崎努(弁護士・矢野武)/谷口香(矢野の助手・岡橋由基子)/佐藤慶(検事・倉石)/松坂慶子(若宮朋子)
「黒の奔流」 yamazaki .jpg 谷口香(岡橋由基子).jpg 「黒の奔流」 検察官 佐藤慶.jpg 「黒の奔流」松坂.jpg

「黒の奔流」 1972 ps.jpg黒の奔流 9.jpg「黒の奔流」●制作年:1972年●監督・脚本:渡辺祐介●製作:猪股尭●脚本:国弘威雄/渡辺祐介●撮影:小杉正雄●音楽:渡辺宙明●時間:90分●出演:岡田茉莉子(貝塚藤江)/山崎努(矢野武)/谷口香(岡橋由基子)/松村達雄(若宮正道)/福田妙子(若宮早苗)/松坂慶子(若宮朋子)/中村伸郎(北川大造)/中村俊一(楠田誠次)/穂積隆信(阿部達彦)/玉川伊佐男(弁護士・三木)/佐藤慶(検事・倉石)/河村憲一郎(裁判長・松本)/加島潤(判事・細川)/小森英明(判事・竹内)/岡本茉利(太田美代子)/菅井きん(杉山とく)/金子亜子(とくの娘)/伊藤幸子(今村カツ子)/谷村昌彦(タクシー運転手)/生井健夫(弁護士)/石山雄大(弁護士)/久保晶(弁護士)/水木涼子(小坂清子)/光映子(森本澄子)/藤田純子(和江)/秩父晴子(管理人)/荒砂ユキ(アパートの隣人)/園田健二(記者)/岡本忠行(記者)/江藤孝(記者)/大船太郎(記者)/高畑喜三(廷吏)/松原直(廷吏)/土田桂司(刑事)/高杉和宏(刑事)/村上記代(仲居)●公開:1972/09●配給:松竹(評価:★★★☆)

      



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2021年8月18日 18:05.

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