【3021】 ◎ ドゥニ・ヴィルヌーヴ (原作:ワジディ・ムアワッド) 「灼熱の魂」 (10年/カナダ・仏) (2011/12 アルバトロス・フィルム) ★★★★☆

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レバノン内戦の悲劇とすべてを包み込む母の愛。エグい話だが、凄い映画でもある。

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「灼熱の魂」03.jpg 双子姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マクシム・ゴーデット)の母親ナワル(ルブナ・アザバル)が、ある日プールサイドで原因不明の放心状態に陥り息絶える。姉弟を驚かせたのは、ナワルを長年秘書として雇っていた公証人のルベル(レミ・ジラール)が読み上げた遺言だった。ルベルはナワルから預かっていた二通の手紙を差し出す。それは姉弟の父親、兄それ「灼熱の魂」02.jpgぞれに宛てられたもので、今どこにいるのか分からない彼らを捜し、その手紙を渡す事が、母の遺言だった。しかし兄の存在など初耳で、父はとうの昔に死んだと思い込んでいた姉弟は困惑を隠せない。シモンは母の遺言を「イカれてる!」と吐き捨てるが、ジャンヌは遺言の真意を知るために、母の祖国を訪ねる事を決意する。一体その手紙には何が記されているのか?そして母が命を賭して、姉弟に伝えたかった真実とは―。

「灼熱の魂」p.jpg「灼熱の魂」00.jpg 2010年のカナダ映画で、原作は、レバノン生まれでカナダ・ケベック州に移住した劇作家ワジディ・ムアワッドが1997~2009年に発表した戯曲『約束の血』四部作の第二部「焼け焦げるたましい(原題:Incendies、火事)」(2003年)。日本でも2009年に「焼け焦げるたましい」の題で上演されていますが、これをドゥニ・ヴィルヌーヴが脚色と監督を務め映画化したもの。同監督はこの「灼熱の魂」で、カナダの映画賞ジニー賞を、「渦」('00年)、「静かなる叫び」('09年)に続く3度目の受賞をし、この作品は米アカデミー賞外国語映画賞のカナダ代表に選出され、ノミネート作品5本のうちに選ばれましたが、アメリカで最も有名で信頼される映画評論家とされたロジャー・イーバート(1942-2013)などが推したものの、肝心の受賞はデンマークのスサンネ・ビア監督の「未来を生きる君たちへ」('10年)に持っていかれて逃しています。

「灼熱の魂」01.jpg レバノン内戦の悲劇とその中で起きた親子の悲劇。そのすべてを包み込む母の愛の偉大。近親相姦が出てきたところでまさにエグい話だと感じましたが、全体の構成が巧みで、ミステリ的要素もあって感動もさせる凄い映画でもあると思いました(「父と兄を探す旅」というキャッチが1つミソだった)。アカデミー賞外国語映画賞を逃したのは、「重い」ながらも「面白すぎる」からではないかと思ったりもしました(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はこの作品でアメリカ進出を果たし、近年では「メッセージ」('16年)、「ブレードランナー 2049」('17年)、「DUNE/デューン 砂の惑星」('20年)などSF娯楽作品の監督をしている)。

「灼熱の魂」ges.jpg もう一つ、弱点らしきものとして言われているのは、本作の登場人物が特別な運命を背負っているように見えてしまうことであり、本作の双子が親の因縁を解き明かしていく物語は、我々が身近に見聞きするような類のものではなく、ギリシャ神話に材を取ったギリシャ悲劇の物語に思えてしまうことです。それをどう捉えるかは観た人それぞれだとは思いますが、日常普遍の物語とは言い難いと思います。

「灼熱の魂」pic.jpg ただ、「リアルか神話か」などといったことは観終わった後で思うことであって、観ている間は引き込まれました。テーマ的にも、「どうすれば怒りの連鎖を断ち切ることができるのか」という問いにこの映画なりの解答を出していて、それは悲劇を悲劇として終わらせてしまうことへの強烈なアンチテーゼにもなっているように思いました。

 中東の乾いた大地を舞台に、戯曲である原作をここまで映画的にダイナミックに、映画らしく映像化している監督の技量は相当なものではないかと思います。それでいて、カナダでの「現在」の描き方は地味で、だから「リアルか神話か」なんて考えてしまうのだろなあ。非常に特異な設定の「母子(ははこ)物」とも言え、好みは割れると思いますが、個人的には傑作だと思います。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
「灼熱の魂」es.jpg「灼熱の魂」●原題:INCENDIES●制作年:2010年●制作国:カナダ・フランス●監督・脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ●製作:リュック・デリ/キム・マクロー●撮影:アンドレ・トゥルパン●音楽:グレゴワール・エッツェル●原作:ワジディ・ムアワッド「焼け焦げるたましい」●時間:131分●出演:ルブナ・アザバル/メリッサ・デゾルモー=プーラン/マキシム・ゴーデット/レミー・ジラール/アブデル・ガフール・エラージズ/アレン・アルトマン/モハメド・マジュド/ビル・サワラ/バヤ・ベラル●日本公開:2011/12●配給:アルバトロス・フィルム●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-10-16)(評価:★★★★☆)

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和田泰明

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