【3018】 ○ ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ 「イゴールの約束」 (96年/ベルギー・仏・ルクセンブルク) (1997/05 ビターズ・エンド) ★★★★

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イゴールが〈約束〉を守ろうとするのは、そのことが「父親離れ」「父親超え」に重なったからではないか。
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イゴールの約束 f1.jpg ベルギー。自動車修理工場の見習工のイゴール(ジェレミー・レニエ)は、父ロジェ(オリヴィエ・グルメ)の命令ですぐに仕事を抜けてしまう。ロジェは不法移民の斡旋が仕事で、イゴールは大事な助手なのだ。彼はほどなくクビに。不法移民宿泊施設。ブルキナファソ出身で古株のアミドゥ(ラスマネ・ウエドラオゴ)とその妻アシタ(アシタ・ウエドラオゴ)が赤ん坊を連れてやってくる。ある日、アミドゥが建築現場で作業中、突然移民局の抜き打ち査察があった。アミドゥは重傷を負うが、ロジェは警察沙汰を恐れて医者も呼イゴールの約束 00.jpgばない。傷の手当てもされず、アミドゥはイゴールに妻子の世話を頼んで死ぬ。深夜、ロジェはイゴールに手伝わせて、アミドゥの遺体をコンクリートの土台に埋め込む。翌朝、アシタは夫のことでイゴールを問い詰める。彼女のところには、男たちがアミドゥがギャンブルで作った借金の取り立てに来ていた。イゴールは彼女を助けようと金を渡すが、ロジェに知られて殴られる。ロジェはアシタを追い出そうとしていた。ロジェはアシタにアミドゥの名前で偽の電報を打つ。アシタを騙して連れ出し、イゴールの約束 3.jpg娼婦として売ろうというロジェの企みを知ったイゴールは、母子を連れて家出する。イゴールが勤めていた修理工場に3人は泊まるが、夜中に赤ん坊が熱を出し、アシタは半狂乱に。病院に転がり込むと、親切な係官と、アシタと同じアフリカ系のロザリー(クリスチャン・ムシアナ)が世話を焼いてくれた。アシタは赤ん坊を連れてイタリアの叔父さんの元へ行こうと決心。身分証明書はロザリーが借してくれた。イゴールはロジェからもらった指輪を売って旅費を作る。翌朝、ロジェが工場に現れ、イゴールに家を戻ってアシタ母子を引き渡せと命令する。イゴールは父親の言いつけを初めて拒絶し、ロジェを鎖で繋いで、アシタと駅へ急ぐ。ホームへ向かう途中、イゴールはアシタにアミドゥは亡くなったと真実を明かすと―。

LA PROMESSE a.jpg ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の1996年の作品で、長編第3作。カンヌ映画祭「ある視点」部門で注目され、パリで小規模公開ながらロングランを記録しています。

 この映画には幾つか感想や意見があるようで、一つは、仕事場で客の財布を盗むような素行の良くない不良で、父親の言いなりになってその不法移民の斡旋を手伝っていた、そんなイゴールが、死んだアミドゥが最期に「女房と息子を頼む」と彼に言い残した、その〈約束〉をなぜそんなにまでして守ろうとしたのかよくわからなかったというもの。世の中の格差と不正の犠牲になって喘ぐ人に感情移入し、正義感に目覚めたとするとあまりにキレイごと過ぎるのではないかというものです。

イゴールの約束 f2.jpg 個人的には、確かに彼の行動の動機として正義感みたいなものが無かったわけではないと思いますが、むしろ、今まで父親に言いなりになっていたのが、そこから逃れようとする"第二の自我"のようなものが生まれてきたということではないかと思います。つまり、アミドゥとの〈約束〉を守ることが、彼にとっては「父親離れ」乃至は「父親超え」に重なったからではないかと思います。

ジェレミー・レニエ/オリヴィエ・グルメ

 イゴールがあちこちへと奔走する中で、少しずつ彼の価値観が変化していく姿がよく、それでも事はスンナリはいかず、アミドゥの死をアシタに「正直に話そうよ」と父親に言いって争いになる一方、自身もアミドゥの妻にはなかなか事実を告げられないもどかしさを抱えて葛藤します。そしてラスト、アシタ母子を海外に逃がしてハッピーエンドかと思ったら、この兄弟監督はそう甘くなかったです。

 「えっ」と言うような終わり方。このラストでイゴールがアシタにアミドゥは亡くなったことを明かした行為についても様々な意見があるようです。果たしてそれが良かったのかということですが、良かったどうかは彼の判断能力の限界を超えていて、ただ彼の心の中ではアミドゥの妻に嘘をつき続けるのは後ろめたく、本当のことを言わずにはおれなかったということでしょう。

 彼女を海外に逃がすことを優先して、今はアミドゥが亡くなったことは言わないでおく―といったことは、子どもであるイゴールには出来かねたというのがまさにリアリズムであり、この"苦い"結末は、ドキュメンタリー出身の監督らしいとも言えます

LA PROMESSE 1996.jpgイゴールの約束 5.jpg「イゴールの約束」●原題:LA PROMESS●制作年:1996年●制作国:ベルギー・フランス・ルクセンブルク●監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ●製作:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ/ハッサン・ダルドゥル クロード・ワリンゴ ジャクリーヌ・ピエルー●脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ/レオン・ミショー/アルフォンソ・バドロ●撮影:アラン・マルクーン●時間:93分●出演:ジェレミー・レニエ/オリヴィエ・グルメ/アシタ・ウエドラオゴ/フレデリック・ボドソン/ラスマネ・ウエドラオゴ●日本公開:1997/05●配給:ビターズ・エンド●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-09-20)(評価:★★★★)

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和田泰明

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