【2984】 ○ 森崎 東 (原作:藤原審爾) 「喜劇 女は男のふるさとヨ (1971/05 松竹) ★★★☆

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倍賞美津子を中心にシリーズを撮っていく選択肢もあったのでないか。

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喜劇 女は男のふるさとヨ」(VHS)倍賞美津子/河原崎長一郎/中村メイコ/森繁久弥/緑魔子
喜劇 女は男のふるさとヨ(1971).jpg喜劇 女は男のふるさとヨ07.jpg ストリッパー斡旋業「新宿芸能社」を営む金沢(森繁久弥)と竜子(中村メイ子)夫妻は、父さん母さんと呼ばれながら、踊り子たちと家族のように暮らしている。ある日、旅に出ていたマタタビ笠子(倍賞美津子)が、金も溜まり、そろそろ結婚したいと久し振りに帰って来る。が、金沢夫婦の留守中、昔のヒモに強引に連れ去られ、金沢が談判に行くがイタメつけられて戻る。腹にすえかねた竜子が人糞を流し込んで報復したが、笠子は再び旅に出る。笠子の紹介でやって来た、泣いているような顔の田舎臭い星子(緑魔子)は、踊りを教えているうちに、結構いい線いくようになる。とは言え、客の頼みを断れず、トイレで性行為したり、道端で自殺しそうな青年を救おうとしてアオカンしたと警察に捕まったりして、その都度竜子は一喜一憂する。一方、笠子は旅先で彼女に心酔する青年・照夫(河原崎長一郎)に出会い、彼が作ってくれたキャンピング・カーで一緒に旅回りを続ける。運転は勿論、三度の食事までひたすら尽くすだけで、絶対に手を出さない照夫。笠子は運転免許を取ったのを機会にいったんはクビにしたが、彼のこのうえない愛情と誠意に気づき、結婚しようと心に決める。しかし―。

女は度胸.jpg男は愛嬌.png森崎東監督.jpg 昨年['20年]7月に92歳で亡くなった森崎東監督の「女シリーズ」の第1作で、原作は、藤原審爾のお座敷ストリッパーを描いた連作短編集『わが国おんな三割安』の中の「またたび笠子」「あおかん星子」を中心としています(脚本は山田洋次)。笠子を演じる倍賞美津子は森崎東監督の「喜劇 女は度胸」('69年)、「喜劇 男は愛嬌」('70年)に続く出演で、星子を演じた緑魔子は山田洋次監督(森崎東脚本)の「吹けば飛ぶよな男だが」('68年)にも出ています。
喜劇・女は度胸 [DVD]」(倍賞美津子/渥美清)/「あの頃映画 「喜劇 男は愛嬌」 [DVD]」(渥美清/倍賞美津子)
喜劇・女生きてます [VHS]」(森繁久彌)/「喜劇・女売り出します [VHS]」(森繁久彌)
女生きています.png女売る出します.jpg この作品の後、この「女シリーズ」は第2作「喜劇 女生きてます」('71年)、第3作「喜劇 女売り出します」('72年)、第4作「女生きてます 盛り場渡り鳥」('72年)と続いていきますが、何れも森繁久弥演じる金沢を軸に話が展開し、その妻・竜子役は第2作で左幸子、第3作で市原悦子と代わって、第4作で中村メイ子に戻っています。ヒロインの方も毎回変わり、倍賞美津子と緑魔子が出ているのはこの第1作のみで、第2作は安田(大楠)道代、第3作は夏純子、第4作は川崎あかねです。

 山田洋次監督が「男はつらいよ」 シリーズの第1作を撮ったのが'69年で、シリーズ中、第2作「男はつらいよ フーテンの寅」('70年)のみ森崎東監督作となっていますが、あとは全部山田洋次の監督作です。ただし、この森崎東監督の「女シリーズ」を観ると、同じ下町人情を描いても山田洋次監督作とは随分雰囲気が違っている感じもします(「女シリーズ」でこの「喜劇 女は男のふるさとヨ」だけ脚本に山田洋次が噛んでいるのだが)。

山田洋次.jpg 1931年生まれの山田洋次監督は「男はつらいよ」「続・男はつらいよ」などで1969(昭和44)年度・第20回「芸術選奨」を、1927年生まれの森崎東監督は「男はつらいよ フーテンの寅」「喜劇・男は愛嬌」などで1970(昭和45)年度・第21回「芸術選奨新人賞」を受賞しています。因みに、山田洋次監督は東京大学法学部を卒業し、新聞社勤務を経て1954年に松竹に補欠入社、森崎東監督は京都大学法学部を卒業して1956年に松竹に入社しています(年齢は森崎東監督の方が上だが、松竹では山田洋次監督の方が先輩ということになる)。

倍賞千恵子 倍賞美津子.jpg 森崎東監督は森繁久弥を中心にシリーズを撮っていきましたが、倍賞美津子を中心にシリーズを撮っていくという選択肢もあったのでないかという気がします(山田洋次監督のヴィーナスが倍賞千恵子で、森崎東監督のヴィーナスが倍賞美津子であるというのも面白い)。そうしたならば、もしかしたら倍賞美津子が女性版寅さんみたいな存在になっていたかもしれません。ただし、この倍賞美津子のストリッパー「笠子」のキャラクターは、森崎東監督の後の作品「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」('85年/ATG)における、倍賞美津子演じる主人公のヌードダンサー「バーバラ」などにも反映されていたように思います。

倍賞千恵子/倍賞美津子

喜劇 女は男のふるさとヨ vhs.jpg「喜劇 女は男のふるさとヨ」●制作年:1971年●監督:森崎東●製作:小角恒雄●脚本:山田洋次/森崎東●撮影:吉川憲一●音楽:山本直純●原作:藤原審爾●時間:91分●出演:森繁久弥/中村メイコ/倍賞美津子/緑魔子/河原崎長一郎/花沢徳衛/伴淳三郎/佐藤蛾次郎/園佳也子/山本紀彦/犬塚弘/名古屋章/左卜全●公開:1971/05●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-12-06)(評価:★★★☆)

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