【2976】 ○ 大曾根 辰夫 (原作:松本清張) 「 (1957/01 松竹) ★★★☆ (○ 松本清張 「」―『顔』 (1956/10 大日本雄弁会講談社ロマン・ブックス) ★★★★)

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主人公を男性から女性に変えて成功したとも言えるし、原作と別物になったとも言える。

06『顔』.jpg 顔 映画 0.jpg 顔 (1956年) (ロマン・ブックス).jpg 『顔・白い闇』.JPG
<あの頃映画> 顔 [DVD]」岡田茉莉子/大木実『顔 (1956年) (ロマン・ブックス)』(顔/殺意/なぜ「製図」が開いていたか/反射/市長死す/張込み)『顔・白い闇 (角川文庫)』(顔/張込み/声/地方紙を買う女/白い闇)
顔 (1956年) (ロマン・ブックス)
『顔』ロマン・ブックス.jpgchapter_l_0001.jpg 東海道線の夜行列車にある男が乗り込み、そこである女を見つける。その女・水原秋子(岡田茉莉子)は、元は安酒場で働いていたが、ふとしたことでファッションモデルの幸運を掴みこれを手放すまいと懸命になっていた。一方の男・飯島(山内明)は無免許の堕胎医だった。秋子はプロ野球二軍選手の江波(森美樹)と結婚しようとしていたが、飯島は酒場時代の秋子の古傷に触れ彼女を苦しめていたのだ。飯島は、秋子の大阪でのショーの帰りを追って夜行列車に乗り込んだのだが、洗面所で秋子と口論となり、揉み合いになって列車から落ち、付近の病院に搬送されるも間もなく死亡する。警察chapter_l_0002.jpgは事件を軽く見たが、長谷川刑事(笠智衆)は何かあると確信、病院の死体置場に贈主不明の花束が届いたことから疑念を深め、列車の乗客で事件の目撃者である石岡三郎(大木実)に辿り着く。石岡は洗面所で秋子の顔を見たという。その新聞記事を見て秋子はモデルをやめ、江波と田舎に帰る決心するが、秋子の最後のショーに、長谷川刑事が石岡を連れて首実検に来る。驚く秋子だったが、石岡は犯人はいないと刑事に告げる。chapter_l_0003.jpg止むなく警察は石岡を尾行したがマカれてしまう。その頃、秋子のアパートでは江波が田舎へ行くため荷造りをしていた。そこへ石岡が現れ、秋子はいなかったが、去り際に表で帰って来た秋子に会う。石岡は秋子を旅館に連込み脅迫したが、そこを出た途端トラックに轢かれ死ぬ。秋子がアパートに戻ると、江波は石岡との関係を難詰、別れると言い出す。秋子は、呆然として外に出た。長谷川刑事らは漸く飯島殺し犯人として秋子を突止める。夜の銀座を彷徨う秋子。それをパトロールカーのサイレン音がけたたましく追う―。

 原作は、「小説新潮」1956(昭和31)年8月号に掲載され、同年10月、講談社ロマン・ブックスより刊行された松本清張による初の推理小説短編集の表題作となり(所収作品:顔、殺顔 1957年 okada31.jpg意、なぜ「星図」が開いていたか、反射、市長死す、張込み)、この短編集は1957(昭和32)年・第10回「日本探偵作家クラブ賞(第16回以降「日本推理作家協会賞」)」を受賞作しています。
岡田茉莉子
右から岡田茉莉子(水原秋子)・笠智衆(長谷川刑事)・大木実(石岡)
顔  大木 岡田 笠智衆.jpg ただし、原作の「顔」の主人公はファッションモデル女性ではなく、井野良吉という劇団員で、最近味のある役者として人気が出てきて、映画出演も決まり始めた男性です(つまり映画は主人公の性別を改変している)。実は彼は過去に女性を旅行に誘って殺害しようとして目的を果たすも、その土地に向かう途中の列車内で女性が知り合いの男性と出会ったところから二人でいるのを目撃されたため、今度はその男を理由をつけて旅行に誘い出し、殺害しようとします。ところが、その誘いを訝った男性は警察に相談し、警察は井野が犯人と確信、その旅行についてきて、旅館が井野と同宿だったために鉢合わせに。そこで実質的に首実検の状況になったわけですが、ところが、男には井野が自分が列車内で見た人物と同一人物には見えない! 見えないから当然、コイツが犯人だととも言えない(この点が、石岡が秋子を同一人物と分かりながらも、後で脅迫するために、その場では「犯人はここ中にはいない」と刑事に言っている映画とは大きく異なる)。

 結局、最終的には偶然どこかで井野が犯人であることが男にはわかるわけで、どこで分かるかは読んでのお楽しみですが、人間の記憶の機微を扱った短編らしいモチーフの作品です。ただし、このままだと映画になりにくい短編でもあるので、主人公を男性から女性に変えて、サイドストーリーを幾つも付け足して映画として"見栄えある"ものにしたとも言えるし、原作のモチーフを映画では活かしていないので、原作と別物になったとも言えるかと思います。

 原作者の松本清張は、自分の短編が映像化する際に話を膨らますことについては鷹揚であったようで、むしろ、短編をどうやって1時間半なり2時間なりの物語に加工するかこそが映画監督らの力量とみていたようです。自身の短編の映画化作品で最も評価していたのは、野村芳太郎監督の「張込み」('58年/松竹)だったようで、「原作を超えている」と言っていたそうですが、この「顔」についてはどうだったのでしょうか。個人的には、原作を超えたとまでは言い難いですが、まずまずだったように思います。ただし、原作のモチーフを活かしていので、「別物」として"まずます"ということになります。

 映画の中で、石橋湛山が自民党総裁で岸信介と争って勝った出来事が銀座のビルのテロップニュースで流れる場面がありますが、これは1956年12月のことで、岸信介に7票差で競り勝って総裁に当選した石橋湛山は、12月23日に内閣総理大臣に指名されています。原作が「小説新潮」1956年8月号に掲載されたもので、この映画の公開が1957年1月22日なので、撮影時の時事ネタを織り込んだといったところでしょうか。それにしても、雑誌の8月号に発表された短編が翌年1月には映画になるなんて、当時の松本清張の人気を窺わせます。ただし、過去に10回以上ドラマ化されていますが、映画化作品はこの大曽根辰夫監督の作品のみです。

・1958年「顔」(日本テレビ)三橋達也(井野)・花柳喜章(石岡)
・1959年「顔」(KRテレビ(現TBS))天本英世(井野)・高野真二(石岡)
・1962年「松本清張シリーズ・顔」(NHK)南原宏治・松宮五郎
・1963年「顔」(NET(現テレビ朝日))大木実(井野)・大坂志郎(石岡)
・1966年「松本清張シリーズ・顔」(関西テレビ・フジテレビ)山崎努・内田稔
・1978年「松本清張おんなシリーズ・顔」(TBS)大空真弓(井野)・織本順吉(石岡)
・1978年「松本清張の「顔」」(テレビ朝日)倍賞千恵子(井野)・財津一郎(石岡)
・1982年「松本清張の「顔」」(TBS)烏丸せつこ・浅茅陽子
・1999年「「松本清張特別企画・顔」(TBS)戸田菜穂 (井野)・斉藤慶子(石岡)
・2009年「松本清張ドラマスペシャル 顔」(NHK)谷原章介(井野)・高橋和也(石岡)
・2013年「松本清張スペシャル 顔」(フジテレビ) 松雪泰子・田中麗奈・坂口憲二

「松本清張ドラマスペシャル 顔」(2009年・NHK)谷原章介/「松本清張スペシャル 顔」(2013年・CX)松雪泰子
松本清張ドラマスペシャル 顔.jpg松本清張SP--松雪泰子の「顔」.jpg

  
   
顔 映画00.jpg「顔」okada.jpg「顔」●制作年:1957年●監督:大曽根辰夫●脚本:井手雅人/瀬川昌治●撮影:石本秀雄●音楽:黛敏郎●原作:松本清張「顔」●時間:104分●出演:岡田茉莉子/大木実/笠智衆/森美樹/宮城千賀子/佐竹明夫/松本克平/千石規子/小沢栄(小沢栄太郎)/山内明/細川俊夫/内田良平/永田靖/乃木年雄/草島競子/永井秀明/十朱久雄/笹川富士夫/高村俊郎●公開:1957/01●配給:松竹(評価:★★★☆)
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This page contains a single entry by wada published on 2020年12月12日 18:44.

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