【2975】 ○ 松本 清張 「」「白い闇」―『白い闇』 (1957/08 角川小説新書) ★★★★

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「ゼロの焦点」('58年)の女性主人公へと繋がる「声」('56年)、「白い闇」('57年)。

『顔・白い闇』.JPG 白い闇 (1957年) (角川小説新書).jpg  松本清張短編全集〈第5〉声 (1964年).jpg 声―松本清張短編全集〈5〉 (カッパ・ノベルス).jpg
顔・白い闇 (角川文庫)』(顔/張込み/声/地方紙を買う女/白い闇)『白い闇 (1957年) (角川小説新書)』(白い闇/一年半待て/地方紙を買う女/共犯者/声)『松本清張短編全集〈第5〉声 (1964年) (カッパ・ノベルス)』(声/顔/恋情/栄落不測/尊厳/陰謀将軍)『声―松本清張短編全集〈5〉 (カッパ・ノベルス)』['02年]

 新聞社で電話の交換手・高橋朝子は、数百人の声を聞き分けられるベテラン。ある日、社会部の石川汎に頼まれて、赤星という姓の学者に電話をかけるが、太く厭らしい声で電話を切られてしまう。電話帳を見誤り、同じ赤星姓でもまったくの別人にかけてしまったとすぐに分かったが、不快なので、間違えた方の住所を見てみると、世田谷の邸町であった。帰宅し夕刊を開いた朝子は、世田谷の赤星邸で強盗殺人事件が起こったことを知る。朝子は警察に出頭し電話の件を伝えたが、犯人の手掛かりは掴めない。ところが、月日は流れたある日、結婚して離職した彼女の耳に、あの電話の声の主が...。声の持ち主は意外なところから朝子のもとに現われる―。(声)

 信子の夫の精一は、仕事で北海道に出張すると言って家を出たまま失踪した。夫の身を案ずる信子は、精一の従弟・高瀬俊吉の助言に従い、夫の仕事関係の炭鉱会社に電報を打つが、北海道には一度も来ていないと返事が来る。信子は俊吉に結果を報告したが、俊吉から、実は精一には青森に田所常子という隠れた女がいるとの思いがけない"夫の裏切り"を聞かされる。信子は青森に向かい女と対峙するが、却って田所常子に圧倒されてしまう。病人のようになって東京へ帰った信子を俊吉はいたわるが、その二ヵ月後、思いがけない事件が発生する。俊吉が連れてきた田所常子の兄だという白木淳三という仙台の旅館経営者が、田所常子は青森県の十和田湖に近い奥入瀬の林の中で死体で発見されたという。田所常子を殺害したのは夫・精一なのか。その精一はいまどこにいるのか―。(白い闇)

「影なき声」0.jpg 「声」は、文庫で80ページほどの短編で、「小説公園」1956(昭和31)年10月号・11月号に連載され、1957年2月に『森鴎外・松本清張集』(文芸評論社・文芸推理小説選集1)収録の一編として刊行されています。また、鈴木清順監督、二谷英明(石川汎)、南田洋子(朝子)主演で「影なき声」('58年/日活)として映画化されるとともに、1950年代から70年代にかけて5回テレビドラマ化されています。

「影なき声」('58年/日活)南田洋子・二谷英明

 「白い闇」は、文庫で70ページ弱の短編で、「小説新潮」1957(昭和32)年8月号に掲載され、1957年8月に短編集『白い闇』収録の表題作として、角川書店(角川小説新書)より刊行されています。こちらは、映画化はされていませんが、50年代から00年代にかけて8回テレビドラマ化されています。

 何度もドラマ化されていることからも窺えるように、共に傑作です。短編集『白い闇』所収作では、「一年半待て」が2016年までに12回、「地方紙を買う女」が9回ドラマ化されていますが、内容的にもそれらに比肩し得るレベルにあると思います。「声」は時間差トリックが秀逸で、「白い声」は誰が味方で誰が敵かという点でほとんどの読者を欺いてみせるのではないかと思います。

 この両作品の特徴は、平凡な女性である主人公が、警察に頼らず独力で事件の謎を解こうとする点で、そこで思い出されるのが「ゼロの焦点」('58年発表)です。「ゼロの焦点」も、夫が単身赴任先の北陸で行方不明になり、妻・が単身捜査に乗り出す過程で夫の二重生活が浮き彫りになってくるというものなので、「白い闇」と少し似ています。

 三作とも女性が主人公ですが、「声」では、主人公の朝子は、事件に深入りしたばかりに犯人グループの犠牲になり、あとは警察が事件を解決することになり、「白い闇」では、主人公の朝子は、犯人を見抜くことが出来たものの、霧深い湖のボートの上で犯人と対峙し、最後は危うく犯人に殺害されかけます。それに比べると、「ゼロの焦点」の女主人公・板根禎子は、やはり断崖絶壁の上で犯人と対峙しますが、二人きりではなくそこにもう一人の人物がいて、自らが犯人に崖から突き落とされるということにはなりません。

 こうしてみると、「声」('56年)、「白い闇」('57年)から「ゼロの焦点」('57年)へと女性主人公が進化してきている(推理小説として洗練されてきている)ように思えました。「声」「白い闇」は、名作「ゼロの焦点」へと繋がる作品でもあるように思いました。

「影なき声」posuta-.jpg「影なき声」1.jpg「影なき声」●制作年:1958年●監督:鈴木清順●脚本:佐治乾/秋元隆太●音楽:林光●撮影:永塚一栄●原作:松本清張「声」●時間:92分●出演:二谷英明/南田洋子/高原駿雄/宍戸錠/芦田伸介/金子信雄/高品格●劇場公開:1958/10●配給:日活
二谷英明/南田洋子   

●「声」ドラマ化
・1958年「声」(KRテレビ(現TBS))佐野周二・三井弘次・藤間紫
・1959年「声」(フジテレビ)千典子・飯沼慧
・1961年「声」(TBS)福田公子・岩井半四郎
・1962年「声」(NHK)小山明子・松本朝夫・三島耕
・1978年「松本清張の「声」・ダイヤルは死の囁き」(テレビ朝日)音無美紀子・秋野太作・泉ピン子・米倉斉加年

●「白い闇」ドラマ化
・1959年「白い闇」(KRテレビ(現TBS))乙羽信子・高橋昌也・金子信雄
・1998年「白い闇」(フジテレビ)日野明子・真木祥次郎・入川保則
・1961年「白い闇」(TBS)月丘夢路・井上孝雄・山茶花究
・1962年「白い闇」(NHK)吉行和子・金内吉男・鈴木瑞穂
・1977年「白い闇」(TBS)吉永小百合・草刈正雄・二木てるみ・井上孝雄
・1980年「松本清張の白い闇・十和田湖偽装心中」(テレビ朝日)音無美紀子・津川雅彦・速水亮
・1996年「松本清張ドラマスペシャル・白い闇 十和田湖奥入瀬殺人事件」(テレビ東京)大竹しのぶ・加勢大周・寺田農
・2005年「黒革の手帖スペシャル〜白い闇」(テレビ朝日)米倉涼子・豊原功補・岡本健一
松本清張傑作選 2 白い闇 [レンタル落ち]」「白い闇」(1977年/TBS)吉永小百合・草刈正雄
1977年「白い闇」(TBS)dsd.jpg 1977年「白い闇」(TBS).jpg
「黒革の手帖スペシャル〜白い闇」(2005年/テレビ朝日)米倉涼子・豊原功補
黒革の手帖スペシャル〜白い闇0.jpg 黒革の手帖スペシャル〜白い闇.jpg


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