【2967】 ○ ジョルジュ・ロートネル 「警部 (ジャン=ポール・ベルモンドの警部)」 (79年/仏) (1980/11 エデン) ★★★☆

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40年ぶりの劇場公開。テンポが良くて明るいのがベルモントらしい。「ルパン三世」や「コブラ」のルーツ的作品?
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ジャン=ポール・ベルモンドの警部 [DVD]
「警部」es.jpg 南仏マルセイユでは、警察官が暗黒街から賄賂を貰い、麻薬、恐喝、売春などの犯罪を黙認してたが、ある日モーテルで地元警察の警部が娼婦と一緒のところを殺された。背後に暗黒街の影がちらつく中、パリから一人の男がやって来る。彼の名は、スタニスラス・ボロウィッツ(ジャン=ポール・ベルモンド)、またの名をアントMarie Laforêt Flic ou Voyou.jpgニオ・セルッティ。その行状から一見悪党にも見え、警察に逮捕されたりもするが、実は別名"洗濯屋"と呼ばれる、自らの身分を隠して他の警察官を監督する警部だった。彼は早速、身分を隠して地下組織に潜り調査を開始、殺された警部の未亡人(マリー・ラフォレ)に接近し、彼女を通して事件の真相に迫るが、一方、警察内では暗黒街の組織と通じて彼を葬り去ろうとする計画が進んでいた―。

ジャン・ポール・ベルモンド傑作選.jpg '79年フランス公開作で、ミシェル・グリリアの原作を基に「さらば友よ」('68年)、「パリ警視J」('84年)のジャン・エルマンが脚色し、撮影は「死刑台のエレベーター」('58年)、「太陽がいっぱい」('60年)、「サムライ」('67年)のアンリ・ドカエ、音楽は「最後の晩餐」('72年)、「暗黒街のふたり」('73年)、「テス」('80年)のフィリップ・サルド、監督はベルモンドとはこの作品以降、「プロフェッショナル」('81年)、「ソフィー・マルソー/恋にくちづけ」('84年)など4本の作品でコンビを組む、アクション活劇を得意とするジョルジュ・ロートネル(1926-2013)です。

 このように、ある程度"面子"が揃っている割には、1980年11月にフランス映画際の1本として上映されただけで、その後も名画座で数回上映されたのみという不遇の作品で、その後'88年に「ジャン・ポール・ベルモンドの警視コマンドー」のタイトルでビデオ化されましたが(アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「コマンドー」('85年/米)を意識した?)、やがて廃盤になり、'07年にやっと「ジャン=ポール・ベルモンドの警部」のタイトルでDVD化され、ただし、どういう訳かブルーレイ化されないまま今['20年]に至っています。それが今回、新宿武蔵野館での特集「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」でHDリマスター版による40年ぶりの劇場公開となりました。
     
「警部」ges.jpg 観ていてテンポがいいと思いました。ベルモント演じる男は、革ジャン・革ブーツで白いクラシックのスポーツカーをぶっ飛ばして登場するや、マリー・ラフォレ演じる警部の未亡人の家に乗り付け、車ごと窓をぶち破って侵入、自らセルッティと名乗り、カナダの刑務所から出所してきたばかりであり、殺されたのは妹だと自己紹介して金を請求する―どこの無法者かと思いきや実は刑事ということで、ただしこれは邦題がネタバレ気味でしょうか(原題は FLIC OU VOYOU(COP OR HOOD)、つまり「刑事か無法者か」)。
 
「警部」Flic-ou-voyou-de-Georges-Lautner-1979.jpg ただ、もう一つ大きなJulie-Jezequel-dans-Flic-ou-Voyou.jpgヤマがあって、ボロウィッツは二つの組織を対立させて自滅に追い込む黒澤明の「用心棒」みたな戦略をとるのですが、警察内部にも暗黒組織に通じた側にはボロウィッツを陥れようとする罠があって、ボロウィッツがどこまでそれに気が付いているかが分からず、観ていてはらはらさせられることです。一方で、ボロウィッツには娘(ジュリー・ジェゼケル)がいて、ホームドラマ的な親子問題も微妙に(時にユーモラスに)絡んで、さらに極力スタントマンを使わず体を張ってやっているアクションの部分にもユーモラスな場面があり、全体としてコメディ・アクション映画と言えるものになっています。

i「警部」ages.jpg この明るさが、アラン・ドロンのギャング映画などとは大きく異なる点で、フランスではアラン・ドロンより人気があるということですが、日本でも、ボロウィッツの人物造型はモンキー・パンチの「ルパン三世」や寺沢武一の「コブラ」に影響を与えたと言われてます(ただし、「ルパン三世」の雑誌連載そのものは'67年にスタートしているので、実際に「ルパン三世」に影響を与えたかどうかとなると「?(クエスチョン)」)。「ルパン三世」「コブラ」のルーツと言われながら、その割にはあまり注目されてこなかったようにも思いますが、相まみえてみると意外と楽しめた作品でした。
     
IMG_20201112_183719.jpgIMG_20201112_183526.jpg「警部(ジャン=ポール・ベルモンドの警部)」●原題:FLIC OU VOYOU(COP OR HOOD)●制作年:1978年●制作国:フランス●監督:ジョルジュ・ロートネル●製作:アラン・ポワレ●脚本:ジャン・エルマン/ミシェル・オーディアール●撮影:アンリ・ドカ●音楽:フィリップ・サルド●原案:ミシェル・グリリア●時間:108分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/マリー・ラフォレ/ジョルジュ・ジェレ/ジャン=フランソワ・バルメ/クロード・ブロッセ/トニー・ケンドール/ミシェル・ボーヌ/カトリーヌ・ラシェン/ジュリー・ジェゼケル●日本公開:1980/11●配給:エデン●最初に観た場所:新宿武蔵野館(20-11-12)(評価:★★★☆)

新宿武蔵野館(2020.11.12)

ジャン=ポール・ベルモンド傑作選Blu-ray BOX Iハードアクション編.jpgジャン=ポール・ベルモンド傑作選Blu-ray BOX Iハードアクション編<初回限定版>」(2021)

「恐怖に襲われた街」(1975/仏) 原題:PEUR SUR LA VILLE
「危険を買う男」(1976年/仏) 原題:L'ALPAGUEUR
「警部」(1978年/仏) 原題:FLIC OU VOYOU
「プロフェッショナル」(1981年/仏) 原題:LE PROFESSIONNEL

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