【2963】 ○ 殿山 泰司 (大庭萱朗:編) 『殿山泰司ベスト・エッセイ (2018/10 ちくま文庫) ★★★★

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「リズム感とスピード感あふれる口語体」(坪内祐三)。実は相当なインテリ? 

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殿山泰司ベスト・エッセイ (ちくま文庫)』['18年](カバーデザイン・イラスト:南伸坊) 須川栄三監督「螢川」('87年)

 名脇役であり、ジャズとミステリーをこよなく愛し、趣味を綴った著書も多数残している殿山泰司(1915-1989/73歳没)ですが、そのエッセイ集『三文役者あなあきい伝』('74年/講談社)などは、講談社文庫に収められた後、絶版になっていました。こうした著者のエッセイ集を、その没後に掘り起こして再度文庫化しているのがちくま文庫で、そのラインナップは以下の通りです。

三文役者あなあきい伝1・2.jpg ・『三文役者あなあきい伝〈PART1〉』('95年1月/ちくま文庫)
 ・『三文役者あなあきい伝〈PART2〉』('95年1月/ちくま文庫)』
 ・『JAMJAM日記』('96年2月/ちくま文庫)
 ・『三文役者のニッポンひとり旅』('00年2月/ちくま文庫)
 ・『三文役者の無責任放言錄』('00年9月/ちくま文庫)
 ・『バカな役者め!!』('01年3月/ちくま文庫)
 ・『三文役者のニッポン日記』('01年3月/ちくま文庫)
 ・『三文役者の待ち時間』('03年3月/ちくま文庫)

 先に取り上げた坪内祐三(1958-2020)著『文庫本を狙え!』('16年/ちくま文庫)で『三文役者のニッポンひとり旅』が紹介されていましたが、殿山泰司の盟友だった新藤兼人(1912-2012)の著書『三文役者の死―正伝殿山泰司』('00年/岩波現代文庫)をもとに新藤兼人自身が監督した映画「三文役者」('00年/主演:竹中直人)が公開されることになったことを話題とする一方、ここでも、「殿山泰司復活の大きな力となっているのは、何といっても、ちくま文庫だ」としています。

 また、坪内祐三は、殿山泰司の作品の特徴は、「リズム感とスピード感あふれる口語体」にあるとし、初期エッセイ『日本女地図』('69年/カッパ・ブックス)の角川文庫版('83年)で、糸井重里氏が「昭和軽薄体の父が嵐山光三郎であるならば、そのまぶたの父は殿山泰司である」と書いたことを紹介しています(そっか、糸井重里や椎名誠よりもずっと前の、言わば先駆者だったのだなあ)。

 復活してくれるのは有難いし、読んでいて面白いのですが、全部読むのはたいへんという人もいるかと配慮してくれた(?)のが本書ベストエッセイ集で、三部構成の1部は『三文役者のニッポン日記』、『三文役者あなあきい伝〈PART1・2〉』からの抜粋、第2部は『三文役者の無責任放言錄』、『三文役者のニッポン日記』、『JAMJAM日記』、『三文役者の待ち時間』、それと『殿山泰司のしゃべくり105日』('84年/講談社)からの抜粋、第3部がその他となっています。

愛のコリーダ 殿山.png 個人的には、自叙伝風に構成されている第1部が波乱万丈で特に面白く感じられましたが、銀座8丁目のおでん屋「お多幸」の息子だったのだなあと思い出しました(本人は役者になるため、家業は弟が継いだ)。小学校は泰明小学校かあ(公立校だが、何年か前にアルマーニを標準服にしたことで話題となった)。「お呼びがかかればどこへでも」をモットーに「三文役者」を自称し、大島渚監督の「愛のコリーダ」('76年/日・仏)で「フルチン」になったりしましたが、実生活では流行に敏感でお洒落であり、公私にわたりジーンズにサングラスがトレードマークだったようです。
大島 渚「愛のコリーダ」('76年)
新藤兼人「人間」('62年)
「人間」 殿山泰司山本圭.jpg 第1部の終わりの方にある、殿山泰司が出演した新藤兼人監督の「裸の島」('60年/主演:乙羽信子・殿山泰司)や野上弥生子原作の「人間」('62年/出演:乙羽信子・殿山泰司・山本圭・佐藤慶)など作品ごとの映画撮影時の裏話なども興味深かったですが(結構ハチャメチャな面のあったりする)、第2部に1977年から1980年までの日記の抜粋があり、撮影所に出向いて仕事したかと思えばジャズコンサートに行き、さらにミステリもたくさん読んで批評するなど、非常に密度の濃い時間を送っていることが窺えました。語り口とは裏腹に、相当インテリであるような印象を受けましたが、本人はそう見られることを極力避けていたのかもしれません。

黒澤 明「酔いどれ天使」('48年)/小津安二郎「お早よう」('59年)/小栗康平「泥の河」('81年)
酔いどれ天使Drunken-Angel-0.50.16.jpg小津 お早う 殿山.jpg泥の河 殿山泰司9.jpg 新藤兼人、大島渚のみならず、黒澤明、川島雄三、小津安二郎、野村芳太郎、今村昌平など多くの監督に愛されてその作品に起用され(小栗康平監督の「泥の河」('81年)に出演した時砂の器 殿山泰司.jpgのことも書かれていたなあ。舟の上から橋の上にいる子供にスイカを投げてやるオッさん役だった)、一方でこれだけエッセイ集を残しているわけで、充実した生き方であったのではないでしょうか。

野村芳太郎「砂の器」('74年)
  
田中小実昌・色川武大(阿佐田哲也)・殿山泰司
田中小実昌 色川武大 殿山泰司 .jpg田中小実昌(1925-2000/74歳没)
色川武大(1929-1989/60歳没)
殿山泰司(1915-1989/73歳没)

                             

    



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2020年12月 2日 00:07.

【2962】 ○ 坪内 祐三 『文庫本を狙え!』 (2016/08 ちくま文庫)《(2000/11 晶文社)》 ★★★★ was the previous entry in this blog.

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