【2940】 ○ 井上 梅次 「江戸川乱歩 美女シリーズ(第2話)/浴室の美女 (1978/01 テレビ朝日) ★★★★ (○ 江戸川 乱歩 『魔術師 (2018/07 江戸川乱歩文庫)《『魔術師―江戸川乱歩全集 第6巻』 (2004/11 光文社文庫)》 ★★★★)

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原作の面白さが活かされている。メロドラマ的には原作を超えたか。

江戸川乱歩「魔術師」より 浴室の美女 [DVD].jpg 2話)/浴室の美女1978t.jpg 2話)/浴室の美女8.jpg 魔術師 (江戸川乱歩文庫).jpg 江戸川乱歩全集 第6巻 魔術師.jpg
江戸川乱歩「魔術師」より 浴室の美女 [DVD]」夏樹陽子 『魔術師 (江戸川乱歩文庫)』['19年]『江戸川乱歩全集 第6巻 魔術師 (光文社文庫)』['04年]
2話)/浴室の美女 6.jpg2話)/浴室の美女1.jpg 榛名湖で静養中の明智小五郎(天地茂)は、玉村妙子(夏樹陽子)という女性に出会い、彼女の美しさに魅せられるが、彼女には起きる事を予感がする不思議な能力があるという。そんな折、資産家の伯父・福田徳二郎から、東京に戻ってきてほしいと電話がある。カウントダウンのような数字を示すものが順番の送られてくるようになって恐怖を覚え、妙子に助けを求めた2話)/浴室の美女2kubi.jpgのだ。東京に帰った妙子と福田は警察に相談するが、波越2話)/浴室の美女3kamen.png警部(荒井注)は、まだ何も起きていない事件なので、民間の探偵に頼むことを勧め、明智を紹介する。妙子の依頼と聞いて捜査に協力すると言った明智だが、帰京2話)/浴室の美女図5.jpgした上野駅で、福田の代理人という人物に騙され拉致される。やがて、福田が自室で首を落とされた姿で発見され、隠し金庫のダイアも盗まれていた。さらに翌日、"獄門舟"の札が掲げられて川を流れていた福田の首が発見される。一方で連れ去られた明智は船に監禁されていて、脱出しよ2話)/浴室の美女5sano.pngうとするも阻れる。玉村家に強い恨みをもった奥村源造(西村晃)が魔術師と称して明智に挑戦し、父親を殺された恨みを晴らすことに執念を燃やし、こ2話)/浴室の美女6nishi.jpgまの犯行を企てたのだった。明智は、犯罪への罪悪感を抱くその娘・綾子(高橋洋子)の助けで脱出するが、海中に落ちて水死体が発見されたとして、新聞に「明智小五郎氏 殺害さる」と報2話)/浴室の美女7.pngじられる。一方、福田の兄で宝石王の玉村(佐野周二)にも数字の通知が送られ始め、入浴中の妙子が何者かに襲われて傷を負う。さらに、長男・一郎(志垣太郎)は、危うく時計の針に首を落とされそうになる。最近雇われた庭師の音吉に犯人の疑いを抱いた玉村は、彼をクビにする。一方、明智の遺志を継いで、この事件の調査をしていた助手の文代(五十嵐めぐみ)は、玉村邸から怪しげな人物、"魔術師"その人が抜け出してきたのを発見、彼が《オクムラ魔術団》へ入っていくのを見届ける。彼女からの連絡で、《オクムラ魔術団》に踏み込んだ波越警部らは、間一髪で"魔術師"に逃げられてしまうが、その場には音吉もいた―。
少年探偵江戸川乱歩全集〈29〉魔術師
少年探偵江戸川乱歩全集 魔術師.jpg2話)/浴室の美女 endt.jpg 原作は、江戸川乱歩が1930(昭和5)年7月から翌年5月まで「講談倶楽部」に掲載した、文庫で300ページ(2018年版「江戸川乱歩文庫」(春陽堂))ほどの長編で、本人名義で児童向けにリライトされた作品もあります(ポプラ社『少年探偵 江戸川乱歩全集』(全46巻)の中の第27巻「黄金仮面」以降は、実際は本人ではなく別の作家が書いたものだったため、今は絶版となっている)。明智が死んだように見せかけるというのは、「007は二度死ぬ」('67年/英)みたいだなあ(ボンドガールみたいな敵中の味方がいるし)。作中の過去の犯罪について、「江戸川乱歩文庫」の解説によれば、「レ2話)/浴室の美女 kabe.jpgンガ壁に人間を塗り込める」というのは、ポーの「アモンティリャードの樽」の着想を得たとのことですが、ポーで「レンガ壁に人間を塗り込める」と言えば「黒猫」を思い浮かべる人も多いのでは。前半は犯人である"魔術師"が圧倒的に優勢なのが、終盤、明智が畳みかけるように逆転攻勢するする展開は原作もドラマと同じです(原作でTales of Terror 1962 2.jpgは「水責め」だったのがドラマでは「火責め」になっていたりしたが)。しかも、いったん"魔術師"が亡んで事件が解決したかにみえて、その後にもう一つ意外な展開があるのも原作通りです。

黒猫の怨霊」('62年/米)(原作:エドガー・アラン・ポー「黒猫」)
     
2話)/浴室の美女 furo.jpg シリーズ第1話の『吸血鬼』が原作の「氷柱の美女」は、原作を読むと途中で犯人が判ってしまうのが難で、そのままドラマでもそうなっていしまっていましたが、この『魔術師』が原作の第2話では、原作を読んでもラストの展開は全く予測できないのと同様、原作を知らずにドラマを観ると、原作と同じように最後に驚きが味わえるのではないでしょうか。その後このシリーズで"恒例"となる「浴室」シーンが、この作品に関しては、掟破りとも言える"映像のウソ"ぎりぎりの線にかかっているようにも思えますが、全体としては原作の面白さが活かされている回であり、パイロット版とも言える第1話から進化したように思います。

 ラストはメロドラマ的ですが、これはこれで良かったように思います。原作では犯人は自殺しないで刑務所行きとなる、あくまで"毒婦"として扱われていますが、ドラマでは明智の胸の中で死んでいく「呪われた宿命」を背負った哀しい女性、或いは「運命と闘っていた」女性ということになっています。原作では、明智の気持ちがこの女性から別の女性に移っていくというプロセスがあるのですが、ドラマではそこを描いていないので、この終わり方もありかなと思います。メロドラマ的には(江戸川乱歩はそれを指向していなかったかもしれないが)原作を超えているかもしれません。

2話)/浴室の美女4.png 原作を読んだ人にとって観ていて興味深いと思われるのは、五十嵐めぐみ(第1話の時から髪を切った)演じる明智の助手の文代が事件にどう絡むかではないでしょうか。原作には、明智の助手としての「文代」は登場せず、ただし、非常に重要なキャラクターとして「文代」が登2話)/浴室の美女 ayako.png場します。原作通りでいくと、ドラマでは、同一人物が時間を超えて同じ場所に二人いることになってしまうので、ドラマの方の「(原作における)文代」に別の名前を与え、明智の助手としての「文代」とは別人にしたということでしょう。それによって、ドラマにおける明智の助手としての「文代」は、有能で気丈ではあるけれど特別おどろおどろしい出自を有するのでもなく、また、原作のラストに示されているように将来「明智夫人」と呼ばれるようなことにもならないことが示唆されていることになるかと思います。

佐野周二(1912-1978)      
2話)/浴室の美女  tl.jpg2話)/浴室の美女 sano.png「江戸川乱歩 美女シリーズ(第1話)/氷柱の美女」●制作年:1977年●監督:井上梅次●プロデューサー:佐々木孟●脚本:宮川一郎●音楽:鏑木創●原作:江戸川乱歩「魔術師」●時間:72 分●出演:天知茂/五十嵐めぐみ/荒井注/西村晃/夏樹陽子/高橋洋子/志垣太郎/佐野周二/宮口二郎/高桐真/白石奈緒美/北町嘉郎/池田駿介/水原ゆう紀●放送局:テレビ朝日●放送日:1978/01/07(評価:★★★★)

    

     

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