【2927】 ○ 賈樟柯(ジャ・ジャンクー) 「青の稲妻」 (00年/中国・日・韓国・仏) (2003/02 ビターズ・エンド/オフィス北野) ★★★☆

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中国版「青春散歌 置けない日々」。監督の演出力はなかなかのものか。

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青の稲妻 [レンタル落ち]」趙濤(チャオ・タオ)/趙維威(チャオ・ウェイウェイ)
青の稲妻 dvd.jpg 2001年の山西省大同市。19歳の斌斌(ビンビン)(趙維威(チャオ・ウェイウェイ))は失業する。彼は恋人の圓圓(ユェンユェン)(周慶峰(チョウ・チンフォン))とデートを重ねていたが、圓圓が北京市の大学を受験することになる。斌斌は北京市へ行くために兵役検査を受けるが、肝炎を患っていることが判明して不合格となる。斌斌は小武(シャオウー)(王宏偉(ワン・ホンウェイ))から金を借りて、圓圓に携帯電話を買い与える。斌斌の親友である小済(シャオジイ)(呉〔王京〕(ウー・チョン))は、アルコール飲料「蒙古王酒」のキャンペーン・青の稲妻l04.jpgガールを務める巧巧(チャオチャオ)(趙濤(チャオ・タオ))と出会う。巧巧は喬三(チャオサン)(李竹斌(リー・チュウビン))というヤクザと交際しているが、小済は巧巧に惹かれていく。喬三と彼の部下から暴力を受けながらも、小済と巧巧は結ばれる。喬三は交通事故で命を落とすが、巧巧は小済のもとを去る。斌斌と小済は銀行強盗を計画する―。

青の稲妻 [DVD]
青の稲妻 [DVD].jpg 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督・脚本による2002年の中国・日本・韓国・フランス合作映画で、WTO加盟やオリンピック開催決定など、それまでにないほど社会情勢が急変した2001年の中国の地方都市が舞台です。賈樟柯監督としては「一瞬の夢」('97年)、「プラットフォーム」('00年)に続く長編第3作で、第1作・第2作は賈樟柯監督の故郷の山西省汾陽(フェンヤン)が舞台でしたが、この作品では同じ山西省の雲崗石窟で知られる大同(ダートン)が舞台となっています。第2作「プラットフォーム」は、第57回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞していますが、この「青の稲妻」も第55回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門出品作です。

青の稲妻es.jpg かつて橋浦方人監督の劇映画第一作で「青春散歌 置けない日々」('75年)という日本映画がありましたが、そうしたタイトルが当て嵌まりそうな中国映画だと思いました。2001年頃の中国地方都市の、中国共産党によって監視され、若者たちにとっては「出口なし」の状況を、党の目が行き届かないアンダーグラウンドな世界も含めよく描いているなあと思ったら、前作「プラットフォーム」同様、この作品も中国政府の検閲を通すことなく撮られた映画のようです。

青の稲妻-5.jpg 「プラットフォーム」の時より技術面で進歩している一方で、唐突な終わり方は、この監督の初期作品に共通の特徴のよう趙濤.jpgに思います。「蒙古王酒」のキャンペーン・ガール巧巧(チャオチャオ)を演じた趙濤(チャオ・タオ)は、「プラットフォーム」での晩生(おくて)の女子劇団員役からかなり任逍遥 賈樟柯.jpgの変貌ぶりで、やがて賈樟柯監督の妻となり、セレブ女優となっていくに際しての一歩を踏み出したという感じでしょうか(まだどこかアカ抜けないが)。金貸しの小武(シャオウー)を演じた王宏偉(ワン・ホンウェイ)は、前作では冴えない劇団員を主演で演じており、どんな役でもこなす俳優という感じ。一方、小済(シャオジイ)を演じた呉〔王京〕(ウー・チョン)は、監督にスカウトされた新人だそうですが、映画初出演とは思えないクールな存在感を醸しており、この監督の演出力はなかなかのものかもしれません。

 その監督自身が出演して、オペラ「椿姫」の「ラ・トラヴィアータ」を調子っぱずれで歌っています。一方、主人公がラストで歌うのは、元々は台湾の歌曲ながら、台湾よりも中国でヒットしたリッチー・レンの「任逍遙」で、この曲のタイトルが映画の原題となっています。

青の稲妻-p.jpg ストーリー的にちょっと弱いかなと思ったのは、主人公の斌斌(ビンビン)が銀行強盗をする動機で、巧巧に去られて自暴自棄になっているようにも見える小済の方はともかく、斌斌は新たな仕事に就いたばかりで、銀行強盗の罪が重罪とされる中で、そこまでやるかなあという気もしました。蓮實重彦氏がぴあが発行するカルチャー誌「Invitation」2003年3月号(創刊号)でこの作品を「ポストモダン中国のハードボイルド」として絶賛していましたが、個人的には、そこまでの完成度は感じられませんでした。ただ、90年代後半に登場した第六世代に属する監督の代表的存在として、陳凱歌(チェン・カイコー)や張藝謀(チャン・イーモウ)といった他の中国の監督の作品にはない独特の雰囲気が、この監督の初期作品にはあるように思います。

青の稲妻6.jpg「青の稲妻」●原題:任逍遥●制作年:2002年●制作国:中国・日本・韓国・フランス●監督・脚本:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)●製作:市山尚三/リー・キットミン●撮影:余力為(ユー・リクウァイ)●時間:112分●出演:趙濤(チャオ・タオ)/趙維威(チャオ・ウェイウェイ)/呉〔王京〕(ウー・チョン)/李竹斌(リー・チュウビン)/周慶峰(チョウ・チンフォン)/王宏偉(ワン・ホンウェイ)●日本公開:2003/02●配給:ビターズ・エンド/オフィス北野●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-11-14)(評価:★★★☆)

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