【2921】 ○ 井上 梅次 (原作:江戸川乱歩「妖虫」)「江戸川乱歩 美女シリーズ(第9話)/赤いさそりの美女」 (1979/06 テレビ朝日) ★★★★ (○ 江戸川 乱歩 「妖虫」ー『妖虫』 (2019/10 江戸川乱歩文庫)《「妖虫」―『目羅博士の不思議な犯罪―江戸川乱歩全集第8巻』(2004/06 光文社文庫)》 ★★★☆)

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「荒唐無稽小説」をシリーズの基調に沿って上手く改変したアレンジ力は評価できる。

9話)/赤いさそりの美女d.jpg 9話)/赤いさそりの美女t.png 9話)/赤いさそりの美女t2.png 妖虫 (江戸川乱歩文庫).jpg 目羅博士の不思議な犯罪.jpg
赤いさそりの美女~江戸川乱歩の「妖虫」 [DVD]」『妖虫 (江戸川乱歩文庫)』['15年]『江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪 (光文社文庫)』['04年]
9話)/赤いさそりの美女 2.jpg9話)赤いさそりの美女 宇都宮2.jpg 大宝映画夏の大作「燃える女」のヒロイン役を決めるためのコンテストの最終審査会にて、準女王に選ばれたのは相川珠子(野平ゆき)、そして女王として春川月子(三崎奈美)が選ばれた。このコンテストが出来レースだったことに不平を漏らす珠子と、その義理の姉となる桜井品子(永島瑛子)。そして、恋人役の男優・吉野圭一郎(永井秀和)が女王に王冠を戴冠させたその時、天井から照明器具が落ちてきた。間一髪、それを避けた二人だったが、これが、この後に起こる怪事件の前哨であることに気づいた者は誰もいなかった。やがて連続殺人が。街角にディスプレイされる春川月子と吉野圭一郎の死体。浴室で珠子に放たれる毒蠍。囚われの身となる品子。犯人は、明智探偵(天知茂)に変装して犯行を繰り返す―。

少年探偵江戸川乱歩全集〈31〉赤い妖虫
少年探偵江戸川乱歩全集〈31〉赤い妖虫.jpg 原作は、1933(昭和8)年12月から翌1934(昭和9)年10月まで雑誌「キング」に連載された長編「妖虫」で、本人名義で児童向けにリライトされた作品もあります(ポプラ社『少年探偵 江戸9話)/赤いさそりの美女 3.jpg川乱歩全集』(全46巻)の中の第27巻「黄金仮面」以降は、実際は本人ではなく別の作家が書いたものだったため、今は絶版となっている)。探偵役は三笠竜介という老人ですが(作者は当時、明智小五郎に替わる新キャラクターを模索していたらしい)、当然のことながらドラマでは天知茂演じる明智小五郎に置き換えられています。この作品について、乱歩本人は「自註自解」として、「相変わらずの荒唐無稽小説だが、真犯人とその動機はちょっと珍しい着想であった」と述べています。

赤いさそりの美女ド.jpg 作者本人が「荒唐無稽小説」と言うくらいなので、どこまで映像化できるのかなという思いはありましたが、思った以上に原作を反映していたように思います。バラバラ死体風のマネキン、銀座街頭ショーウインドウへの死体陳列、犯人と明智探偵の変装合戦、密室からの脱出など、このシリーズにおけるドラマとしてのリアリティを何とか維持しつつ頑張っていたように思います。

赤いさそりの美女 博士.jpg 原作と大きく違ったのは、蠍研究の世界的権威であったという匹田博士なる人物を登場させ、そこに犯人との愛憎劇を一枚咬ませていることで、原作は主犯格の者が手配の者を使っているのに対し、ドラマの方はこの二人の共犯になっていました。それと、原作では、珠子の家庭教師・殿村京子が次に教えることになった、珠子の学校の先輩の20歳になる美人ヴァイオリニスト・桜井品子が犯人の第三の標的になり、三笠竜介が何とか第三の殺人を起こさせまいとするものでしたが、ドラマでは、この桜井品子が珠子の義理の姉となっていて、彼女には犯人に狙われる理由があったことになっています。入浴中に狙われるのは野平ゆき(レイモン・ラディゲ原作「肉体の悪魔」('77年/日活))演じる珠子ですが、永島瑛子(清水一行原作「女教師」('77年/日活))演じる品子も危うい目に遭います(この部分は原作どおり)。

9話)/赤いさそりの美女 1.png 冒頭にミスコンの場面がありますが、原作では春川月子がミスジャパン、珠子がミストウキョウということで、同じミスコンで競ったわけではないようです。原作では、そうしたミスコンそのものは描かれていませんが、二人が競い合うミスコンをリアルタイムでやって、ドラマ映えするようにしたのでしょう。珠子が春川月子に代わって映画のヒロインに選ばれるのもドラマのオリジナル。また、珠子の家庭教師・殿村京子は原作では中年の醜女ということになっていて、ドラマではこれを美女である宇都宮雅代が演じており、ただし、原作とは異なるハンディを彼女に負わせています。

 ドラマのラストで、死亡したかと思われていた明智探偵が別人物に成りすまして登場するというこのシリーズのパターンをきっちり踏襲しているため、当然、老探偵・三笠竜介の原作とは異なっていますが、ドラマではさらに犯人同士の愛憎劇も織り込んでいるため、ラストも原作と違ったものになっています。この点は、単に追い詰められた犯人が自殺するという、パターナルな終わり方の原作を超えたかもしれません。

 原作に出てくる「蠍の着ぐるみ」と「一寸法師」はドラマでは出てきませんでしたが、まあ、出さなくて正解と言うか、出そうと思っても出せないだろなあと。永井秀和が映画スターの吉野圭一郎役で出ていますが、初夜で「蠍の呪いだ」なんて叫んだりして、殺されてやむなしといったキャラでした(この頃にはもうアイドル歌手ではなかったのか)。

 カップルが3組あったということでしょうか。登場人物が多く、また、犯人は変装でして犯行をするので、誰が誰だかという印象もありましたが、原作を読んでから観直してみると、「荒唐無稽小説」をシリーズの基調に沿って上手く改変していると言え、そのアレンジ力は大いに評価できるように思いました。

神山左門(天知茂.jpg大岡雪絵(宇津宮雅代.jpg 因みに、宇津宮雅代は、TBS・加藤剛主演のTVドラマ「大岡越前」の第1部('70年)で 初代「雪絵」(後の忠相の妻)役で第4話「慕情の人」から登場して、第6部('82年)まで雪絵役を演じ(敵によく捕まって人質になるが(笑)、小太刀の腕も確かで、悪人相手にひるむことはない)、その後を酒井和歌子に引き継いでいます(「雪絵」は、大岡越前.jpg加藤剛演じる「忠相」、高橋元太郎演じる「すっとびの辰三」、山口崇演じ大岡越前 天知茂.jpgる「徳川吉宗」らと並んで、全シリーズを通して登場した数少ないキャラクターであり、また、演者が交代しながら全シリーズ登場した唯一のキャラクターである)。また、天知茂も南町奉行与力「神山左門」(カミソリ左門)役で、このドラマシリーズの第1部から第3部('72-'73年)にレギュラー出演しています(祝言をあげたばかりの妻を盗賊に人質にとられ亡くしたため、悪に対する憎しみが人一倍強く、また、別人になりすまして敵方に潜入したり、常にニヒル感が漂う(笑)ところは「美女シリーズ」の明智小五郎と同じ)。

大岡越前t.jpg大岡越前1.jpg「大岡越前(1-15)」●監督:山内鉄也/内出好吉/佐々木康/工藤栄一ほか●製作総指揮:松下幸之助●製作:松下正治/丹羽正治/山下俊彦ほか●脚本:池上金男(池宮彰一郎)/稲垣俊/津田幸夫/加藤泰/宮川一郎/葉村彰子ほか●撮影:河原崎隆夫/平瀬静雄/萩屋信/平山善樹/脇治吉ほか●音楽:山下毅雄●出演:加藤剛/竹脇無我/片岡千惠藏/天知茂/山口崇/大坂志郎/土田早苗/高橋元太/大岡越前 忠相の父・大岡忠高 -2.jpg大岡越前 山口崇.jpg大岡越前 志村喬.jpg宇津宮雅代/夏八木勲/志村喬/北林早苗/松山英太郎/望月真理子/武原英子/酒井和歌子/平淑恵/森田健作/原田大二郎/西郷輝彦●放映:1970/03~1999/03(全402回)●放送局:TBS
天知茂(神山左門)・片岡千惠藏(忠相の父・大岡忠高)・高橋元太郎(すっとびの辰三) /山口崇(八代将軍・徳川吉宗)/志村喬(小石川養生所初代筆頭医師・海野呑舟)
 
山口崇 in「天下御免」(NHK・1971-72年)(主人公・平賀源内)/「クイズタイムショック」(テレビ朝日・2代目司会(1978-86年))/「御宿かわせみ」(NHK・シーズン1・2(1980-83年))(東吾の親友の定廻り同心・畝源三郎)/映画「記憶にございません!」(三谷幸喜監督・'19年/東宝)(啓介の恩師の元小学校教師・柳友一郎)
天下御免 山口崇.jpg クイズ タイムショック山口崇.jpg 御宿かわせみ 山口崇2.jpg 記憶にございません 山口崇4.jpg


9話)/赤いさそりの美女 野平.png9話)/赤いさそりの美女 永島.jpg9話)/赤いさそりの美女 宇都宮.jpg「江戸川乱歩 美女シリーズ(第9話)/赤いさそりの美女」●制作年:1979年●監督:井上梅次●プロデューサ:中井義/植野晃弘/佐々木孟●脚本:井上梅次●音楽:鏑木創●原作:江戸川乱歩「妖虫」●時間:95分●出演:天知茂/五十嵐めぐみ/柏原貴/荒井注/宇津宮雅代/永島瑛子/永井秀和/入川保則/野平ゆき/速水亮/本郷直樹/堀之紀/北町嘉郎/高木次郎/増田順司●放送局:テレビ朝日●放送日:1979/06/09(評価:★★★☆)
永島瑛子(桜井品子)          野平ゆき(相川珠子)
赤いさそりの美女1図2.jpg 9話)/赤いさそりの美女 野平2.png
宇津宮雅代(殿村京子)
赤いさそりの美女1.jpg 9話)/赤いさそりの美女 宇都宮1.jpg 9話)/赤いさそりの美女 宇都宮2.jpg

    

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