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大人のラブストーリー。「怪奇大作戦」らしくないと思わせておいて、最後に「らしさ」も。
第25話「京都買います」 勝呂誉(下) 岸田森/斉藤チヤ子
京都の寺で仏像が消失する事件が連続発生する。牧は考古学の権威・藤森教授を大学に訪ねるが、そこに助手として働いていた須藤美弥子(斉藤チヤ子)が彼の目にとまる。その夜、美弥子は盛り場で「京都を売って下さい」というビラを若者に配っていた。牧が彼女に話を訊くと、美弥子は仏像の美しさを分からない人々から京の都を買いたいのだと言う。牧は京都を愛する彼女の話を聞き、次第に二人の距離は近くなる。一方、仏像消失事件は更に続出、その現場には常に美弥子らしき人物が訪れていたという。事件との関連を感じながらも、牧は彼女に惹かれていく。そんな中、SRIでは物質電送の原理を解明し、現場から発信装置を発見する。苦悩しつつ美弥子を尾行する牧。やがてある寺で、彼女が発信装置を取り付ける現場を目撃する―。
監督は第23話「呪いの壷」と同じく実相寺昭雄で、「呪いの壷」の制作№が16でこの「京都買います」が17なので、出張ロケで2作続けて撮ったのでしょう。但し、やっつけ仕事で作っ印象は全くなく、むしろシリーズの中でも最高傑作との誉れ高いエピソードとなっています。
美弥子(名前がミヤコ!)が夜出かけるのが当時の所謂ゴーゴー喫茶で、古都の街並みと"現代"風俗を多比的に映し出しているところなどは、美弥子の「京都買います」の意図が発展し変化する京都に何の思いも感じない人々への憤りからきていることからすると、背景の描き方としてもメッセージ性があって旨いと思います(ゴーゴー喫茶も今はレトロではあるが)。
カドミウム光線により仏像を物質転送させるというのが、怪奇モノとは言え随分粗っぽいようにも思いますが、観ていくうちにいつの間にか牧と美弥子の"恋愛モノ"になっていき、そんなことはどうでもよくなって、古都を背景とした、しっとりとした大人のラブストーリーとして楽しめます(放送当時の評価は低かったようだが、後に再評価されるようになった)。
東福寺・通天橋
因みに、場面ごと違った寺や同じ寺でも別の場所でロケしていて、出てくる寺は、①金戒光明寺・長安院(美弥子を追う牧)、②平等院・鳳凰堂(堂の前に座る美弥子)、③金戒光明寺・三門(語らう牧と美弥子)、④萬福寺・天王殿(現場検証するSRIメンバーら)、⑤東福寺・通天橋(共に歩く牧と美弥子)、⑥金戒光明寺・阿弥陀堂(美弥子を見張る牧)、⑦慈照寺・観音殿[銀閣](庭園を歩く牧)、⑧化野念仏寺・西院の河原(石仏群の中を歩く牧)、⑨常寂光寺・仁王門(萱葺き屋根の門を歩く牧)、⑩二尊院・栄子内親王墓(石灯篭の間でたたずむ牧)、⑪光悦寺・参道(門をくぐり石畳をステップする牧)、⑫祇王寺(ラストの尼寺)と、ざっとみてもこれだけある凝り様!!
最終的には牧の捜査によって教授の犯行が暴かれ、美弥子も当事者(と言うより共犯だけどなぜか逮捕されていない)であるため二人の恋は悲恋に終わり、牧が訪ねた尼寺で美弥子は出家して正蓮尼という尼さんになっているわけですが、牧が立ち去ろうとして正蓮尼こと美弥子を振り返ると、彼女はなんと仏像になっていた―。
傑作だけれど「怪奇大作戦」らしくないなあと思わせておいて、最後にきっちり「らしさ」を見せるとともに、正蓮尼は実在したのか、実は美弥子は逮捕されていて、牧が見たのは美弥子が彼女の今の気持ちを牧に伝えるために牧の前に現出せしめた幻だったのではないかとか、いろいろ思いを巡らされる深みのある終わり方となっています。シリーズ№1エピソードに挙げるファンが多いのも頷けます。
斉藤チヤ子(須藤美弥子)
「怪奇大作戦(第25話)/京都買います」●制作年:1969年(制作№17)●監督:実相寺昭雄●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション/TBS●脚本:山浦弘靖●音楽:玉木宏樹●出演:勝呂誉/岸田森/松山省二/小橋玲子/原保美/小林昭二/斉藤チヤ子/岩田直二/佐藤祐爾●放送:1969/03/02●放送局:フTBS(評価:★★★★)
斉藤チヤ子「愛のバルコニー」(1962)