【2915】 ○ 山際 永三 「恐怖劇場アンバランス(第4話)/仮面の墓場 (1969年制作(制作No.6)1973/01 フジテレビ) ★★★☆

「●TVドラマ①50年代・60年代制作ドラマ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2916】 森川 時久 「恐怖劇場アンバランス(第6話)/地方紙を買う女
「●橋爪 功 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●「朝日賞」受賞者作」の インデックッスへ(唐 十郎)

唐十郎の怪演が印象的。この作品自体を〈唐十郎演出〉作とみてもいいのでは。

DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2.jpgtitle仮面の墓場.jpg (第4話)/仮面の墓場」 1 .png (第4話)/仮面の墓場  kara1.png
DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2」緑魔子(ヨーコ)/唐十郎(犬尾)
橋爪功(山口)/唐十郎(犬尾)
kamenno1.png 前衛劇団「からしだね」は落ち目の劇団であり、此度もちゃんとした劇場ではなく、潰れた映画館を借りての公演だが、演出家の犬尾(唐十郎)は今回の公演作「眼」を大成功させ、起死回生を図るつもりでいる。しかし、その思いが強すぎて過激な演出を思いつき、悪霊役を演じる白浜(三谷昇)に、二階席から滑車を使ってステージへ降りてくる演技を命じる。喘息持ちの白浜が気乗りしないままやってみて、1回目のテストは成功、しかし、照明係のジュン(星紀一)に押されての2回目に、バランスを崩して落下死してしまう。犬尾は、団員の山口(橋爪功)やヨーコ(緑魔子)仮面の墓場91.pngらを"共犯者"に巻き込んで、ボイラーでその遺体燃やしてしまう。ところがボイラー内から叫び声が上がり、白浜はまだ生きていたようだ。その後、団員らが白浜を見たという話があり、犬尾も彼の咳声を聞く。犬尾は「邪魔する気か」とわめき、ボイラーの扉を開け、焼けた骸骨を奥に押し込む。悪霊役はヨーコがやることになり、ヨーコの役は犬尾に憧れて田舎から出てきた少女・西野ツル(小仮面の墓場.jpg野千春)がやることに。一方、稽古中に白浜の幻影を見た山口は、もうやってられないと出ていく。「邪魔をする奴は殺してやる」と言う犬尾に怖れを抱いたヨーコは逃げようとするが、犬尾に追い詰められ刺殺される。犬尾はその遺体もまたボイラーに。ツルがボイラーでヨーコの遺体を見つけたと言っても、「夢なんだよ」と。そこへスポットライトが当たり、夢と現実の区別がつかなくなった犬尾は、今度はツルを絞め殺す。そして、何も知らず様子を見に着たマネージャーの坂井(早川保)の前で狂気の一人芝居を演じ始め、舞台の上からスクリーン上の少年時代の海岸に彷徨い出て―。
  
唐 十郎 朝日賞.jpg仮面の墓場111.png 「恐怖劇場アンバランス」の第4話(制作№6)で、監督は山際永三、脚本は市川森一。そして、60・70年代に時代の最先端を走った状況劇場を率いていた唐十郎が、リアルタイムで"落ち目の劇団"の演出家を演じています。冒頭に、子供時代の犬尾が海岸で拾った義眼を見知らぬ女の子に持っていかれる回想シーンがあり、それが犬尾がいま演出している芝居のモチーフになっていたり、彼がツルの中にその女の子の面影を見たり、ツル=女の子を殺して、舞台から海岸に彷徨い出るラストに(最後は消えた?)繋がっているようですが、そうしたもやっとしたモチーフ(市川森一創案?)よりも、どんどん壊れていく男・犬尾を演じた唐十郎の生身のインパクトの方が相対的には強かったです。ただ、アイデンティティ・クライシスはこの当時からの唐十郎のテーマでもありました。
唐十郎 2012(平成24)年度・第83回「朝日賞」授賞式
唐十郎/橋爪功/緑魔子
(第4話)/仮面の墓場」  .jpg

仮面の墓場5.png仮面の墓場 h.png図61.png その他にも、'63年に日本公開されたイングマール・ベルイマンの「第七の封印」風の悪魔のお面(映画では"死神"。「月光仮面」にもこの手のお面を付けた敵役は出てくるが)を終始つけたまま演技している三谷昇、「最近テレビにも出始めた役者」という設定に当時は重なったのではないかと思われる橋爪功、いかにもこの話の60年代的な雰囲気に馴染む緑魔子など、周辺や細部にも見どころ緑魔子4.jpg橋爪功2.jpg三谷昇.jpgは多いのですが、唐十郎の怪演が大方のところを持っていってしまったという印象でしょうか。終盤、展開が加速的にシュールなっていく感じをよく体現していました。第2話「死を予告する女」の蜷川幸雄と同じく、他人に演出を施す人間は自らも演技達者なのだなあと思わされます(まあ、唐十郎の場合、自身も舞台に立っていたが)。

 唐十郎は幼年期に育った御殿場で、母親から「富士山の地底奥深くに地底人が住んでおり、地上侵略のため夕方辺りが薄暗くなると富士五湖から這い上がってきて侵略に来る」という作り話を吹き込まれ、子どもの時には信じていたそうで、その体験が後の作風に影響を与え、駅のコインロッカーの一部に異次元へと繋がるドアがあるとといった、義眼仮面の墓場.jpg初期戯曲にみられるモチーフの源泉になっているとのこと。この作品も、山際永三監督、市川森一脚本ではありますが、、個人的には、この作品自体を〈唐十郎演出〉作とみてもいいように思いました(ラストの一人芝居は本人の即興だったとか)。個人的評価は、義眼のモチーフについていけなかったものの、レア度を加味して星3つ半としました(「義眼」の意味については、テレビドラマデータベース「恐怖劇場アンバランス(第4回)仮面の墓場」にある白井隆二氏執筆「忘れていた映像の楽しさ」(「放送文化」(日本放送出版協会刊)1973年3月号)より引用)に詳しい)。

1(第4話)/仮面の墓場図.png仮面の墓場00.jpg「恐怖劇場アンバランス(第4話)/仮面の墓場」●制作年: 1969年(制作№6)●監督:山際永三●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション/フジテレビ●脚本:市川森一●音楽:冨田勲●出演:唐十郎×蜷川幸雄.jpg唐十郎/早川保/三谷昇/星紀一/小野千春/高野浩幸/天野照子/鶴ひろみ/橋爪功/緑魔子/青島幸男(解説)●放送:1973/01/29●放送局:フジテレビ(評価:★★★☆)

蜷川幸雄×唐十郎(2013)

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1