【2914】 ○ 長谷部 安春 (原作:西村京太郎) 「恐怖劇場アンバランス(第3話)/殺しのゲーム (1970年制作(制作No.9)1973/01 フジテレビ) ★★★★

「●TVドラマ①50年代・60年代制作ドラマ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2915】 山際 永三 「恐怖劇場アンバランス(第4話)/仮面の墓場
「●岡田 英次 出演作品」の インデックッスへ 「●石橋 蓮司 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

衝撃のどんでん返し。相手は「ゲーム」が始まる前に仕掛けていたわけか。

DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2.jpg3殺しのゲーム title.jpg 1殺しのゲーム 岡田1.png
DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2」「殺しのゲーム」岡田英次(岡田)

(第3話)/殺しのゲーム .jpg ある病院で、何者かが夜中に侵入してカルテが荒らされる異変があった。翌日、岡田正男(岡田英次)はその病院に来ていた。胃が変で、急激に痩せ、医者は胃潰瘍だと言うが...。病院の看護婦・明子(春川ますみ)から話があると言われ、岡田は彼女に会う。明子は昨日、病院に侵入したのが岡田ではないかと聞き、岡田が否定すると、実は岡田はガンであると打ち明ける。本当のことを告げた方が良いと思ったと。岡田は帰途、自分はじき死ぬのだとヤケになり、階段にしゃがんで涙していると、若い女が「おじさん、あたしと遊ぼうよ」と声を掛け、岡田を連れ出す。女は連れの若い男(石橋蓮司)と一緒に踊るが、岡田はそんな気になれない。家への帰途、今度は見知らぬ男に声を掛けられ、男は名刺を差し、鈴木正助(田中春男)と名乗る。鈴木は岡田の全てを知っていると言う。名前、年齢、勤務先はもちろん、妻が2年前に事故で亡くなっていることも、子供が無いことも、岡田が胃ガンで余命1年の命であることも。彼はあなたの死の恐怖を和らげてあげるという。実は、鈴木も肺ガンで岡田より長くは生きられないらしい。鈴木は岡田に、先が短いがん患者同士互いを殺し合う「ゲーム」をしようと誘う。お互いがいつ自分を殺すのか、どうやって相手を殺そうかと考えている間は死の恐怖から逃れられると。殺人者になるのは死刑が怖いからで、お互い余命1年程度の身な第03話 「殺しのゲーム」図4.pngら死刑も怖くないと話す。岡田は、自分は仕事に打ち込むとして、この申し出を断ろうする。岡田が病院へ行くと医者が岡田の兄が心配して弟の病状を聞きに来たというが、岡田には兄はいない。明子は代休で何も知らなかったが、医者は岡田の兄と名乗る人物は岡田の妻が亡くなったことも知っていたと話す。ある日、岡田が常務(増田順司)から静養を言い渡される。岡田の兄を語った人物が、会社に岡田が胃ガンであることを知らせたのだ、岡田は、打ち込もうと思った仕事もなくなり落胆する。マンションの前まで来ると、明子が待っていて、岡田と一緒に住み、ここから病院へ通うと言う。二人の同居生活が始まるが、明子は岡田の面倒を看てくれて、暫くは平穏な日々が続き、岡田は、同居しているうちに、明子に恋心を抱き始める。そんな折、鈴木の脅しが始まり、岡田は、次々と命を狙われるような出来事に遭遇するようになる―。

第03話 「殺しのゲーム」図5.png 「恐怖劇場アンバランス」の第3話(制作№9)で、監督は、第9話「死体置場(モルグ)の殺人者」(制作№3)に続いて長谷部安春(放映順である「話数」と制作№がちょうど逆)。原作は西村京太郎の「殺しのゲーム」(『完全殺人』(角川文庫)所収)。西村京太郎と言うより、シリーズ第7話「夜が明けたら」の原作者・山田風太郎に作風が近いのではないかと思ったりしましたが、ラストはまさにミステリー作家ならではの衝撃のどんでん返しでした。

 事態が把握できるまでちょっと時間がかかったけれど、結局、鈴木が岡田について話したこと、また最後に自身について話したことは、岡田・鈴木それぞれの置かれている状況において、事実とはちょうど逆だったのだなあと。しかも、鈴木は、「ゲーム」が始まる前から、もう仕掛けをスタートしていたのだなあと。リアリティ面でどうかというのはありますが、プロットは秀逸だと思いました。結局、岡田を脅したのは鈴木だけれど、彼は最初と最後に登場するのと、あと、岡田の兄のふりをして病院に行ったり会社に行っただけで、不自然な出来事のほとんどの実行犯は......と、後でいろいろ考えていくと、結構怖いかも(最後に話したことの中に一部事実もあったわけだ)。

(第3話)/殺しのゲーム図4.png このシリーズの他のエピソードにもありますが、当時、本人へのガン告知が義務化されていなかったという前提条件のもとに成り立っている話ではあり、かつてはドラマなどで、ガンと知らされていない本人の前で無理して明るく振る舞うも、やがて泣き出して本人に知れるというのが"定番"としてあったりしました。ただ、今の時代には当てはまらない状況設定であることを割り引いても、これはこれで面白かったように思います。

 岡田英次は、増村保造監督の 「女体(じょたい)」('69年/大映)の時もそうでしたが、こうした鬱屈した役が合っているように見えました。鈴木を演じた田中春男も良石橋蓮司 第3話)/殺しのゲーム3.pngかったし、ぽっちゃり系の春川ますみもでいかにも包容感ありそうな感じでいいです。時代を反映していると思ったのは、石橋蓮司が演じる若い男が、岡田にチキンレースっぽい賭けを仕掛けて、結局、恋人と共にクルマごと海に落ちてしまう石橋 蓮司3.jpg場面で、いわば"時代の虚無感"を象徴しているでしょうか。作品的には"賭けの敗者"という位置づけで、ラストと対比させているのかもしれません。石橋蓮司は、「あらかじめ失われた恋人たちよ」('71年/ATG)の時よりかなり若く見え、髪の毛がふさふさであることにも、60年代末・70年代初期を感じました(笑)。

春川ますみ(明子)/田中春男(鈴木)
春川ますみ71.png 田中春男81.png

1(第3話)/殺しのゲーム図.png「恐怖劇場アンバランス(第3話)/殺しのゲーム」●制作年: 1970年(制作№9)●監督:長谷部安春●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション/フジテレビ●脚本:若槻文三●音楽:冨田勲●原作:西村京太郎「殺しのゲーム」●出演:岡田英次/石橋蓮司/米岡雅子/田中春男/増田順司/松本染升/小川幾太郎/和田啓/山岡勢津子/小沢美知子/永谷悟一/春川ますみ/青島幸男(解説)●放送:1973/01/22●放送局:フジテレビ(評価:★★★★)

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1