【2887】 ○ 諸星 大二郎 『不熟 1970-2012 (2012/10 河出書房新社) ★★★★

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作風の変遷を概観できる。これだけ網羅していれば立派。画集として堪能できる。

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不熟 1970〜2012 諸星大二郎・画集 Morohoshi Daijiro ARTWORK

不熟30-31.jpg 漫画家・諸星大二郎(1949年生まれ)がこれまでの創作活動で描いた絵の中から選びぬいた画集です。単行本として刊行された漫画の表紙や扉絵、挿画などとして描かれたものが殆どであるため、ここでのジャンル分けは「イラスト集」としましたが、一枚一枚の絵に感じられる尽きないイマジネーションの奔出から、芸術作品としての画集として鑑賞してもいいのではないでしょうか。

不熟38-39.jpg 本人あとがきによれば、カラー絵はどうしても単行本のカバー絵などに限られ、それ以外にカラー絵を描く機会があまりなかったようで、画集として構成するために集めるのがたいへんだったようです。「不熟」というタイトルは、40年描いてきても、昔の未熟さから抜け出ていない思いがあり、いっそ最後まで未熟でいようと、未熟ではなく不熟としたとのこと。巻末の漫画家・高橋葉介氏との対談でも、「カラー自信がない」と述べていて、随分と謙虚だなあ。

不熟64.jpg 125ページのうち96ページがカラーで、ほぼ時系列(単行本発行順)に並べられているので、作風の推移などもわかりやすいです。対談からも窺えますが、やはりゴヤやダリの影響を受けているようです。代表作『西遊妖猿伝』と他の作品で、人物の眼など描き方やタッチが違うなあと思っていましたが、これは同時期に作品によって使い分けていたのだなあ。一方で、独特のエロスが感じられるとも評される女性の肉体の描き方は、時期によって多少変遷しているようです。

 このように、作風の特徴、変遷を概観できるのがいいです。マニアックなファンからは、全ての単行本を網羅するには至っていないとの不満もあるようですが、個人的には、これだけ網羅していれば立派なものではないかと思いました(逸失しているものも多いのでは)。もちろん画集として堪能できますが、絵を眺めていると今度は、漫画作品の方を読みたくなります。

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