【2882】 ◎ 加藤 周一 『読書術―頭の回転をよくする』 (1962/10 カッパ・ブックス)《『読書術』 (2000/11 岩波現代文庫)》 ★★★★☆

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半世紀を経ても古さを感じさせない。スマホ時代の今だからこそ読むべきかも。

読書術 加藤周一.jpg 頭の回転をよくする読書術 86.jpg 読書術 (同時代ライブラリー).jpg 読書術 加藤周一 岩波現代文庫2000.jpg
読書術―頭の回転をよくする (カッパ・ブックス)』['62年](カバーデザイン:田中一光)『頭の回転をよくする読書術 (光文社文庫)』['86年]『読書術 (同時代ライブラリー)』['93年]『読書術 (岩波現代文庫)』['00年]

I読書術―頭の回転をよくする (カッパ・ブックス).JPGI読書術_5463.JPG 評論家で医学博士でもあった加藤周一(1919-2008/89歳没)による主に若者(高校生くらいか)に向けの読書術の本で、第Ⅰ部で、本をどこで読むかというテーマを取り上げ、第Ⅱ部で、どう読むか、その技術について述べており、第Ⅱ部は、遅く読む「精読術」、速く読む「速読術」、本を読まない「読書術」、外国の本を読む「解読術」、新聞・雑誌を読む「看破術」、難しい本を読む「読書術」の6章から成っています。

 「本をどこで読むか」ということについては、基本的にどこでも読めるのが映画やテレビにはない本の良さだとしながらも、読書の能率がグンと上がる場所は「外洋航路の貨物船」であると言っているのが面白いです。でも、より現実的な"乗り物"を考えるならば「通勤電車」がいいとし、混雑する通勤電車の中では、ページをめくらなくてもいい本を選び、電車に乗る時には1冊だけ持つようにし、受験生なら英単語集、社会人なら外国語テキストがいいと述べています。

本文イラスト:金森馨
I読書術_5464.JPG 遅く読む「精読術」については、古典はゆっくり読むべきだとし、日本人のものの考え方を知るために論語、仏教の経典、古事記、万葉集などを読み、西洋を知るためには聖書とギリシャ哲学を学ばなければならず、それらは一度だけ読むのではなく、繰り返しゆっくりと読むことが大切だとしています。

 速く読む「速読術」は、これはこれで、専門化された知識の集積がおそろしく速い現代においては必要であるとし、眼球をどう動かすかといったことから、とばし読みの秘訣まで、わかりやすく指南しています。飛ばし読みは単語に注目することがポイントで、日本語はこの技法に向いているようです。また、一冊ではなく同時に数冊読む方法についても説いています。現代文学は速読すべしとも。

 外国の本を読む「解読術」については、大学、高校で使う教科書の内容はつまらないものが多く、それよりも自分が興味のある分野の本をたくさん読んだほうがいいとしています(エロ本でもよいと)。

 新聞・雑誌を読む「看破術」では、新聞を一紙だけでなく二紙以上読むことを勧め(新聞によって立場が異なる)、また、見出しだけを読んではならないとしています(新聞の見出しは当てにならず事実とは少し違うものになっている)。一時期、新聞を二紙以上購読していた時期があり、新聞によって書いてあることというより記事の扱いが随分異なることを痛切に思ったことがありますが、結局、自分に合った1紙しか読まなくなってしまったなあ。

 難しい本を読む「読書術」では、難解な本が難しい理由は、一つは、作者の問題で、文章が悪く、作者自身も専門用語などを理解しておらず、何を書いているか分かっていない場合があり、もう一つは、読者自身の問題で、文章に使われている用語が分かっていない場合があるとしています。だから、単語の意味を知っておくことは重要だと。

 何十年ぶりかの再読ですが、高校生の時に読んで最も印象に残ったのは、最後の、「難解な本が難しい理由」は、「作者の問題で、文章が悪く、作者自身も専門用語などを理解しておらず、何を書いているか分かっていない場合」があるということで、この言説に何だかすごく励まされように思います。

 でも、今思えば、この著者って「超頭いいー」人でした。東大医学部出身の作家・評論家と言えば、明治は森鴎外が代表格ですが、昭和は、安部公房、加賀乙彦、そして加藤周一ということになるのではないでしょうか(意外と少ない)。「通勤電車」読書のところに出てくる、「電車通勤1年間でラテン語をマスターした男」の話って著者自身のことだし、「速読術」のところで、小学校5年生の時に5年生用と6年生用の授業の内容を覚えて、飛び級で中学に入ったというのも、東京府立一中(現在の日比谷高校)から一高理科(現在の東大教養学部)という"秀才"コースを歩んだ著者のことでした。

 まあ、自分とは頭の出来に雲泥の差があるのでしょうが、それでも、「本が難しい」のは著者の責任であるという言説には、やっぱり励まされた(笑)。この本は、学生時代に限らず、社会人になってからも、もっと何度か読み返してみればよかったかも。小説やビジネス書の読み方で参考になる部分は多くあったように思います。

 1962(昭和37)年刊行、と半世紀以上も前の本ですが、それほど古臭さは感じさせません。当時としては高校生向きなのかもしれませんが、若い世代があまり本を読まなくなったと言われる昨今、いや、今や世代に関係なく、電車に乗れば本を読んでいる人よりスマホをいじっている人の方がずっと多い昨今だからこそ、ビジネスパーソンにお薦めできる一冊ではないかと思います。

【1986年文庫化[光文社文庫(『頭の回転をよくする読書術』)]/1993年[岩波同時代ライブラリー(『読書術』)]/2000年再文庫化[岩波現代文庫(『読書術』)]】

    


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和田泰明

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