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読み物を読むように読めてしまい、それでいて頭によく残るのがいい。
『発明発見99の謎―だれが、なぜ最初に気がついたか (1978年) (サンポウ・ブックス)』['78年]『科学の起源99の謎―宇宙の発見から数・生命・動力の発見まで (1976年) (サンポウ・ブックス)』['76年]
本書の著者・三石巌(1901-1997)は物理学者ですが、70歳を過ぎてから分子生物学や栄養学での研究も行うようになり、独自に編み出した分子栄養学を提唱して、健康自主管理運動の拠点として1981年にメガビタミン協会、1982年に株式会社メグビー設立したという人物です。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余りとなり、長寿を保ちつつ生涯現役を全うしています。死去の2週間前まで雪山でスキーを楽しみ、担当医は「ガンなど一切なく、臓器はすべて正常でした。三石理論でガンが予防できることを、ご自身の体で証明されたのですね」と語っています。
その著書の一部は今なお読み継がれていて、あたかも著者が存命しているかのように毎年刊行されており、メジャーリーガーのダルビッシュ有なども信奉者です。どこかの栄養士がツイッターで著者の栄養学を、「三石巌氏は長く研究されているようですが、論文がありませんのでトンデモです」と批判したのに対し、ダルビッシュは「多分あなたがトンデモだと思いますよ」とツイートしていました(笑)。
本書は物理や化学に特化した入門書ではなく、科学一般の疑問に広く答えることで、読者に科学的な知識やセンスを養ってもらうことを意図したものと思われ、昔はこの著者に限らず、広く「科学」を解説できる学者が結構いたように思います。思えば、あのアインシュタインだって(「物理学」限定だが)『物理学はいかに創られたか』(共著・岩波新書)という入門書を書いているぐらいですが、今はこうした分野はサイセンスライターの領域なのでしょうか。
本書は、「青空の科学」「飛行機の科学」「「大気圏外の科学」「外から見た地球の科学」「ひかりの科学」「ミクロ世界の科学」「身のまわりの科学」「発見のはなし」「発明のはなし」の9章からなり、この中に、例えば第1章であれば「空気はいつ、だれが発見したか」「空気はなぜ見えないか」といった問いが設けられていますが、1つの章の中で各問いに連続性があるため、1つわかって、それをベースに次に進むというスタイルになっています。
したがって、バラバラに問いが設定されているよりも読みやすく、また、理解しやすいです。そうした中に、「紅茶とコーヒーはどちらがよいか」といったごく日常に関わる問いや、「コンピュータは何のために発明されたか」といった学校ではあまり教わらないような問いが織り込まれていたりもし、読み物を読むように読めてしまい、それでいて頭によく残るというのが本書のいいところではないかと思います。先に同著者の『』も読みましたが(と言っても随分以前になるが)これも良かったです。