【2877】 ○ 和田 誠 (絵) 『3人がいっぱい➀ (1981/03 新潮文庫) ★★★★

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人選や文章も楽しめるが、やはり一番は和田誠の描く似顔絵。

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3人がいっぱい 1 (新潮文庫 わ 3-1)

 雑誌「小説新潮」の1973(昭和48)年1月号から1976(昭和51)年6月号までに掲載されたコラムを文庫化したもので、単行本化を経てはおらず、和田誠(1936-2019)の名前で出た本としては新潮文庫初登場でした。

3人がいっぱい➀_5430.JPG コラムの趣旨は、「今月の3人」として、毎月テーマを決めてそのテーマに沿った3人の有名人に登場してもらい、その3人の似顔絵を和田誠が描くというもので、当初は和田誠自身がテーマを決めて「今月の3人」を選び、その3人についてイラストを前景として余白に文章も書くというものでしたが、このスタイルは1973年12月号で終わり、1974年からは「続・今月の3人」として、人選と文章を毎月異なる著名人が担当し、和田誠はイラストを担当するものとなっています。

 この形になったお陰で長続きできたのか、1975年から1976年6月号までは「新・今月の3人」として連載は続き、それが本書に収めれられているわけですが(42組13人がいっぱい➀_5431.JPG26人)、連載は「今月の3人」にタイトルを戻して1976年7月号から1979年(昭和54)年12月号まで続き、後半部分(42組126人)は『3人がいっぱい②』として同じく文庫化されています。

 まず、シンプルな線で本人の特徴を上手く写しとった絵に目が行き、次にどのような切り口で誰を選んだのかが面白く、それで文章も読むといった感じでしょうか。まず、和田誠自身がテーマ決めと人選をしていた1973(昭和48)年は、1月は「多忙」と題して、笹沢佐保氏、愛川欽也氏、赤塚不二夫氏が取り上げられていて、当時の売れっ子ぶりが窺えます。8月は「お寺」と題して、、丹羽文雄氏、植木等氏、篠山紀信氏が取り上げられていますが、3人とも実家がお寺だったのだなあ(1973年だけ画中の名前に男性は「氏」、女性は「さん」がついている)。

3人がいっぱい➀_5432.JPG 1974(昭和49)年以降は、選者のトップバッターは文庫解説も書いている吉行淳之介で、「ノム・ウツ・カウ」と題して、"ノム"で山口瞳、"ウツ"で生島治郎、" カウ"で川上宗薫を選んでいて、川上宗薫は巨大なイヌを飼っているとのこと(笑)。同年6月は、選者がSF作家の小3人がいっぱい➀_5433.JPG松左京で、「SF三大図絵」と題して、星新一、筒井康隆、半村良を選んでいます。8月は、漫画家の東海林さだおが「三人をハゲます会」と題して、"角"として稲垣足穂、"丸"として田中小実昌、"三角"として殿山泰司を選んでいます。形状で区分しているところがさすがに漫画3人がいっぱい➀_5434.JPG家(笑)。それをイラスト化しているのは和田誠ですが。

 1975(昭和50)年に入ると、その田中小実昌が8月の選者となって、「三大ボイン歌手」と題して、中山千夏、戸川昌子、3人がいっぱい➀_5435.JPG淡谷のリ子を取り上げたりしていますが、こうしてみると、亡くなった人も多いですが、存命で現役の人も結構いるなあという印象です。そうした人はものすごく職歴や芸歴が長いことになりますが、それだけ早くに世に出たということなのでしょう。芸能人で言えば黒柳徹子然り、美輪明宏然り、作家で言えば佐藤愛子然り、大江健三郎然り(庄司薫みたいに書かなくなってしまった作家もいるが)。

 結構、選ばれた人が今度は選ぶ側に回っていたりして、まあ、人選や文章も楽しめますが、やはり一番は和田誠の描く似顔絵でしょうか。解説の吉行淳之介(この人も選ぶ側であったり選ばれる側であったりする)は、和田誠の描く似顔絵を山藤章二(この人も選ぶ側であったり選ばれる側であったりする)のそれと比較して「淡泊」としていますが、そういう表現の仕方もあるのかもしれません。

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This page contains a single entry by wada published on 2020年4月26日 03:19.

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