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真鍋博の插絵と星新一のショーショートの組み合わせは、双方にとって相性ばっちり。
『真鍋博のプラネタリウム:星新一の挿絵たち (ちくま文庫)』['13年]『真鍋博のプラネタリウム―星新一の挿絵たち (新潮文庫)』['83年]真鍋博/星新一
名コンビと言われた星新一(1926‐1997)と真鍋博(1932‐2000)ですが、本書は、雑誌掲載時の作品を中心に「真鍋博の插絵」という視点で集めた唯一の作品集であるとのことで、1983(昭和58)年に〈新潮文庫〉として刊行されています。この2013(平成25)年刊行の再文庫化版(〈ちくま文庫〉版)では、従来の星新一によるまえがき、真鍋博によるあとがきプラス、新たに真鍋博の子息で恐竜学者の真鍋真氏による解説が加わっています。
星新一作品の插絵は和田誠、ヒサクニヒコ、そして真鍋博が御三家と呼ばれていますが、やはり一番印象に残っているのは真鍋博の插絵のような気がします。真鍋博自身も、筒井康隆作品の插画やアガサ・クリスティのハヤカワ・ミステリ文庫のカバー絵なども手掛けていますが、星新一作品との組み合わせは、双方にとって相性ばっちりだったように思います。
本書は、その相性の良さを堪能できますが、真鍋博の插絵を多く紹介するために、星新一のショートショートの方は、「おーいでてこーい」(星新一のまえがきによると、これが最初に真鍋博と組んだ作品とのこと。和田誠と知り合ったのはその9年後)、「マイ国家」「ボッコちゃん」などの代表作にしても、書き出しやさわりの部分だけの引用になっています。結末や核心に触れていないので、これはこれで、これからどうなるのだろうという余韻を残して悪くないと思いました(どんな結末だったか忘れてるなあ)。
それでも、全部このスタイルだと読者がカタルシス不全になると考えたのか、30ページおきぐらいに結末まで全文掲載している作品が出てきます。そのラインアップは「はじめての例」「窓の奥」「いやな笑い」「追われる男」「幸運の未来」「夢のような星」となっており、先に挙げた「マイ国家」「ボッコちゃん」といった短編集の表題作となるような有名なものではないところが、またミソなのかもしれません(ほぼ初読のはずなので、插絵から結末を想像して読んで欲しいとのことらしい)。
難を言えば、真鍋博の插絵が、中には見開きいっぱいにスペースをとっているものもありますが、全体としては小さいものが多い点で、これは、旧版も文庫でありるため致し方無いのかもしれません。目をうんと近づけて見てしまいました。