【2872】 ◎ 和田 誠 『Book Covers in Wadaland―和田誠 装丁集』 (2014/11 アルテスパブリッシング) ★★★★☆

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多くの作家との相性の良さ。「装丁のコツ」は「初校ゲラをよく読むこと」と。

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Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集』 和田 誠(1936-2019)

2Book Covers in Wadaland.jpg 昨年['19年]10月に亡くなったイラストレーター和田誠(1936-2019)の装丁集で、2014年刊行。それまでの20年間に装丁を手がけた書籍・文庫を中心としたデザイン作をフルカラーで716点収録し、正方形サイズの上製本に収めたもので、著者の200冊目の著作にあたるとのことです。因みに、書籍・文庫本はすべて、著者自身が手元に保存している原本や色校紙を撮影・スキャンしたものだそうです。

 著者・和田誠は、多摩美術大学図案(現・デザイン)科卒業後、1959(昭和34)年に、今も銀座にある広告制作プロダクションのライトパブリシティにデザイナーとして入社し、1968(昭和43)年に退社、フリーになっていますが、本書によれば、最初に装丁を手掛けたのは、1961年の寺山修司・湯川れい子編『ジャズをたのしむ本』で、これは寺山修司が学生時代からの友人であったため、著者を指名してくれたのではないかと述べています。

 その後、もともと絵本を作りたいといった願望があったものの依頼してくれる出版社がなかったため、私家版で作ることにし、絵本には「お話」が必要だがそれは誰かに描いてもらうしかなく、そこで、星新一や谷川俊太郎など知り合ったばかりの作家に依頼して、1963年から65年まで3年間に7冊の私家版絵本を関背させたとのと。やっぱり仕事は待ってるだけじゃこない。しかも、在職中にそこまでやっているから、たいしたものです。

1Book Covers in Wadaland.jpgBook Covers in Wadaland_7926.JPG 独立してからも谷川俊太郎との共作を多く手掛け、70年代には、1972年に遠藤周作の『ぐうたら人間学』の装丁をしたことからその作品を多く手掛けたとのこと。自身は、自分が装丁する作家を思い浮かべると「星新一さん、丸谷才一さん、阿川佐和子さんが主な3人である」と述べています。

 他のイラストレーターも、例えばこの作家ならこのイラストレーターというお決まりの組み合わせがあったりしますが、和田誠の場合、そうしたコアな関係の作家の数が抜きん出て多いように思います。谷川俊太郎や星新一、丸谷才一、阿川佐和子に限らず、村上春樹、三谷幸喜、井上ひさし、ジェイムズ・ジョイスなどもそうでしょう。

 著者は、「装丁のコツ」を人に訊かれ、「初校ゲラをよく読むことです」と答えていたそうで、この辺りにも、これだけ多くの作家と相性が合う理由があるように思いました。保存版として手元に置いておきたい1冊です。

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This page contains a single entry by wada published on 2020年3月 5日 23:57.

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