【2870】 ○ 田中 実 (編) 『平凡 元気にさよなら―THE HEIBON FINAL 保存版 1987年12月』 (1987/12 マガジンハウス) ★★★☆

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アイドルの時代がピークを過ぎたことが休刊の原因か。今のアイドルって全然〈偶像〉ではないなあと。
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平凡 元気にさよなら THE HEIBON FINAL 保存版 1987年12月 [雑誌]』/山口百恵 photo by 西郷忠隆
1945年12月号(創刊号)/1955年03月号/1963年11月号
月刊平凡 創刊 1945.jpg月刊平凡 1955-3.jpg月刊平凡 1963-11.jpg マガジンハウスという出版社は、1983年に平凡出版から社名変更しましたが、「週刊平凡」(1959年創刊)や「平凡パンチ」(1964年創刊)といった雑誌をよく知る世代は、平凡出版という社名の方がこれらの雑誌とリンクしやすいかもしれません。この平凡出版という社名は、1954年に凡人社が組織変更されて生まれたもので、その凡人社の創立が1945(昭和20)年であり、その年の11月に月刊「平凡」が創刊され、当初は文芸誌としてスタートしたのが、やがて大衆娯楽誌、アイドル雑誌へと変遷していきます。

平凡 最終号_7907.JPG 本書は、その月刊「平凡」の最終号(1987(昭和62)年12月号)で、アイドルたちの写真特集の集大成になっています。基本的には、一人一人のアイドルについて、一人のカメラマンがある一時期に雑誌の特集として撮った一連の写真で構成されています。取り上げられているアイドルは以下の通り。

斉藤由貴 photo by 松本国彦/小泉今日子 photo by 嶋陽一/荻野目洋子 photo by 小堀篤信
1平凡斎藤.png1平凡小泉.png平凡 最終号_7914.JPG 男闘呼組/南野陽子/仲村トオル/C-C-B/斉藤由貴/渡辺美奈代/チェッカーズ/小泉今日子/中森明菜/吉川晃司/少年隊/渡辺満里奈/荻野目洋子/シブがき隊. 山口百恵/薬師丸ひろ子/近藤雅彦/中山美穂/桑田佳祐/芳本美代子/とんねるず/菊池桃子/松田聖子/C.B.C.B./本田美奈子/西村知美/光 GENJI/田原俊彦

山口百恵 photo by 西郷忠隆/中山美穂 photo by 松本国彦
1平凡山口.jpg1平凡中山.png こうしてみると、引退したりいなくなったりしている人もいるけれど、今も頑張っている人も結構いるなという感じです。でも、アイドルという視点でみると、当時においても「ちょっと前」の姿ということになる人が殆どでしょうか。山口百恵は1980年に結婚引退しているし、松田聖子は1985年に結婚、まあ、翌年、神田正輝との間の長女・沙也加を出産後も、すぐに休業前と変わらず"アイドル歌手"として活躍はしたけれど...。

 松田聖子(1979年デビュー)に限らず、デビューして間もない頃の写真を集めているので、当時としても懐かしく思えたのではないでしょうか。「最終号」「保存版」というコンセプトには沿っているように思いますが、今見ると「過去完了形」みたいな二重の時制を感じます。 

平凡 最終号_7908.JPG1平凡1960-70.png1平凡1917-80.png 合間に、総集編として、Ⅰ.1945~1959、Ⅱ.1960~1970、Ⅲ.1971~1980、Ⅳ.1981~1987 というコーナーが挟まっていて、歴史ある雑誌の全体の振り返りとなっていて、この中で、例えば50年代であれば、石原裕次郎と美空ひばりのツーショットや美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみの三人娘、60年代であれば、1平凡ピンクレディ.png橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦の御三家、70年代であれば小柳ルミ子・南沙織・天地真理の新三人娘やピンク・レディーなどの写真も見られます。

 ただ、「本文」とも言える写真集成の方は、先に述べたように"少し前までアイドルだった人"、つまり70年代終わりからから80年代にかけてのア1平凡山口2.pngイドルが中心になっていて、いつの時代にもアイドルというのはいたのでしょうけれど(そのアイドルと共に歩んできたのが「平凡」とか「明星」といった雑誌)、その頃が一番その言葉がぴったりくる〈アイドルの時代〉だったのかなという気がします。そういう〈アイドルの時代〉のピークが過ぎたことが休刊の原因ではないかなあ(因みに、1959年5月創刊の「週刊平凡」も、1987年10月をもって休刊となっている)。

菊池桃子 photo by 坂本幸男/松田聖子 photo by 折笠光子
平凡 最終号_7921.JPG平凡 最終号_7922.JPG 次にどういう時代が来たのかよく分からないけれど、かつての"アイドルとしての輪郭がはっきりした"アイドルに比べ、昨今の乃木坂46、欅坂46、日向坂46といった坂道シリーズのアイドルグループなどは、何となく焦点が定まらないような気がします。「アイドル」とは本来は〈偶像〉の意ですが、今のアイドルって「クラスでちょっと目立つ子」程度で、〈偶像〉とまではいかないとは誰しもが思うのでは。坂道シリーズのメンバーについて言えば、1グループあたりの人数が多すぎるというのもあるけれど、彼女たちにとってはアイドルが〈目的〉ではなく〈手段〉になっているのではないかなあ。何の手段かは様々だと思いますが、何か見ていて「就活」か「婚活」をしているように見えます。昨年['19年]のNHK紅白歌合戦に出た郷ひろみや松田聖子ではないですが(この二人はアイドルを〈目的〉にしているように感じる)、アイドル不在だからこそかつてのアイドルが復活する余地があるのかもしれません。

中森明菜 photo by 伊東秀雄/本田美奈子 photo by 中込一賀
平凡 最終号6L.jpg 平凡 最終号BbL.jpg

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週刊平凡 28年間ありがとう .jpg 「週刊平凡」最終号 昭和62年10月6日発行

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