【2840】 ○ 渡邊 大門 『明智光秀と本能寺の変 (2019/01 ちくま新書) ★★★☆

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史料の読み込みは丁寧。目新しさはイマイチ。最後「突発説」でやや肩透かし感。

明智光秀と本能寺の変 ちくま新書.jpg 明智光秀と本能寺の変 ちくま新書 - コピー.jpg  渡邊大門.jpg 渡邊 大門 氏
明智光秀と本能寺の変 (ちくま新書)

 来年['20年の]のNHKの大河ドラマ「麒麟がくる」が明智光秀(1528-1582)の生涯を描いたものであるとのことで、歴史研究家による本書もそれに合わせての刊行と思われます(この著者は「真田丸」の時も幸村の関係本を出しているが、ほかにもそういう人はいて、それはそれで中身が良ければいいのでは)。

 歴史研究家と言っても全くのアマチュアではなく、大学で専門の研究をし、今は「歴史と文化の研究所」というところの代表取締であるとのことで、本書においても史料の読み込みなどは丁寧だと思いました。ただ、その反面と言うかその分と言うか、目新しさのようなものは乏しかったでしょうか。

 明智光秀が本能寺の変を起こした理由として「足利義昭黒幕説」を唱える藤田達生氏が着眼した、義昭が京都復帰画策の拠点とした「鞆(とも)幕府」について、一章を割いて比較的詳しく書かれていました(第5章)。「幻の幕府」と言われながら(個人的にはそれぐらいのイメージしかこれまで無かった)、実はそこそこの陣容だったのだなあと。著者は、「鞆幕府」は見せかけだけの組織だったが、それなりの存在感があったとしています(ただし、過大評価すべきでもないと)。

 光秀の出自と前半生(第2章)、信長と光秀の周辺状況、両者の関係性の推移(第3章、第4章)、どういう過程を経て出世していったか(第6章)についても、史料を基に詳しく書かれていたように思います。そして終盤では、本能寺の変の「陰謀説」に根拠はあるかを検証していきます(第7章)。

 ただし、その前に、「家康饗応事件」の真偽の話もあり、さらに合間に「愛宕百韻」に関する諸説の紹介(著者は謀反の意を連歌会で堂々披露することは考えられないと)等々もあって、肝心の黒幕説への論駁はさらっと終わってしまった印象も。「朝廷黒幕説」は、そもそも信長と朝廷が対立しているという点から考えて成り立ちにくいとか、比較的オーソドックスな見解でした。

 因みに、谷口克広氏が唱えている信長の「四国政策転換」が謀反の原因となったとの説に対しては、「更迭についても、大きく影響したとは考えられない。また、ライバル秀吉が台頭したことにより、光秀が焦りを感じたというのも、説得力を持たない」としており、また、藤田氏が唱える「足利義昭黒幕説」も、谷口克広氏の反論を引いて、一次史料ではなく二次史料から導き出した論であり、成り立ち難いとしています(他人の論を組み合わせて、全部を否定しているような印象も無きにしも非ず)。

 反駁と査証が交互に出てくるのが、規則性が無くてちょっと読みにくかったかも。それで、著者の最終結論はどうかというと、謀反は突発的に起こったという、所謂「突発説」というものでした。「突発説」そのものは従来から有力説の一つとしてあり(NHK-BSプレミアムの"番宣"的な特番「本能寺の変サミット2020」でも取り上げられていた)、単独説の一種には違いないかもしれませんが、やや肩透かしを喰った印象も。本書でそれまで書かれてきたことの中から、そうした「突発的な行動に出た心情的な背景は十分読み取れる(読み取るべし)」というのが著者のスタンスなのかもしれません。

《読書MEMO》
NHK-BSプレミアム特番「本能寺の変サミット2020」2020年1月1日(水) 午後7:00~午後9:00(120分)
【司会】爆笑問題,【解説】本郷和人,【コメンテーター】細川護煕,【パネリスト】天野忠幸,石川美咲,稲葉継陽,柴裕之,高木叙子,福島克彦,藤田達生
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和田泰明>

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