2019年7月 Archives

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選考委員のメンツが違っていれば、受賞したかどうかわからないものも多いと思った。

芥川賞の偏差値 .jpg小谷野敦.jpg 小谷野 敦 氏(作家・比較文学者)
芥川賞の偏差値』(2017/02 二見書房)

 芥川賞の第1回から本書刊行時の最新回である第156回までの受賞164作を、ランク付けしたものです。著者は、あくまでも主観的判断であることと断っており、「ここで必要なのは「対話的精神」である。自分がよくないと思った作品でも、他人がいいと言ったら、その言に耳を傾ける必要がある」と述べていて、それでいいのではないかと思います。

 これまでこの読書備忘録で取り上げた芥川賞受賞作に対する自分個人の評価と比べてみると、当方の評価(◎及び星5つが最高評価)と、著者のつけた"偏差値"ランクは以下の通りです。(偏差値の平均は50であるはずだが、全164作のうち「偏差値50以上」は41作と全体の4分の1しかないため、「偏差値50以上」ならば相対的にはかなり高く評価されているとみていいのではないか)

1950年代~1970年代
・1951(昭和26)年上半期・第25回 ○ 安部 公房 「」 ★★★★ 偏差値40
・1952(昭和27)年下半期・第28回 ◎ 松本 清張 「或る『小倉日記』伝」 ★★★★★ 偏差値64
・1954(昭和29)年上半期・第31回 ◎ 吉行 淳之介 「驟雨」 ★★★★☆ 偏差値46
・1955(昭和30)年下半期・第35回 ○ 石原 慎太郎 「太陽の季節」 ★★★☆ 偏差値38
・1966(昭和41)年下半期・第56回 ◎ 丸山 健二 「夏の流れ」 ★★★★☆ 偏差値44
・1975(昭和50)年下半期・第74回 ◎ 中上 健次 「」 ★★★★☆ 偏差値58
・1977(昭和52)年上半期・第77回 ○ 三田 誠広 「僕って何」 ★★★☆ 偏差値42
・1977(昭和52)年下半期・第78回 ○ 宮本 輝 「螢川」★★★★ 偏差値58
1990年代~
・1990(平成2)年下半期・第104回 △ 小川 洋子 「妊娠カレンダー」★★★ 偏差値52
・1991(平成3)年上半期・第105回 ○ 辺見 庸 「自動起床装置」 ★★★☆ 偏差値52
・1995(平成7)年下半期・第114回 ○ 又吉 栄喜 「豚の報い」 ★★★☆ 偏差値44
・1996(平成8)年上半期・第115回 ○ 川上 弘美 「蛇を踏む」 ★★★ 偏差値44
・1996(平成8)年下半期・第116回 × 柳 美里 「家族シネマ」 ★★ 偏差値44
・2000(平成12)年上半期・第123回 △ 町田 康 「きれぎれ」 ★★★ 偏差値52
・2001(平成13)年下半期・第126回 ○ 長嶋 有 「猛スピードで母は」 ★★★☆ 偏差値36
・2002(平成14)年上半期・第127回 △ 吉田 修一 「パーク・ライフ」 ★★★ 偏差値36
・2002(平成14)年下半期・第128回 △ 大道 珠貴 「しょっぱいドライブ」 ★★☆ 偏差値36
・2003(平成15)年上半期・第129回 ○ 吉村 萬壱 「ハリガネムシ」 ★★★☆ 偏差値38
・2003(平成15)年下半期・第130回 ○ 綿矢 りさ 「蹴りたい背中」 ★★★☆ 偏差値44
・2003(平成15)年下半期・第130回 △ 金原 ひとみ 「蛇にピアス」 ★★★ 偏差値38
・2004(平成16)年上半期・第131回 △ モブ・ノリオ 「介護入」 ★★★ 偏差値44
・2005(平成17)年上半期・第133回 △ 中村 文則 「土の中の子供」 ★★★ 偏差値36
・2005(平成17)年下半期・第134回 ○ 絲山 秋子 「沖で待つ」 ★★★☆ 偏差値56
・2006(平成18)年下半期・第136回 ○ 青山 七恵 「ひとり日和」 ★★★☆ 偏差値68
・2007(平成19)年上半期・第137回 △ 諏訪 哲史 「アサッテの人」 ★★★ 偏差値44
・2007(平成19)年下半期・第138回 △ 川上 未映子 「乳と卵」 ★★★ 偏差値44
・2009(平成21)年上半期・第141回 △ 磯崎 憲一郎 「終の住処」 ★★★ 偏差値52
・2012(平成24)年上半期・第147回 ○ 鹿島田 真希 「冥土めぐり」 ★★★☆ 偏差値40
・2015(平成27)年上半期・第153回 ○ 又吉 直樹 「火花」 ★★★★ 偏差値49
・2016(平成28)年上半期・第155回 ◎ 村田 沙耶香 「コンビニ人間」 ★★★★☆ 偏差値72
 
芥川賞の偏差値0810.JPG 自分が◎を付けたものを著者がどう評価しているか関心がありましたが、ちょっと昔のものでは、松本清張 「或る『小倉日記』伝」が自分 ★★★★★ に対して偏差値64、中上健次「岬」が自分 ★★★★☆ に対して偏差値58と、著者も高い評価でした。一方で、吉行淳之介の「驟雨」が自分 ★★★★☆ に対して偏差値46、丸山健二「夏の流れ」が自分 ★★★★☆ に対して偏差値偏差値44と、そう高くない評価となっています。読めば著者なりも理由があって、それはそれでいいのでは。ただ、安部公房や吉行淳之介に対する評価は低いなあと(著者は安部公房より大江健三郎派か。第三の新人は庄野潤三を除き、おしなべてあまり評価していないようだ)。最近のものでは、村田沙耶香 「コンビニ人間」が、自分は ★★★★☆でしたが、これは評価が一致したというか、著者は高い評価をしていて、偏差値72と、李良枝「由煕」、高橋揆一郎「伸予」と並んで全作品でトップとなっていました。

文庫新刊 コンビニ人間2.jpg 「コンビニ人間」については、「つまらない小説に授与するのが芥川賞の伝統なのに、選考委員どうしちゃったんだ」とありますが、面白い、面白くないで言えば、近年の芥川賞受賞作には面白い作品が少ないというのは同感です。受賞した人が本当に才能があるのかよく分からないものも多いし、その後に受賞作以上によく読まれる作品を世に送り出している作家も多くいますが、選考委員がその隠れた才能を見抜いたのかもしれないし、一方で、「受賞したという自覚が作家を育てた」という面もあったのではないかとも思います。

 いつも思うのですが、選考委員のメンツが違っていれば、受賞したかどうかわからないということは多くの受賞作に言えるのではないかと思います(だから受賞するには「運」も要る)。一部ですが、選考委員の中で誰が推して誰が推さなかったかまで書いてあり、改めてそのことを思いました。著者の場合、それだけでなく、選考結果や選考委員個々に対する批評も一部織り込まれていて、それがなかなか面白かったりしました。結局、本書の狙いは、個々の作品批評と言うより、福田和也氏の『作家の値うち』('00年/飛鳥新社)を批判(ライバル視?)しているように作家批評であり(受賞後の作家活動にも言及している)、さらには"文壇"的なものに対する批評でもあるのだろうなあと思いました。

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そこそこ面白く読め、作品を読む際の"参考情報"となる話もあった。

文豪の女遍歴 (幻冬舎新書).jpg 文豪の女遍歴 (幻冬舎新書)帯.jpg

 幕末生まれの夏目漱石、森鷗外、坪内逍遥から1930年代生まれの江藤淳、生島治郎、池田満寿夫4まで、総勢62名の作家、文学者の異性関係を検証したものです。もちろん、著者の私見・偏見も入っているとは思いますが...。

 著者は、「覗き見趣味だと言われようと、文学者の異性関係を知るのは楽しい。彼らが当時の姦通罪に怯え、世間の猛バッシングに耐えながらも不義を重ねたり、人間の痴愚や欲望丸出しで恋愛し、破滅と蘇生を繰り返し、それを作品にまで昇華させるタフさに畏怖すら覚える。小説はモデルなど詮索せず、文章だけを虚心坦懐に読めと言う人もいるけれど、そんなつまらない味わい方はしたくない」という立場のようです。

 これに対して、Amazon.comのレビューなどを見るとやっぱり予想通り、「週刊誌的な下ネタ風の覗き見趣味の本」「正しく調べられているとは信じがたい」などの批判もあって、それでいて他方で、「下世話な欲望、葛藤があってこその、人間、人生、作家だ」「下司でヨロシイ(笑)」などというのもあって、評価が二分していて、真ん中の星3つをつけているレビュアーがいませんでした。

 個人的には、今まで読んだ著者の本の中では面白い方でした。折口信夫や菊池寛が同性愛者だったとか、倉田百三が17歳少女に「聖所」の毛をひとつまみ送れと手紙に書いたとか、野間宏が担当女性編集者と強引に性交に及ぼうとして果たせなかったとか、近いところでは、安部公房が教えていた短大の学生が山口果林だったとか(「砂の女」という作品は結婚のメタファーらしい)、池田満寿夫と佐藤陽子のそれぞれの一緒になる前の夫婦関係とか、まあ、文壇ゴシップと言えばその通りですが、自分が基本的にゴシップ好きなのかも。

 芥川龍之介、永井荷風、太宰治、吉行淳之介など、作品に馴染みのある作家は、その異性経験と作品の関連が解って面白く読めましたが、その面白かった筆頭が谷崎純一郎と川端康成でした。

谷崎潤一郎.jpg 谷崎は妻の妹で14歳の少女と性交渉してしまい、これが『痴人の愛』のナオミのモデルであるとのこと。同様に『蓼喰う虫』も『細雪』も後年の『瘋癲老人日記』もどれも実体験ベースみたいです。『瘋癲老人日記』に書かれた、女の足で自分の頭を踏んでもらうという痴戯は、谷崎が60歳を過ぎて可愛がっていた女性に実際してもらっていたとのことですが、別のところで、それを見たという編集者か誰かの証言として読んだことがあります。

川端康成2.jpg 川端康成も(彼も中学時代は同性愛者だったとのこと)、『伊豆の踊子』が一高時代に伊豆へ旅した際に旅芸人一座に同行した体験がベースになっていることはよく知られていますが、『山の音』や『雪国』なども女性モデルがいたようです。本書に、浅草のカジノ・フォーリーから踊子を引き抜いたとありますが、本書には書かれいていないものの、これなどは『浅草紅団』の弓子のモデルでしょう。

 著者が言うように、小説は作者の実体験でありモデルがいると思って読むと面白く読めるという面があるように思います。それにしても、出てくる人、出てくる人の多くが不倫や二股恋愛をしていて、作家って女遍歴が派手と言うか、乱脈とも言える人が多いなあと思いました(何も無かったのは最初の夏目漱石ぐらいか)。本書がそうした作家ばかり取り上げているというのもあるかと思いますが、実体験が作品に反映されているケースも多く、当然のことながら実体験が先でしょうが、小説の素材づくりのために経験を積んでいるのかとさえ思えてしまうほどです(でも、単なる"浮気"とかではなくて"本気"になってしまったものが結構多い)。

 著者があとがきで書いていますが、今は親がいつまでも生きていて、介護が必要になったりすると、頼みの綱は妻であり、昔は姉や妹がいたが今は子供が少なく、浮気は若いころか、親きょうだいが元気でいてこその話になったと―。このあとがきにもAmazon.comのレビューで批判がありましたが(確かにジェンダー差別と捉えられかねない)、昔の方が道徳的制約は強かったと思われる反面、意外と昔の方が、例えば金持ちが妾を囲うようなことも普通にあっただろうし、簡単に浮気できたという面もあったのかもしれないと思ったりもしました。

 大勢取り上げている分、一人一人の掘り下げが浅い感じもするし、事実がそのまま作品になったとしたのでは作品が徒に陳腐化することになるし、いろいろ突っ込みどころは多いかと思います。ただ、作品を読む際の"参考情報"としては知っておいてもいい話もあったかなと。それ以前に、読み物としてそこそこ面白く読めてしまいましたが(ゴシップ好きなので)。

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ものすごくマニアックというほどでもなく、気軽に愉しめる1冊。

カルト映画館 SF.jpgカルト映画館 ホラー.jpg  ローラーボール [DVD].jpg ローラーボール 映画0.jpg
カルト映画館 SF (現代教養文庫)』『カルト映画館 ホラー (現代教養文庫)』(共に表紙イラスト:永野寿彦(シネマ・イラストライター))「ローラーボール [DVD]」ジェームズ・カーン

 『カルト映画館 ホラー』('95年/教養文庫)の4名の執筆者に永野寿彦氏を新たに加えた執筆陣が、SF映画100作品を、「名作SF館」「シリーズSF館」「日本SF館」の3篇に分けて紹介したものです。「名作SF館」は、さらに、➀1900~1950年代、②1960年代、③1970年~1990年代に分かれ、「日本SF館」はさらに➀1950年代、②1960年から1996年に分かれています。

キング・コング 02.jpgキング・コング 1933 dvd.jpg 「名作SF館」の➀1900~1950年代では、やはり「キング・コング」('33年)は外せないところでしょう。本書によれば、コングは、上半身だけの巨大なメカニカル操作の物と、ウィリス・H・オブライエンの人形アニメによって創造されているとのこと。人形アニメのキャラが主役で登場した最初で最後の映画であるとのことで、そう言われてもちょっとぴんとこない面もありますが、要するにあのコマ撮りが「人形アニメ」ということになるのだろうなあと。

宇宙水爆戦1.jpg宇宙水爆戦 dvd.jpg 「宇宙水爆戦」('55年)は、ストーリーにあまり関係ないところで登場するミュータントがいなければ、さほど印象には残らなかったであろうとしていますが、確かに。これに対し、「禁断の惑星」('56年)は、「全編が見どころ。50年代に製作されたSF映画の最高傑作であり、今もって映画史に残る至宝として知られる」としています。「裸の銃を持つ男」シリーズで知られるレスリー・ニールセンが正当な二枚目俳優として出演していること、シェイクスピアの「テンペスト」をSFに翻案したものであることなどに触れているのが嬉しいです。

2001 space odyssey22.jpg2001年宇宙の旅2.jpg ②1960年代には、60年代がSF映画の黄金時代であったことを物語るかのように、「博士の異常な愛情」('64年)や「2001年宇宙の旅」('68年)などの名作があり、それが、③1970年~1990年代で、まず70年代の前半、世界の破滅を描いた映画が出回り、70年後半にはスペースオペラが復権、80年代のSFX映画時代の到来、90年代のSF映画不毛の時代を経て今('96年)に至っているとのことです。

惑星ソラリスSOLARIS 1972.jpg惑星ソラリス dvd.jpg そう言えば、ハリウッド映画に限らず、アンドレ・タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」('73年)や「ストーカー」('80年)なども、どこかディストピア的な雰囲気があったかも。ただし、「惑星ソラリス」については、従来のSF作品では取り上げられなかった哲学の世界にまで昇華し、「2001年宇宙の旅」と並び称される傑作としています。

「ローラーボール」('76年)映画.jpg アメリカ映画では、B級映画と言えばB級映画ですが、ノーマン・ジュイソン監督作でジェームズ・カーン主演の「ローラーボール」('76年)を取り上げているのが懐かしいです。これもある意味ディストピア映画で、優れたSF・ファンタジー・ホラー映画に与えられる「サターン賞」の、創設間もない'75年度第3回のサターンSF映画賞、サターン主演男優賞を受賞しています。想定されている年代は2018年です。ジェームズ・カーンの役どころは、古代ローマの見世物としての闘技会のグラディエーターの未来版といったところでしょうか。デスマッチ式のローラーボール・ゲームを戦うのは、ニューヨーク・チームvs.東京チームで、そう言えば70年代に「ローラーゲーム」というスポーツがあり、「東京ボンバーズ」というチームがあったなあ(この作品は2002年、「ダイ・ハード」のジョン・マクティアナン監督によりリメイクされたが、リメイク版は製作費7,000万ドルに対し興行収入2,585万ドルと振るわず、2009年にハリウッド・レポーター誌が発表した過去10年間に全米公開され、大コケした失敗作の8位にランクインした)。

カプリコン1.jpgCapricorn 1.jpg エリオット・グールド主演の「カプリコン・1」('77年)は、アメリカ政府が人類初の有人火星着陸の試みが失敗したのを隠蔽し、"成功"を偽装するという内容で、現実性はともかく、著者が言うように、権力に追い詰められる者の恐怖はよく描けていたかも。何事にも疑いの目を向けよという批判精神が評価された作品ではないかと思います。

Close Encounters of the Third Kind (1977).jpg未知との遭遇-特別編.jpg 本書によれば、「カプリコン・1」と同年公開の「未知との遭遇」('77年)にも、「実はアメリカ政府が人類支配をもくろむエイリアンと既に契約を取り交わしていて、その事実を隠蔽するために宇宙人は平和の使者であるというイメージを大衆に与えようと本作が作られた...」という説があったとのことです。主人公がいかにも"純粋無垢"そうな宇宙人たちに宇宙船内に招き入れられる〈特別編〉まで作られ公開されていることから、そのような説が出てきたりするのではないでしょうか。

ブレードランナー.jpg『ブレードランナー』4.jpgブレードランナー パンフ.jpg 「ブレードランナー」('82年)は一時代を画したといってもいい傑作。「ルトガー・ハウガーがレプリカントを圧倒的な存在感で演じ切っている」とする著者に同感ですが、著者によれば、ルトガー・ハウガーはその後どルトガー・ハウアー.jpgんな映画にも出過ぎて、映画ファンには"どうも仕事を選ばないおじさん"という印象があるそうな。いずれにせよ、この「ブレードランナー」という作品は、公開前及び公開直後はそれほど話題にもなっておらず、時を経て評価が高まった作品で、同年の第7回「サターンSF映画賞」も、候補にはなったものの「E.T.」('82年)に持っていかれています。(件のルトガー・ハウガーは、この文章をアップした18日後の 2019年7月19日に出身地のオランダにて75歳で亡くなった。)

WarGames.jpgウォー・ゲーム.jpg 「ウォー・ゲーム」('83年)は、パソコン好きの高校生が遊び心から侵入したコンピュータで戦争ゲームをやっていたのが、実はそれは軍の核戦略プログラムで、現実に第三次世界大戦勃発の危機を招いてしまうというもの。"人間が作り出した機械によって起こりうる危機"を上手く描き出していました。こうしたモチーフは「ダイハード4.0(フォー)」('07年)などに継承されていることを考えると、結構先駆的な作品だったかも。

トータル・リコール 1.jpgトータル・リコール dvd.jpg 「トータル・リコール」('90年)も「ブレードランナー」と同じくフィリップ・K・ディック原作(短編SF小説「記憶売ります」)とのことで、まずまず面白かったのでは。原作にはない火星のシーンを映像化できたのも、その頃急速に進化していたCG技術のお陰でしょうか。
   
 以上が「名作SF館」で、「シリーズSF館」では、「物体X」シリーズから「ロボコップ」シリーズまで13のSFシリーズが取り上げられ、「日本SF館」では、「ゴジラ」('54年)から始まって18作品が紹介されています。その中では、永野寿彦氏が「モスラ」('61年)を高く評価しているのが印象に残りました。

 こちらも、『カルト映画館 ホラー』同様、ものすごくマニアックというほどでもなく、馴染みのある作品が多くて、気軽に愉しめる1冊でした。

ローラーボール (特別編) [DVD]
ローラーボール (特別編).jpgローラーボール 映画1.jpg「ローラーボール」●原題:ROLLERBALL●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督・製作:ノーマン・ジュイソン●脚本:ウィリアム・ハリソン●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:アンドレ・プレヴィン●原作:ウィリアム・ハリソン●時間:125分●出演:ジェームズ・カーン/ジョン・ハウスマン/モード・アダムス/ジョン・ベック/モーゼス・ガン/パメラ・ヘンズリー/シェーン・リマー/バート・クウォーク/ロバート・イトー/ラルフ・リチャードソン●日本公開:1975/07●配給:ユナイテッド・アーテ池袋テアトルダイア s.jpg池袋テアトルダイア  .jpgテアトルダイア5.jpgィスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(78-01-21)(評価:★★★☆)●併映:「新・猿の惑星」(ドン・テイラー)/「ジェット・ローラーコースター」(ジェームズ・ゴールドストーン)/「世界が燃えつきる日」(ジャック・スマイト)(オールナイト)
池袋テアトルダイア  1956(昭和31)年12月26日池袋東口60階通り「池袋ビル」地下にオープン(地上は「テアトル池袋」)、1981(昭和56)年2月29日閉館、1982(昭和57)年12月テアトル池袋跡地「池袋テアトルホテル」地下に再オープン、2009年8月~2スクリーン。2011(平成23)年5月29日閉館。

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比較的オーソドックスなラインアップ。いろいろ思い出させてくれた。

カルト映画館 ホラー0.jpgカルト映画館 ホラー.jpg  ザ・チャイルド 30周年特別版.jpg ザ・チャイルド3.jpg
カルト映画館 ホラー (現代教養文庫)』(表紙イラスト:永野寿彦(シネマ・イラストライター))「ザ・チャイルド 30周年特別版 [DVD]

 4名の執筆者が、ホラー映画100作品を、「名作ホラーの館」「ホラーカルトの館」「ホラー監督の館」「日本怪奇館」の4篇に分けて紹介したものです。

 「名作ホラーの館」は、共著者全員で作品を分担して紹介しているためか、それほどマニアックでもなく、比較的オーソドックスなラインアップだったように思います。

BRIDE OF FRANKENSTEIN2.jpgフランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg 「フランケンシュタインの花嫁」('35年)が、本編「フランケンシュタイン」('31年)と比べ、「どこをとっても第1作目をしのいでいる」というのがよく理解できる解説になっていました。個人的にも、80年代に渋谷の旧ユーロ・スペースで予備知識なしに2本続けて観て、「花嫁」の方が上だと感じました。

サイコ1.jpgPsycho.jpg 「サイコ」('60年)は、あの和田誠氏が『お楽しみはこれからだ Part3』('80年/文藝春秋)で是非見てみたいと言っていた劇場予告編のことが書いてあります(ヒッチコックが登場して映画に登場するモーテルで現場検証よろしく、事件を説明するというもの)。今はネットで見ることができます。

「世にも怪奇な物語」2.jpg世にも怪奇な物語 dvd.jpg 「世にも怪奇な物語」('67年)は、エドガー・アラン・ポーの怪奇小説3作をロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3監督が共作したオムニバス映画で、これも和田誠氏が『お楽しみはこれからだ』('75年/文藝春秋)の中で、ロジェ・ヴァディムのパートは「耽美主義的映像が逆に小細工のようでいけなかった」とし、「通俗的にはルイ・マルが面白く、怖さや不思議さではフェリーニが圧巻」としています。ただし、本書は映画の批評と言うより紹介が主であるため、「三人の名匠が個性派俳優たちを使って絶妙な味付けを施した」と同等に評価しています。

ローズマリーの赤ちゃん』(1968).jpgローズマリーの赤ちゃん.jpg 「ローズマリーの赤ちゃん」('68年)は、"悪魔"の存在がローズマリーの被害妄想かと思ったら実は本当に悪魔が存在していたというのが怖いとしていますが、著者が「"オカルト映画"にふさわしい秀逸な悪夢にイメージとして特筆される」としている、ローズマリーがすべてを受け入れ、至福の表情でわが子を抱いて子守歌を口ずさむラストの方が、ある意味それ以上に怖かったかも。

The Shining.bmp「シャイニング」 (1980) 英.jpg 「シャイニング」('80年)は、スタンリー・キューブリックが作品に織り込んだ"狂気"を見事に表現したのがジャック・ニコルソンで、それによって、スティーヴン・キング原作の映画化の中でも、一,二を争う出来になっているというのは同感です(ただし、当のスティーヴン・キングはこの映画化作品を気に入ってなかった)。

ハンガー パンフ.jpg 「ハンガー」('83年)は、デヴィッド・ボウイが吸血鬼役に挑んだ映画でしたが、著者が言うように、あくまでも主役は女吸血鬼を演じたカトリーヌ・ドヌーブでした。仏映画調のようなフィルム・ノワール調で描かれ、「これがMGM映画なの?」と思わずにはいられないとしていますが、カトリーヌ・ドヌーブが"仕切った"いうことも関係しているのではないでしょうか。

フランケンシュタイン (1994年) dvd.jpg 「フランケンシュタイン」('94年)は、ケネス・プラマー監督がロバート・デ・ニーロと組んだ作品ですが、「フランケンシュタインの"花嫁"となったジェームズ・アイヴォリー作品の乙女、ヘレナ・ボナム・カーターの怪奇女優ぶり」を思い出させてくれました。「眺めのいい部屋」('86年)のお嬢様役からの180度イメチェンは、「ハリー・ポッター」シリーズの魔女役よりずっと前から始まっていたわけか。

 「ホラーカルトの館」は、「鷲巣義明プレゼンツ」とあるように、個人のセレクションであるため、その分マニアック度が上がっているように思いました。

 「ロサンゼルス」('81年)のマイケル・ウィナーが監督した、教会と悪魔を対等に描いたためタブー映画とされている「センチネル」('77年)や(個人的には未見)、ナルシソ・イバネ・セッラドール監督の子供たちが大人たちを襲うというスペインのホラー映画「ザ・チャイルド」('76年)などは、本書にあるように当時はビデオ化されませんでした。「センチネル」にはフリークス(言わば身体障碍者)を悪魔視する描かれ方があり、「日本でのビデオ化はまず不可能」としています。また、「ザ・チャイルド」には、子供が胎児を操って胎内から母親を攻撃、ショック死させる場面があったりします。ところが「ザ・チャイルド」はその後ビデオ化されて2001年にはDVDにもなり、「センチネル」も2009年にDVD化されました。

映画 ザ・チャイルド.jpg とりわけ、「ザ・チャイルド」は、著者が「劇場公開時に観て、本作の素晴らしさに舌を巻いた」と言うように、初めてこの作品を観たホラー映画ファンの間である種ブームとなり、2008年には、「30周年特別版DVD」が発売されたほどです。個人的には、初めて観たときは「大人を襲っている子供たちもやがて大人になるのになあ」とか「子供と大人の中間にいる人はどうすればいいの?」とか引っ掛かりがありましたが、観たのが学生の時だったというのもあるし、或いは、"怖さ"に飲み込まれないよう、わざと白けたことを考えるようにしていたのかもしれんません(基本的に怖がりなので)。

ザ・チャイルド (1976年の映画).jpg「ザ・チャイルド」●原題:WHO CAN KILL A CHILD?//ISLAND OF THE DAMNED●制作年:1976年●制作国:スペイン●監督:ナルシソ・イバニェス・セラドール●製作:マヌエル・ペレス●脚本:ルイス・ペニャフィエル●撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ●音楽:ワルド・デ・ロス・リオス●原作:ファン・ホセ・プランス●時間:107分●出演:ルイス・フィアンダー/プルネラ・ランサム/アントニオ・イランソ/ルイス・シヘス●日本公開:1977/05●配給:ジョイパックフィルム●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-12-12)(評価:★★★☆)●併映:「小さな悪の華」(ジョエル・セリア)

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