2019年5月 Archives

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○レトロゲーム(レミングス(SFC))

げっ歯目って多いなあ。"生態"について詳しく書かれている。レミングは"集団自殺"しない!
小型草食獣 (動物大百科5).jpg小型草食獣 (動物大百科5.jpg  レミングス.jpg
小型草食獣 (動物大百科)』['86年/平凡社]「レミングス - PSP

小型草食獣 (動物大百科5_2.jpg シリーズ全20巻(+別巻)の第5巻で、リス・ネズミ・ビーバー・ヤマアラシ・ウサギなど小型草食獣を扱っています(中でも、リスからヤマアラシまでげっ歯目が種類がダントツに多い)。このシリーズ、表紙は「図鑑」っぽいですが、中身は写真もさることながら、解説が本格的であり、まさに「大百科」という感じです。とりわけ、その動物の"生態"について詳しく書かれており、Amazonのカスタマーレビューにも、「生息地や行動原理、性生活など、なかなか詳しく載っています。写真や絵も素晴らしいです」とありました。

 動物の "生態"となるとどうしても、最近ではテレビの動物ドキュメンタリー番組などが、撮影技術の進化等により、圧倒的な訴求力を持っているように思われますが、たまにこうした、少し昔には主流であった、文章で書かれたものに触れてみるのも良いかと思いました。Amazonの別のカスタマーレビューにも、「ネット情報も良いけれど、やはりアナログ情報も不可欠だと実感する一冊です」とありましたが、同感です。

 一例として、ネズミ型げっ歯類に属するレミングについて、「レミングレミング_3649.JPGの集団移住―ノルウェーレミングの生活史におけるその意義」とあり、ちょっとした小論文という感じです。スカンジナビアの伝説にレミングが集団自殺に向けて行進をするというのがあり、実際、集団移動して多くが溺死するといったことがあるそうです(写真が出ている)。しかし、それは事故のようなもので(レミングは本来は泳ぎが上手く、集団移動の際に川を渡ることはよくある)、集団移動自体は、個体数の増加のピークの年に、個体間の攻撃的関係が多くなることが引き金になって起きている可能性があり(つまり、互いの無駄な争いを避けるための移動で、移動するのは大型の個体に追い払われた若い個体たち)、長距離移動は生き残ろうとする願望であるように(著者には)思われ、「移動が集団自殺で終わるのはナンセンスである」としています。

白い荒野.jpg 同じようにWikipediaにも、レミングは、かなり長い間「集団自殺をする」と考えられていて、スカンディナビアでは「集団で海に飛び込む」という伝説が古くからあるとあり、ただし、「集団移住を行っている際に一部の個体が海に落ちて溺れ死ぬことはあるが、これは自殺ではなく事故」であるとなっていました(Wikipediaでは、集団移動をする理由はよくわかっていないとしている)。個人的にも何となく"集団自殺"のイメージがあったし(昔、ディズニーのドキュメンタリー映画「白い荒野」('58年/米)でレミングが崖から落ちるシーンがあったが、実は人間がレミングの群れを崖に追いやって落とした"やらせ"だったようだ)、またWikipediaによれば、1991年のパズルゲーム「レミングス」のヒットも誤解の一因だと言われているそうです。
「白い荒野」('58年/米)の1シーン

レミングス SFC 1991.jpgレミングス SFC 1991 p.jpg 「レミングス」というゲームは、天井にある蓋からレミングス(レミング達)が次々と落ちてきて歩き出し、プレーヤーが何もしないでいるとただひたすら行進を続けて崖から落ちて死んだりしてしまうため、プレーヤーが色々な指令を与えて、出口へと導いていくというもので、分類的としてはパズルゲームですが、結構"反射神経"的なものが求められる、パズルゲームの中では「アクション・パズル」と呼ばれるものでした(本書を読んだついでに思い出して、懐かしくなってしまった)。でも、このゲームがレミング集団自殺説という誤解を増長させていたとはねえ。

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100冊の概要にとどまらず、100人の作家の概要がコンパクトに収められている。

海外ミステリーマストリード100.jpg海外ミステリー マストリード100 .jpg 杉江 松恋.jpg 杉江 松恋 氏
読み出したら止まらない! 海外ミステリー マストリード100 (日経文芸文庫)』['13年]

 書評家である著者個人が選んだ海外ミステリーの必読書100選のガイドブック。第1部「マストリード100」では、1929年のアントニイ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』から、2010年のデイヴィッド・ゴードンの『二流小説家』まで、1作家1作に限定して100作品が「原著刊行順」に並んでいて、1つの作品の紹介が3ページほどですが、その中に「あらすじ」「鑑賞術」「さらに興味を持った読者へ」「訳者、そのた情報」とコンパクトに収められています。

 その作家の代表作もさることながら、その作家のどの作品から読み始めればいいかという観点が織り込まれた選本になっていて、さらに、次にその作家のどの作品に読み進めばいいのか(或いは、他の作家の作品で似たジャンルやモチーフの作品にどのようなものがあるか)といった読書案内的な構成になっています。あくまでも著者個人が考えるベスト100であるとのことですが、ざっと見てみると―。

ガラスの鍵 光文社古典新訳文庫.jpgマルタの鷹〔改訳決定版〕.jpgxの悲劇 角川文庫.jpg ダシール・ハメットについては『ガラスの鍵』(1931)を取り上げ、『赤い収穫』(1929)、『マルタの鷹』(1930)は「さらに興味を持った読者へ」の方で紹介し、エラリイ・クイーンについては、『シャム双生児の秘密』(1933)を取り上げ、『Ⅹの悲劇』(1932)などは同じく後段での「さらに興味を持った読者へ」の方での紹介に回しています。
   
ポワロのクリスマス book - コピー.jpg名探偵ポワロ/ポワロのクリスマスL.jpg大いなる眠り.jpg アガサ・クリスティーについて『ポアロのクリスマス』(1938)を選んでいるのは結構ユニークにも思えますが(個人的にはデビッド・スーシェのテレビドラマ「名探偵ポワロ」で観た)、選んだ理由を読むと納得。レイモンド・チャンドラーについては第1作の『大いなる眠り』(1938)ではなく、第2作の『さらば愛しき女よ』(1940)を選んでいます。
    
太陽がいっぱい.jpg死刑台のエレベーター000.jpg パトリシア・ハイスミスの『太陽がいっぱい』(1955)、ノエル・カレフの『死刑台のエレベーター』(1956)は共に映画化作品が超有名ですが、映画と原作の違いをわかりやすく解説しています(特に『死刑台のエレベーター』は、映画版と原作は、物語の性質がまったく違う別の作品と言っていいとしている)。

ナヴァロンの要塞 カラージャケット.jpgThe Wycherly Woman.bmpウィチャリー家の女.jpg アリステア・マクリーンの『ナヴァロンの要塞』(1957)は、冒険小説によくある「~せよ」というタイトルの使命遂行型作品の元祖であるとのこと(なるほどね。そうしたタイトルになっていないので今まで意識しなかった)。これも順当ならば、ロス・マクドナルドについて、『ウィチャリー家の女』(1961)がきているのも順当ではないでしょうか。
    
深夜プラス1ミステリ文庫1.jpgジャッカルの日 (1973年) .jpg ギャビン・ライアルの『深夜プラス1』(1965)然りです。これもまあ、ギャビン・ライアル作品の中では断トツに有名な作品なので異論のないところではないでしょうか。それが、フレデリック・フォーサイスとなると、『ジャッカルの日』(1971)を選んでいますが、ほかにも同じく映画化された超有名作で『オデッサ・ファイル』(1972)や『戦争の犬たち』(1974)などがあります。ただ、1つ選ぶとなるとやはり『ジャッカルの日』でしょうか。
       
百万ドルをとり返せ!.jpgケインとアベル 上.jpgケインとアベル下.jpgシャイニング(上).gif ジェフリー・アーチャーには、著者もその代表作としている『ケインとアベル』(1981年)などの大河小説がありますが、最初に読むのならばやはり『百万ドルをとり返せ!』(1976)がお薦めということになるのでしょう。スティーヴン・キングも、ありすぎるぐらい沢山ありますが、1冊となると『シャイニング』(1977年)になるのだろうなあ。

針の眼.jpg推定無罪下.jpg推定無罪 上.jpg ケン・フォレットも『大聖堂』(1989)などの大河小説がありますが、1冊となると『針の眼』(1978)で決まりでしょう。戦争冒険小説ですが、人間ドラマをかませたところに読みどころがあるとの著者の意見に納得。スコット・トゥローの『推定無罪』(1987)も順当かと思いますが、100選に同じく弁護士出身の作家ジョン・グリシャムの作品を入れないで、このスコット・トゥローを入れているところは著者のこだわり?

検屍官.jpg極大射程 新潮文庫 下.jpg パトリシア・コーンウェルの『検屍官』(1990)が、CBSで2000年に放送が始まった「CSI:科学捜査班」に影響を与えたという著者の見方には同意見です。でも、ケイ・スカーペッタ シリーズって映画化されていないなあ。スティーヴン・ハンターの『極大射程』(1993)は、主役が当初予定されていたキアヌ・リーブスからマーク・ウォールバーグに代わりはしたものの、しっかり映画化されています。
     
ボビーZの気怠く優雅な人生.jpgボーン・コレクター 単行本.jpg ドン・ウィンズロウは『ボビーZの気怠く優雅な人生』(1997)を持ってきたかあ。ただし、デビュー作『ストリート・キッズ』(1991)から始まる"ニール・ケアリー"シリーズ全5作も、ぜひ第1作から読んでもらいたいとしています(個人的№1は、本書でも紹介されている「翻訳ミステリー大賞」受賞作の『犬の力』(2005)だが)。ジェフリー・ディーヴァーは『ボーン・コレクター』(1997)を持ってきています。これは、主人公の犯罪学者リンカーン・ライムが四肢麻痺の、言わば"安楽椅子探偵"であることの経緯と状況を理解するうえでも、第1作からということになるのでしょう。

女彫刻家 ミネット ウォルターズ 文庫.jpgダ・ヴィンチ・コード 上.jpg ミネット・ウォルターズはエドガー賞の『女彫刻家』(1993)ではなく、犯人当てに特化したという意味で入りやすい構造を持つ作品として『破壊者』(1988)を挙げています。ダン・ブラウンも、世界的な大ベストセラーとなった第4作『ダ・ヴィンチ・コード』(2003)ではなく、ロバート・ラングドン教授が初登場した第2作『天使と悪魔』(2000)を挙げていて、これも『ボーン・コレクター』同様、探偵役の主人公の特性(教授の専門は宗教象徴学)を理解したうえで読み進んだ方が読み進みやすいだろうとの配慮かと思われます。

 基本的には1929年から2010年に発表され、2013年までに訳出されて現在も読める本から選んでいますが(第1部)、巻末の第2部では、アラン・ポー、コナン・ドイル、G・K・チェスタトン、モーリス・ルブランなど、それ以前の古典的探偵小説に触れるとともに、今は絶版になってしまって古本屋で探すなどしないと読めなくなってしまったハード」ボイルドの名作なども紹介しています。

 作品解説と同時に作家解説になっていて、100冊の概要にとどまらず、100人の作家の概要がわかるという意味では、文庫書下ろしながら、充実した内容だと思います。その分1作当たりの内容の紹介がやや物足りないと言えなくもないですが、ミステリなので、あまり事前に細かく内容を知ってしまってもいうのもあるし、これはこれでいいのかも―ということでお薦めです。

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「150本すべてみなさい!」はあながち大袈裟なことを言っているわけではないと。

世界と日本のアニメーションベスト150.jpg ユーリ・ノルシュテイン作品集.jpg くもとちゅうりっぷ 政岡憲三作品集.jpg 権藤 俊司.jpg 権藤 俊司 氏(アニメーション研究家・評論家)
ユーリ・ノルシュテイン作品集 [DVD]」「くもとちゅうりっぷ 政岡憲三作品集 【DVD】
世界と日本のアニメーションベスト150

 2003年刊行の本書は、「時代・ジャンル・国内外問わず、劇場用長・短編、TV、あるいはCM、MC(ミュージッククリップ)も問わず、アニメーションであれば可」という規定で、ベストだと思うアニメーション作品を20本挙げてもらうアンケートを、アニメーション監督を中心に現場で働くスタッフに向けて行い(評論家などアニメ業界関係者も若干名含む)、138名から得られた回答を取りまとめ、得点ランキング化したものです。内、50位までの結果は以下の通り。

順位   作品名 / 制作国 / 監督 / 制作年
霧の中のハリネズミ 12.jpg1   霧につつまれたハリネズミ / 露 / ユーリ・ノルシュテイン / 1975
2   話の話 / 露 / ユーリ・ノルシュテイン / 1979
「ファンタジア」ド2.jpg3   ファンタジア / 米 / ベン・シャープスティーン / 1940
4   木を植えた男 / カナダ / フレデリック・バック / 1987
5   やぶにらみの暴君 / 仏 / ポール・グリモー / 1952
6   未来少年コナン / 日本 / 宮崎駿 / 1978
となりのトトロ dvdes3.jpg7   となりのトトロ / 日本 / 宮崎駿 / 1988
白雪姫 1937 22.jpg8   白雪姫 / 米 / デヴィッド・ハンド / 1937
イエロー・サブマリン dvd2.jpg9   イエロー・サブマリン / 英 / ジョージ・ダニング / 1968
わんぱく王子の大蛇退治 300.jpg10   わんぱく王子の大蛇退治 / 日本 / 芹川有吾 / 1963
11   太陽の王子 ホルスの大冒険 / 日本 / 高畑勲 / 1968
12   クラック! / カナダ / フレデリック・バック / 1981
13   バッタ君町に行く / 米 / デイブ・フライシャー / 1941
14   ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ! / 英 / ニック・パーク / 1993
15   くもとちゅうりっぷ / 日本 / 政岡憲三 / 1943
風の谷のナウシカ11.jpeg16   風の谷のナウシカ / 日本 / 宮崎駿 / 1984
雪の女王22.jpg17   雪の女王 / 露 / レフ・アタマノフ / 1957
18   線と色の即興詩 / カナダ / ノーマン・マクラレン / 1955
19   天空の城ラピュタ / 日本 / 宮崎駿 / 1985
ルパン三世 カリオストロの城122.jpg20   ルパン三世 カリオストロの城 / 日本 / 宮崎駿 / 1979
21   対話の可能性 / チェコ / ヤン・シュヴァンクマイエル / 1982
22   手 / チェコ / イジー・トルンカ / 1965
23   真夏の夜の夢 / チェコ / イジー・トルンカ / 1959
24   禿山の一夜 / 仏 / アレクサンドル・アレクセイエフ / 1933
25   道成寺 / 日本 / 川本喜八郎 / 1976
26   ナイトメアー・ビフォア・クリスマス / 米 / ティム・バートン / 1993
27   ファンタスティック・プラネット / 仏 / ルネ・ラルー / 1973
28   おこんじょうるり / 日本 / 岡本忠成 / 1982
千と千尋の神隠し 011.jpg29   千と千尋の神隠し (通常版) / 日本 / 宮崎駿 / 2001
30   AKIRA / 日本 / 大友克洋 / 1988
31   ガンバの冒険 / 日本 / 出崎統 / 1975
32   トムとジェリー / 米 / ウィリアム・ハンナ/ジョセフ・バーベラ / 1940~67
鉄腕アトム 1963 4.jpg33   鉄腕アトム / 日本 / 手塚治虫 / 1963~66
34   岸辺のふたり / オランダ / マイケル・デュドック・デ・ヴィット / 2000
35   ピノキオ / 米 / シャープスティーン&ラスク / 1940
機動戦士ガンダム dvd2.jpg36   機動戦士ガンダム / 日本 / 富野善幸 / 1979~80
37   バンビ / 米 / デヴィッド・ハンド / 1942
38   ストリート・オブ・クロコダイル / 英 / ブラザーズ・クエイ / 1986
hotarunohaka5.jpg39   火垂るの墓 / 日本 / 高畑勲 / 1988
40   ベティ・ブープ / 米 / デイブ・フライシャー / 1930~
41   アイアン・ジャイアント / 米 / ブラッド・バード / 1999
42   チェブラーシカ / 露 / ロマン・カチャーノフ / 1969~74
43   バヤヤ / チェコ / イジー・トルンカ / 1950
44   砂の城 / カナダ / コ・ホードマン / 1977
トイ・ストーリー19.jpg45   トイ・ストーリー / 米 / ジョン・ラセター / 1995
46   シリー・シンフォニー / 米 / ウィルフレッド・ジャクソン / 1937
アニメーション「The Old Man and the Sea(老人と海)」 1999.jpg47   老人と海 / 露 / アレクサンドル・ペドロフ / 1999
新世紀エヴァンゲリオン11.jpg48   新世紀エヴァンゲリオン / 日本 / 庵野秀明 / 1995~96
49   ストリート / カナダ / キャロライン・リーフ / 1976
50   スノーマン / 英 / ダイアン・ジャクソン / 1982
     

カレル・ゼーマン「水玉の幻想」/アレクサンドル・アレクセイエフ「鼻」/山村浩二「頭山」
カレル・ゼマン 水玉の幻想 .jpgアレクサンドル・アレクセイエフ「鼻」(ゴーリキー原作).jpgAtama Yama (Mt. Head).jpg 上記のほか、第51位から第150位までには、第56位にカレル・ゼーマンの「水玉の幻想」('48年/チェコスロバキア、12分)、第61位に「ルパン3世(TV第1作)」('71年/日本)、第70位にジョン・ラセターの「ルクソー Jr.」('86年/米、2分)、第72位にアレクサンドル・アレクセイエフ の「」('63年/仏、11分)、第73位にブルーノ・ボツェットの「ネオ・ファンタジア」('76年/イタリア)、第90位に山村浩二の「頭山」 ('02年/日本、10分) 、第92位にユーリー・ノルシュテインの「外套」(未完成/ロシア)、第97位に押井守の「うる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマー」('84年/日本)、第119位に吉川惣司の「ルパン三世~ルパンVS複製人間」('78年/日)、第127位にウォルト・ディズニー製作の「ダンボ」 ('41年/米)、第130位に宮崎駿の「もののけ姫」('97年/日本)などがランクインしています。

 アンケートの回答者138名の内訳が、日本114名、海外24名ということもあって、日本の作品が多いのはもとより、比較的我々に馴染みのある作品が多いように思いましたが、そんな中、ユーリ・ノルシュテインの「霧につつまれたハリネズミ」('75年/露)が第1位、同「話の話」('79年/露)が第2位と、ユーリ・ノルシュテインが圧倒的な支持を得ています。

道成寺 川本.jpg 「霧につつまれたハリネズミ」は10分の作品、「話の話」は29分の作品ですが、短編が結構上位に来ているのは、短編の方が、時代の先端技術の粋を集めた完成度が高い作品、あるいは個人の意匠を集約した、"純度"が高い作品となりやすいためでしょうか。日本の作品でも、第15位にランクインの政岡憲三監督の「くもとちゅうりっぷ」('43年)は16分の作品、第25位のアニメーション作家であるとともに人形作家でもあった川本喜八郎(1925-2010)監督の「道成寺」('76年)は19分の短編作品です。

「道成寺」('76年)
 
くもとちゅうりっぷ tenntoumusi.jpgくもとちゅうりっぷ くも.jpg 「くもとちゅうりっぷ」は戦時中(昭和18年4月公開)の作品で、クモに襲われそうになったテントウムシの女の子をチューリップ(擬人化されている)が助けるというもの。松本零士や手塚治虫も昔観たそうですが、戦時中に多く作られた(例えば同時期に作られた37分のアニメ映画「桃太郎の海鷲」(昭和18年3月公開)のような)明らかなプロパガンダ目的の国策映画ではなく、童話のようなミュージカル仕立てで描いている点で特異な作品とされています。一方、テントウムシは日本人的な顔立ちでクモは黒人のような顔なので、日本と敵国を表しているようにも見えます。しかしながら、テントウムシの女の子は白人の女の子にも見え、クモの方は、日本が大東亜共栄圏を築くために友好関係を築く必要がある南洋の原住民に見えなくもなく、そのため文部省の推薦を得ることが出来なかったとか。テントウムシの女の子の動きは、政岡憲三監督が自分の妻に水着を着せてモデルにして作画したそうで、ディズニーが「白雪姫」('37年)などで用いた方法に似ているように思います(今ならばモーションキャプチャーといったところか)。

 ランキング150作品の紹介のほかに、専門家3名(片山雅博、角鍋博之、権藤俊司の各氏)による「座談会」や、「監督ランキングベスト100」、絵本に描かれた「霧につつまれたハリネズミ」などの特集が組まれていて、ども充実しています。中でも、8ページにわたる「座談会」(鼎談)は、なぜ「霧につつまれたハリネズミ」が1位で「話の話」が2位になったのかという分析から始まって、以下の作品についても知られざるエピソードが満載で、興味深く読めました。

 その座談会のタイトルキャッチは、「根性ある人は150本すべてみなさい!」となっていますが、素人目にも身近な作品が多く含まれており、その中に一部なかなかお目にかかれない作品も含まれているといった感じで、このキャッチはあながち大袈裟なことを言っているわけではないように思えました。
 
霧の中のハリネズミ.jpg「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた霧の中のハリネズミ 1.jpgハリネズミ)」●原題:Ёжик в тумане / Yozhik v tumane●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:ユーリイ・ノルシュテイン●脚本:セルゲイ・コズロフ●音楽:ミハイール・メイェローヴィチ●撮影:ナジェージダ・トレシュチョーヴァ●原作:セルゲイ・コズロフ●時間:10分29秒●声の出演:アレクセーイ・バターロフ/マリヤ・ヴィノグラドヴァ/ヴャチェスラーフ・ネヴィーヌィイ●公開:2004/07(1988/10 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント【VHS】)●配給:ふゅーじょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(評価:★★★★)


くもとちゅうりっぷes.jpgあの頃映画松竹DVDコレクション 桃太郎 海の神兵.jpg「くもとちゅうりっぷ」●制作年:1943年●監督・脚本・撮影:政岡憲三●製作:松竹動画研究所●動画:桑田良太郎/熊川正雄/土井研二/山本三郎/木村阿弥子●作曲・指揮:弘田龍太郎●歌:村尾護郎/杉山美子●原作・作詞:横山美智子●時間:16分●公開:1943/04●配給:松竹(評価:★★★☆)
あの頃映画松竹DVDコレクション 桃太郎 海の神兵 / くもとちゅうりっぷ デジタル修復版」['16年]

《読書MEMO》
●内容
世界と日本のアニメーションベスト150_2.jpg世界と日本のアニメーションベスト150発表&作品紹介
時代、ジャンル、国内外を問わず、すべてのアニメーションを対象にした、世界初のランキング! アニメーション監督を中心に業界関係者たちに、好きな作品ベスト20を挙げてもらいました。 厳しいプロたちに選ばれたベストアニメーション150本を発表!
座談会「根性ある人は150本すべて見なさい!」
アニメーション監督と評論家による言いたい放題の座談会。ランキングについてはもちろん、普段は聞けない監督や作品にまつわる知られざるエピソードなどを披露。
監督ランキングベスト100
ランキング作品の点数を元にした監督ランキングBest100。 作品のBest150とはひと味違うランキング結果に注目。
絵本「霧につつまれたハリネズミ」絵コンテ
絵本のために描かれた「霧につつまれたハリネズミ」のラフを特別収録。
アンケート全掲載138+α
回答者138人のアンケートを一挙に大公開。 「好きなアニメーション作品20本」という以外に決まりがないため、ユニークな作品やコメントが満載。
前代未聞のランキング結果発表!!
ランキングされた924タイトルを全掲載。 監督名、得点はもとより、英語タイトル、制作年、制作国などをリスト形式にして発表。
五味洋子が選ぶ、マイフェイバリットアニメ100
アニメーションへの目線の確かさでは信頼の厚い五味洋子が選んだ~My Favorite Animations「世界と日本のベストアニメ厳選100」
ピックアップ30
150位圏外にもすばらしい作品がたくさん。 すべて紹介したいが、ランキングの中から30本をピックアップ。
ユーリ・ノルシュテインからのメッセージ 芸術家がこの混迷の時代にものをつくるということ
映像詩人といわれるロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテイン。 ラピュタアニメーションフェスティバル'02のシンポジウムで語ったメッセージ。

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