【2798】 ○ ジョージ・コーリーザー/スーザン・ゴールズワージー/ダンカン・クーム (東方雅美:訳) 『セキュアベース・リーダーシップ―〈思いやり〉と〈挑戦〉で限界を超えさせる』 (2018/09 プレジデント社) ★★★★

「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2799】 松山 一紀 『次世代型組織へのフォロワーシップ論

リーダーがチームの安全基地(セキュア・ベース)のような存在となることを提唱。

セキュアベース・リーダーシップ2.jpgセキュアベース・リーダーシップ.jpg
セキュアベース・リーダーシップ ―〈思いやり〉と〈挑戦〉で限界を超えさせる

 本書は、リーダーがチームの安全基地(セキュア・ベース)のような存在となることで、メンバーの才能、意欲、創造力、エネルギーを解き放つ、いう考え方に基づいたリーダーシップ論を提唱したものです。セキュアベース・リーダーとは単に優しいリーダーではなく、部下の安全基地となると同時に各自の力を最大限に発揮してはじめて達成できるような高い目標を与えることで、チームのパフォーマンスを上げるリーダーのことを指すとしています。

 第Ⅰ部では、第1章で、セキュアベースとは安全と安心感を提供し、加えて、冒険やリスクをとることや挑戦への意欲をもたらすものであるとし、第2章で、セキュアベース・リーダーの9つの特性を挙げています。それらは、① 冷静でいる、②人として受け入れる、③可能性を見通す、④傾聴し、質問する、⑤力強いメッセージを発信する、⑥プラス面にフォーカスする、⑦リスクを取るように促す、⑧内発的動機で動かす、⑨いつでも話せることを示す、の9つであり、これらの特性は後天的に習得することができるとしたうえで、第1の特性(①冷静でいる)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。

 第Ⅱ部では、第3章で、人と人の「絆」こそがセキュアベース・リーダーシップの中心であるとして、信頼を構築するために役立つ2つの特性(②人として受け入れる、③可能性を見通す)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。第4章では、社会的感情としての「悲しみ」に注目して、悲しみを受け止め、組織に変化を起こすために役立つ2つの特性(④傾聴し、質問する、⑤力強いメッセージを発信する)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。

 第5章では、「心の目」をコントロールすることが、自分自身のコントロールには欠かせないとして、心の目で見るために役立つ2つの特性(⑥プラス面にフォーカスする、⑦リスクを取るように促す)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。第6章では、「勝利を目指す」リーダーシップ・アプローチの特性を説き、「勝利を目指す」ために役立つ2つの特性(⑧内発的動機で動かす、⑨いつでも話せることを示す)について解説し、それを伸ばすためのヒントを示しています。

 第Ⅲ部では、第7章で、自分のセキュアベースを強化するには自己認識が重要であることを説き、第8章では、自身が他者のセキュアベースになるには、9つの特性のうち、何が自分の強みかを明確にすることが必要であるとしています。第9章では、組織が人間関係と結果の両方を大切にするとき、その組織は従業員にとってのセキュアベースとなり得るとしています。最終第10章では、組織の人間性を高める取り組みは、リーダー自身が自分の人間性に注意を向け、他者に対して自分自身をオープンにすることから始まるとしています。

 本書によれば、成功したリーダーと失敗したリーダーの大きな違いは、人生にセキュアベース(安全基地)が存在したかどうかという点であり、安全基地を持つことで、不安や恐れが減少し、信じること、リスクをとることが増えていくとのことです。この意欲とエネルギーによって、人は居心地のよい領域から踏み出して、自身のまだ開拓されていない可能性を現実のものにしようと努力するし、人生においてセキュアベースの力を経験したならば、それを「モデル」として他の人のセキュアベースとなることができるとしています。

 著者の専門は組織心理学であるとのことですが、本書の趣旨を一言で言えば、帯にあるように「人は、安全基地があればより遠くまで飛んでいける」ということなのでしょう。あるいは、サブタイトルにある「〈思いやり〉と〈挑戦〉で限界を超えさせる」ということになるのかもしれません。

たいへん啓発的な内容ですが、まったく新しいリーダーシップ論と言うよりは、「PM理論」や「EQリーダーシップ」など既存のリーダーシップ論と重なる部分もあったように思います。個人的には、リーダーが部下にとっての安全基地になるためには、まず自分自身のセキュアベースを持つことが重要であるという考えに納得させられました。

《読書MEMO》
●目次
第Ⅰ部
第1章 安全とリスクのパラドックス
第2章 セキュアベース・リーダーの9つの特性
第Ⅱ部
第3章 信用構築サイクル
第4章 社会的感情としての「悲しみ」
第5章 「心の目」で見る練習
第6章 「勝利を目指す」マインドセット
第Ⅱ部
第7章 自分のセキュアベースを強化する
第8章 他者のセキュアベースになる
第9章 「安全基地」としての組織
第10章 人間の顔をした組織をつくる

●セキュアベース・リーダーの9つの特性(第2章)
① 冷静でいる
②人として受け入れる
③可能性を見通す
④傾聴し、質問する
⑤力強いメッセージを発信する
⑥プラス面にフォーカスする
⑦リスクを取るように促す
⑧内発的動機で動かす
⑨いつでも話せることを示す

●特性①(冷静でいる)を伸ばすためのヒント(第2章)
1.気分を変える
2.何をどのように言うか注意する
3.マインドフルネスの練習をする
●特性②(人として受け入れる)を伸ばすためのヒント(第3章)
1.自分を律する
2.社員としての役割を超えて、その人の個性を知る
3.失敗を学びに変える
4.問題とその人自身を切り離す
●特性③(可能性を見通す)を伸ばすためのヒント(第3章)
1.チームや組織の全員の可能性についてのビジョンを作成する
2.高い期待を持つ
3.自分を超える可能性を持っている人を採用する
●特性④(傾聴し、質問する)を伸ばすためのヒント(第4章)
1.積極的に話を聞く練習をする
2.自由回答式の質問をする
3.沈黙の間を使う
4.話をする環境にも気を遣う
●特性⑤(力強いメッセージを発信する)を伸ばすためのヒント(第4章)
1.言葉だけでなく、非言語のメッセージにも気を遣う
2.その一瞬を見逃さない
3.力強いメッセージをはっきりと、簡潔に、ゆっくり伝える
4.力強いメッセージを書く
5.力強いメッセージをノートに書きためておく
●特性⑥(プラス面にフォーカスする)を伸ばすためのヒント(第5章)
1.自分自身の心の目をチェックする
2.自分の脳をだます
3.前向きになるように影響を及ぼしたい人物を3人選ぶ
4.他者をビジョンに巻き込む
●特性⑦(自分のセキュアベースを強化する)を伸ばすためのヒント(第5章)
1.リスクをとるロールモデルとなる
2.失敗に公正かつ明確に対応する
3.リスクをとるチャンスを一貫して提供しているかを意識しよう
4.自分の状態に注意する
●特性⑧(内発的動機で動かす)を伸ばすためのヒント(第6章)
1.どのように部下を動機づけているかを振り返る
2.一人の人間として部下を理解する
3.「所属」と「達成」という2つの欲求を満たす
●特性⑨(いつでも話せることを示す)を伸ばすためのヒント(第6章)
1.フォロワーと過ごす時間の長さではなく、その質を大切にする
2.歩き回って指揮を執る
3.短いやりとりを行う
4.本当に近づいていいことを示す


ブログランキング・にほんブログ村へ banner_04.gif e_03.gif



和田泰明ブログ

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1