【2791】 ◎ マイケル・バーチェル/ジェニファー・ロビン (伊藤健市/斎藤智文/中村艶子:訳) 『最高の職場―いかに創り、いかに保つか、そして何が大切か』 (2012/02 ミネルヴァ書房) ★★★★☆

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「働きがい」を構成するの「信頼(信用・尊敬・公正)」「誇り」「連帯感」。

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最高の職場―いかに創り、いかに保つか、そして何が大切か
"The Great Workplace: How to Build It, How to Keep It, and Why It Matters"
Great Place to Work HPより
「働きがいのある会社」モデル.jpg 本書(原題:The Great Workplace: How to Build It, How to Keep It, and Why It Matters,2011)は『フォーチュン』誌の「米国で最も働きがいのある会社ベスト100」を認定する、サンフランシスコに本部を置く《Great Place to Work (働きがいのある会社)Institute(GPTWI)》による「最高の職場」に関する調査報告書であり、いわゆるGPTWモデルというものを提唱したものです。

 第1章では、GPTWIが、長年にわたる研究から定義したGPTWモデルの「働きがい」の構成要素を5つ挙げています。その5つとは、①信用、②尊敬、③公正、④誇り、⑤連帯感であり、そのうち①~③までを一緒にした概念が「信頼」であり、「信頼」「誇り」「連帯感」の3つは、組織におけるプラットフォームで、それがない組織では、どんな制度や仕掛けを導入してもうまく機能しないとしています。以下、第2章から第7章にかけて、これら5つの要素について、それぞれのチェックポイントを解説しています。

 第2章は「信用」について述べられており、リーダーに対する信用を構築するのに欠かせないものとして、オープンで気さくな「双方向コミュニケーション」、人材とその他のリソースを調整する際の「有能さ」、一貫性をもってビジョンを遂行する「誠実さ」の3つを挙げています。第3章は「尊敬」について解説しており、リーダーの行動が従業員の尊敬の念に影響を与える3つの領域に、専門性の育成のための「支援(サポート)」、関係する意思決定における従業員との「協働(コラボレーション)」、従業員の家庭や生活への「配慮(ケアリング)」をがあるとしています。第4章は「公正」について述べられており、報酬が整合性のとれた方法で配分されているという「公平感」、採用や昇進でのえこひいきがない「偏りのなさ」、差別がなく、意見や不満をアピールすることができる「正義」の3つが公正な職場環境を構築するとしています。

 第5章は「誇り」について説いており、社員を育む誇りには、「自分の仕事」に対する誇り、「チーム」が行った仕事に対する誇り、「組織」が生み出す製品や地域社会での位置づけに対する誇りの3つがあるとしています。第6章では「連帯感」について述べられており、自分らしくいられる環境が整っている「親しみやすさ」、楽しみと歓迎する雰囲気がある「思いやり」、《家族》意識や《チーム》意識といった「仲間意識」の3つが、職場の連帯感を構築するとしています。

 第7章ではグローバルな視点に立ち、こうしたGPTWモデルが世界共通にビジネス上の恩恵をもたらしていることが、世界各国にあるGPTWIのオフィスで行われた調査結果から判明しているとしています。第8章では、では最高の職場を作るにはどうすればよいのかを説き、最高の職場におけるリーダーは、責任感と謙虚さ、熱意と忍耐力、人と成果のそれぞれについて、これかあれかの選択をするのではなく、それら二つの見方のバランスをとっているとしています。

 本書で挙げた「働きがい」の構成要素のそれぞれについて、その分野で秀でた会社の事例が数多く紹介されており、多様な学習機会や楽しいイベントを用意している会社が多くあります。例えばバーモント州のコーヒー豆販売会社は、社員をコーヒーの生産国に招待し、コーヒーの木がどのような険しさの中で成長するのかを教え、そして旅の思い出を共有するようにしています。ギリシャでスイミングプールの建設と保守をしている会社の場合は、大学院に行きたい者には学費を払い、フランチャイズ事業を立ち上げたい者には資金援助をしていて、またグローバルな法律事務所では、1000人を超える弁護士が1人当たり77時間の無料法律相談をしていたりします。

 本書で挙げられている「働きがい」の構成要素の中には、かつて日本的経営の強みと言われた要素も少なからず見られたように思いました。また、リーダーシップとはバランス感覚なのだという思いも抱かされました。「働きがいのある会社」とはどのような会社なのかということをデータに基づいて述べているわけであって、人事パーソンは一度は読んでおきたい本です。

《読書MEMO》
●目次
第1章 序論 最高の職場を創り上げることがもつ価値
 Case study SASインスティチュート-最高の資産に配慮する
第2章 信用 「私はリーダーを信じる」
 Case study プライスウォーターハウスクーパース-優秀な社員の鼓舞
 Case study グーグル-巨大な干し草の山からグーグラーを探し出す
第3章 尊敬 「私はこの組織の価値ある一員です」
 Case study ジェネラル・ミルズ-優秀な管理職の育成
 Case study SCジョンソン-ファミリー企業
第4章 公正 「皆が同じルールでプレーする」
 Case study スクリップス・ヘルス病院-全員は一人のために、一人は全員のために
 Case study CH2Mヒル 所有権をもつ生き方
第5章 誇り 「私は本当に意味あることに貢献します」
 Case study ウェグマンズ・フード・マーケッツ-地域社会への貢献を誇りとする
 Case study WLゴア&アソシエイツ-革新的な文化と革新のための文化
第6章 連帯感 「わが社の社員はすばらしい」
 Case study カムデン・プロパティ・トラスト-社員と同社製住宅の住民にとって楽しいコミュニティの構築
 Case study マイクロソフト-天才大歓迎
第7章 グローバルな視点 世界各国にある最高の職場
第8章 行動を起こす 最高の職場を創り上げる
●GPTWモデルの「働きがい」の5つの構成要素とチェックポイント
①信用
・コミュニケーション:オープンで気さくなコミュニケーション
・有能さ:人材とその他のリソースを調整する際の有能さ
・誠実さ:誠実さを重視し、一貫性をもってビジョンを遂行している
②尊敬
・支援:専門性の育成への支援と感謝の表明
・協働:関係する意思決定における従業員との協働
・配慮:従業員の家庭や生活への配慮
③公正
・公平感:全員に対する公平な報酬
・偏りのなさ:採用・昇進でえこひいきをしない
・正義:差別がなく、意見や不満をアピールする方法が整っている
④誇り
・自分の仕事:自分の仕事と個人的貢献に対する誇り
・チーム:自分のチームやワークグループが行った仕事に対する誇り
・組織:組織の製品や地域社会での位置づけに対する誇り
⑤連帯感
・親しみやすさ:白分らしくいられる環境が整っている
・思いやり:社交的で親しみやすく、歓迎する雰囲気がある
・仲間意識:《家族》意識や《チーム》意識

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