【2786】 ◎ ロバート・スティーヴン・カプラン (福井久美子:訳) 『ハーバードのリーダーシップ講義―「自分の殻」を打ち破る』 (2016/08 CCCメディアハウス) ★★★★☆

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リーダーシップに不可欠なものは経営者マインドと積極的に学び続ける姿勢。

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ハーバードのリーダーシップ講義 「自分の殻」を打ち破る』['16年]/「本to美女」2017.02.16 「悩める人のリーダーシップ」より

 本書(原題:What You Really Need to Lead: The Power of Thinking and Acting Like an Owner,2015)は、ハーバード大学のMBAプログラムでさまざまなリーダーシップ講座を担当し、管理職向けのプログラムでも教えていた著者によるもので、リーダーシップ能力は伸ばすことも習得することもできるというハーバードの自分を知る技術.jpgハーバードの正しい疑問を持つ技術.jpgことを前提とし、リーダーシップを定義することよりも、リーダーシップのベストプラクティスに重きを置いて、リーダーであり続けるための極意を説いた本です(『ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ』('14年/CCCメディアハウス、『ハーバードの"正しい疑問"を持つ技術―成果を上げるリーダーの習慣』('15年/CCCメディアハウス)に続く同著者のハーバード・シリーズ第3弾)。
ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ』['14年]/『ハーバードの"正しい疑問"を持つ技術 成果を上げるリーダーの習慣』['15年]

 第1章「経営者マインドをもつ―経営者になったつもりで考え、行動する」では、リーダーシップに不可欠なものは経営者マインドであり、経営者マインドとは、意思決定者の立場でものを考え、自分の信念に従って行動し、自分の行動の結果に責任をもつことであるとしています。リーダーシップとは、人々にメリットをもたらすような価値を提供することであり、意思決定者としての自分の信念を見極め、勇気を出して行動し、人々に価値を提供することに注力するのがリーダーシップの柱であり、リーダーシップを発揮するのに地位も肩書も必要ではなく、リーダーシップの本質は心構えであり、それは地位でなく行動で決まるとしています。

 第2章「自分の殻を破る―意欲的に学び、〝正しい疑問〞をもち、アドバイスを求め、孤立を避ける」では、リーダーであり続けることは並大抵ではなく、リーダーシップには努力が必要であり、常に学ぼうとする姿勢が必要であるとしています。学ぶ意欲を持続するには、わからないことを質問し、人の話を聴くことが大切であり、説得力のある主張を聴いたとき、それに耳を傾けて自分の意見を考え直す、そうした「自分の殻」を打ち破る柔軟な姿勢が、リーダーが陥りやすい孤立というリスクを回避し、ものごとの転換点を察知することにつながるとしています。

 第3章「リーダーとしてのスキルを伸ばす―二つのプロセスをマスターする」では、リーダーシップ能力を向上させ、リーダーが犯しやすい過ちを回避するには2つのプロセスがあるとしています。1つは、「明確なビジョンを描く」「優先事項を3~5項目選び出す」「方向性から外れていないか分析する」ことであり、これらのプロセスを行うと、リーダーとしての手腕を格段に向上させることができるとしています。2番目のプロセスは、「自分を知ること」であり、自分の強みと弱みは何か、自分は何が好きか、何に情熱を抱くかを知ることは、リーダーになるのに欠かせない土台のようなものであるとしています。

 第4章「真の人間関係を築く―自分をさらけ出し、グループの力を活用する」では、リーダーが孤立を避けるには、人々の協力が必要であり、真の人間関係を築くには、「相互理解」「互いへの信頼」「互いに対する尊敬の念」の3つの要素が必要であるとしています。また、人間関係を深めるには、「自分をさらけ出す」「相手に質問する」「アドバイスを求める」の3つを行う必要があるとしています。さらに、1人の人間が決定を下すよりも、グループのほうがより優れた分析結果や解決策を導き出すことができ、この「グループの力」を利用するには、多様な人材を集めて、問題を1つ提起して彼らに議論してもらうのがよいとしています。

 第5章「終わりなき旅をする―もう一段階上のリーダーをめざして」では、もう一段階上のリーダーをめざすための心構え(マインドセット)として、自分の人生に責任をもつこと、「正しい行為は報われる」と信じること、価値創造に目を向けることを挙げています。また、学習意欲を妨げる壁を乗り越え、窮地を脱するにはどうすればよいか、より良いリーダーになるためのツールを幾つか提案し、「世の中はあなたを必要としている」という激励の言葉で本書を締め括っています。 

 本書の目的は、読者にリーダーになるための習慣を身につけ、リーダーシップスキルを伸ばし続けてもらうものであり、そのためにとりわけ重要なのは、経営者マインドを身につけることと、積極的に学び続ける姿勢であるとしています。よりよきリーダーシップの発揮をめざす人にとって、マインセットを促す啓発度の高い内容であるとともに、ヒントとなるスキルが紹介されている実践の書でもあるかと思います。

《読書MEMO》
●目次
はじめに ――誰でもリーダーになれる 
リーダーシップは素質の問題? 
リーダーシップは習得できる? 
あなたにとってリーダーシップとは? 
リーダーシップの定義 
リーダーシップの共通認識を求めて 
問題点 
リーダーシップの基本は経営者マインド
さあ、始めよう
第1章 経営者マインドをもつ――経営者になったつもりで考え、行動する
経営者マインドとは 
意思決定者になったつもりで考える 
確信を実行に移すには 
価値創造に注力する 
リーダーに幻滅するとき 
地位も肩書きも関係ない 
リーダーがいない? 
リーダーシップになくてはならない要素 
第2章 自分の殻を破る――意欲的に学び、〝正しい疑問〞をもち、アドバイスを求め、孤立を避ける 
成長の分岐点 
質問しますか? 助言を求めますか? 
積極的に学び続ける姿勢 
孤立というリスク 
自分をさらけ出すのが怖い 
孤立に気づくとき 
練習あるのみ
第3章 リーダーとしてのスキルを伸ばす――二つのプロセスをマスターする
二つのプロセス 
ビジョン、優先事項、方向性の確認 
二番目のプロセス――自分を知ること 
嘘をついてもいいですか? 
二つのプロセスを行う意味 
第4章 真の人間関係を築く――自分をさらけ出し、グループの力を活用する
孤立のリスク 
人間関係で重要な三つのこと 
頼れる人がいない 
人間関係の築き方 
知っているようで実は知らない 
フィードバックを求める 
孤立する起業家 
昇進のジレンマ 
グループの力 
多様な人材をそろえる 
ブレインストーミングの力 
白紙の状態から構想を練る演習 第二弾 
人と協力して働くことを学ぶ 
第5章 終わりなき旅をする――もう一段階上のリーダーをめざして
自分の人生に責任をもつ 
「正しい行為は報われる」と信じる 
価値創造に目を向ける 
学習意欲を妨げる壁 
窮地を脱するには 
より良いリーダーになるためのツール 
世の中はあなたを必要としている

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