【2775】 ○ 吉原 史郎 『実務でつかむ! ティール組織―"成果も人も大切にする"次世代型組織へのアプローチ』 (2018/08 大和出版) ★★★☆

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ティール組織入門書としては良いが、ホクラシーの概念と混在してやや複雑になった?

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実務でつかむ! ティール組織 "成果も人も大切にする"次世代型組織へのアプローチ』['18年]『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』['18年]
「月刊 人事マネジメント」2018年9月号
「月刊 人事マネジメント」2018年9月号.JPG フレデリック・ラルー著『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(2018年/ 英治出版)が刊行されて以来、人事専門誌などでも「自立分散型組織」に関する特集が組まれたりするようになりました。本書は、この本で提唱されているティール組織とはどのようなものであるか、これまで巷で次世代型組織と言われてきたホラクラシー組織とはどのような関係にあるのかを解説した本であり、著者は、日本初のホラクラシー認定ファシリテーターであるとのことです。

 1章では、『ティール組織』の中で示されているレッド、コハク、オレンジ、グリーン、ティールの5つの組織モデルについての概要を紹介するとともに、次世代型組織にあたるティール組織の、①進化する目的(エボリューショナルパーパス)、②「自主経営」が可能となる仕組みを有していること、③個人としての全体性の発揮(ホールネス)、という3つの要点について解説しています。さらに、ホラクラシー組織とはティール組織の1つの形態であるため、ティール組織同様、「社内上、社長や役員、部長等の役職自体を持たずに、組織の目的実現に向けてメンバーが進むことができるような独自の仕組みや工夫が溢れている」ことが特徴であるとし、ホラクラシー組織における「進化する目的」「自主経営」「個人としての全体性の発揮(ホールネス)」とは何かを解説しています。

 2章では、5つの組織モデルのうちオレンジ組織、グリーン組織、ティール組織について、それぞれトップダウン型組織(オレンジ)、ボトムアップ志向の組織(グリーン)、次世代型組織(ティール)と位置づけ、その特徴と移行の際の要点を実務的に解説しています。さらに、著者自身がボトムアップ志向の組織と次世代型組織との間に距離感を感じたことから、グリーン組織からティール組織への移行段階で、役職は残しまま次世代組織への土台をつくる「プレティール組織」という概念を設定しています。

 3章では、次世代型組織の3つの土台づくりとして必要な、①心の奥底の想いに気付き、互いに対話する、②目的地図と重要指標の透明化、③行動と目的の循環サイクル、の3つについて解説しています。

 4章では、次世代型組織の事例として、『ティール組織』でも取り上げられていたザッポス社のホラクラシーの活用例を紹介し、5章では、次世代組織の土台づくりに繋がる事例として、従来のマネジャーをなくし、"カタリスト(媒介役)"という役割を設定した株式会社ネットプロテクションズの事例などを紹介しています。

 ティール組織に関する解説は『ティール組織』に準拠しているため、同書の解説になっていると言えます。一方、ホラクラシー組織については、著者自身がティール組織の考え方との融合を試みたとも言えるのではないかと思います。ティール組織やホラクラシー組織の基本概念を整理し、何がその要点となるかを理解するには良い本だと思います。

 一方で、事例編の方は、次世代型組織(ティール組織)の事例として紹介されているのは『ティール組織』でも取り上げられていたザッポス社1社のみで、一方で、著者が設定した「プレティール組織」という概念に該当する「次世代型組織の土台に繋がる事例」は、日本企業やNPO法人などいくつかの事例が紹介されていますが、いずれもティール組織と言うより、どちらかと言うとホラクラシー組織の事例解説となっているように思いました。

 ティール組織というのがまだ事例が少ないため、理解しようとする側にとってもやや抽象的なイメージになりがちなのが今の段階であり、「プレティール組織」という過渡期的な概念を用い、それに該当する事例を紹介して解説した工夫は買いたいと思います。ただし、それらがティール組織とは実務上どのようなものかを理解するうえでの助けになったかもしれませんが、ティールとホラクラシーの両概念が混在して、概念的にはやや複雑になってしまった印象も受けました。

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