【2761】 ◎ ロバート・S・キャプラン/デビッド・P・ノートン (櫻井通晴:訳) 『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード (2001/08 東洋経済新報社) ★★★★☆

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○経営思想家トップ50 ランクイン(ロバート・S・キャプラン/デビッド・P・ノートン)

バランスト・スコアカードに関する知識を得たいと考えている人には必読の書。

キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード1.JPGキャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード.jpg  ロバート・キャプラン/デビッド・ノートン.jpg Robert Kaplan & David Norton
キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』['01年]

バランス・スコアカード 1997.jpgバランス・スコアカード―戦略経営への変革.jpg 著者であるロバート・S・キャプラン(Robert Kaplan、ハーバード・ビジネススクール教授)、 デビッド・P・ノートン(David Norton、コンサルタント会社社長)が、企業を財務、顧客、内部ビジネス・プロセス、学習と成長という4つの視点から評価していくバランスト・スコアカードを1992年に発表したのは、それまでの企業の業績評価が財務諸表(損益計算書、貸借対照表など)に偏っていたのではないかとの反省に基づくものであり、このバランスト・スコアカードの理論と事例を纏めたものが"Balanced Scorecard: Translating Strategy into Action《1996》"(吉川武男:訳『バランス・スコアカード』('97年/生産性出版))でした(2011年に同訳者による新訳版が刊行された)。
バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革』['97年]『バランス・スコアカード―戦略経営への変革』['11年]

The Strategy-Focused Organization.jpg その当時のバランスト・スコアカードの目的は、業績測定問題を解決することにありましたが、しかし、実際の導入例においては、業績の測定よりも更に重要な戦略の実行を目的として導入されており、つまり、戦略と行動のギャップを埋め、具体的な活動に繋げていくためのフレームワークとして、戦略と行動の関連付けを明確にし、その上で、効果測定に活用することで導入企業は、1、2年の間に大きく業績を向上させていました。

 本書(原題:The Strategy-Focused Organization: How Balanced Scorecard Companies Thrive in the New Business Environment《2000》)では、そうした導入事例を踏まえて、企業がバランスト・スコアカードを通して重要なマインド・プロセスを戦略に方向づけ、戦略を実行し、業績向上に役立たせるための理論的で包括的なアプローチを提供しています。

"The Strategy-Focused Organization: How Balanced Scorecard Companies Thrive in the New Business Environment"

 まず第1章で、戦略実行のためのバランスト・スコアカードの導入事例を挙げ、バランスト・スコアカードによって戦略志向の組織体となるための原則として、①戦略を現場の言葉に置き換える、②組織全体を戦略に向けて方向づける、③戦略を全社員の日々の業務に落とし込む、④戦略を継続的なプロセスにする、⑤エグゼクティブのリーダーシップを通じて変革を促す、の5つを挙げています。そして、第2章で、第1章で紹介した事例の中からモービルの事例について、更にこの5つの原則に沿って詳しく紹介しています。

 以下、第1部(第3章~第5章)で「戦略を現場の言葉に置き換える」、第2部(第6章~第7章)で「シナジー効果を創造するために組織体を方向づける」、第3部(第8章~第10章)で「戦略を全社員の日々の業務に落とし込む」、第4部(第11章~第12章)で「エグゼクティブのリーダーシップを通じて変革を促す」について、第5部(第13章~第14章)で「エグゼクティブのリーダーシップを通じて変革を促す」についてそれぞれ解説しています。

第3章 戦略マップの構築「戦略の因果関係を定義づける」(109p)
図 1 BSCの4つの視点の関係(水平構造).gif 第1部「戦略を現場の言葉に置き換える」の第3章では、戦略マップをどのように構築するか、第4章では、営利企業における戦略マップの構築、第5章では、非営利組織、政府、ヘルスケア機関における戦略マップの構築について、それぞれ、ナショナル・バンク・オンライやシャーロット市、デューク小児科医院などの事例を挙げながら解説しています。

 第2部「シナジー効果を創造するために組織体を方向づける」の第6章では、ビジネス・ユニットのシナジー創造について、第7章では、シェアードサービスを通じてのシナジー創造について、それぞれFMC社、モービルNAM&Rなどの事例を挙げながら解説しています。

 第3部「戦略を全社員の日々の業務に落とし込む」の第8章では、戦略意識の高揚を図るにはどうすればよいか、第9章では、個人レベルとチーム・レベルの目標をどう定義づけるか、第10章では、バランスト・スコアカードに基づく報酬制度はどうあるべきかを、それぞれ、ノバ・スコシア電力会社などの事例を挙げながら解説しています。

 第4部「戦略を継続的なプロセスにすること」の第11章では、計画設定と予算管理について、第12章では、フィードバックと学習のさせ方について、ABBスイスなどの事例を挙げながら解説しています。

 第5部「エグゼクティブのリーダーシップを通じて変革を促す」の第13章では、リーダーシップと活性化について、第14章では、失敗を回避するための留意点について解説しています。

 改めて要約すると、バランスト・スコアカードを単に業績評価の新たなツールとしてではなく、企業のビジョン・戦略に沿って各階層の意識や方向性の具体化を図るために、このバランスト・スコアカードを戦略に組み込み、戦略をマネジメントするツールとして、戦略の実効性を支援する機能を果たさせることが重要であるとし、その考え方や手法を説いているのが本書です。前著が理論書であったのに対し、本書は実務書であると言え、事例や文献を豊富に提供しているのが特徴で、これから実際にバランスト・スコアカードを導入する企業やそれを支援するコンサルタント、バランスト・スコアカードに関する知識を得たいと考えている人事パーソンには必読の書と言えます。

【2201】 ○ グローバルタスクフォース 『あらすじで読む 世界のビジネス名著』 (2004/07 総合法令)
【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)


《読書MEMO》
●個人レベルのバランスト・スコアカードは、
①全社目標と業績測定尺度
②全社目標を特定の目標に落とし込むための箇所
③個人やチームが自分達たちの目標とそれを達成するためのステップ
という3つのレベルの情報が入れられる(第3部・第9章、310p)

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