【2757】 ◎ トム・ピーターズ/ロバート・ウォーターマン (大前研一:訳) 『エクセレント・カンパニー―超優良企業の条件』 (1983/07 講談社) 《エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)』 (2003/07 英治出版)》 ★★★★☆

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○経営思想家トップ50 ランクイン(トム・ピーターズ/ロバート・ウォーターマン)

超優良企業の観察をもとに8つの基本的特性を示す。企業文化論のベストセラー。

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エクセレント・カンパニー―超優良企業の条件』['83年]/『エクセレント・カンパニー〈上〉 (講談社文庫)』『エクセレント・カンパニー〈下〉 (講談社文庫)』['86年]/『エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)』['03年]
トム・ピーターズ(Tom Peters)/ロバート・ウォーターマン(Robert Waterman)
トム・ピーターズ ド.jpgトム・ピーターズ.jpgrobert waterman.jpg 本書(原題:In Search of Excellence、1982)は、マッキンゼーで(出版当時)コンサルタントをしていたトム・ピーターズとロバート・ウォーターマンの2人が、米国の革新的超優良企業(エクセレント・カンパニー)に共通する8つの基本的特性を導きだしたものです。日本企業の躍進と米国企業の衰退が対比的であった1980年代前半に出版され、当時で100万人以上のビジネスパーソンが読んだと言われる世界的ベストセラーとなりました(トム・ピーターズは一時カリスマ的人気を博し、その啓発書は日本でもかなり売れた)。
エクセレントな仕事人になれ! 「抜群力」を発揮する自分づくりのためのヒント163

 著者らは、エクセレント・カンパニーの事例を最終的に62社に絞り込んでいますが、選ばれた企業のリスト自体はそう驚くようなものではなく、IBMやHP(ヒューレット・パッカード)、ウォルマート、GE(ゼネラル・エレクトリック)など、日本でもよく知られている大企業が多いです。本書の特徴は、大手企業などを称えながらも、冷淡な近代マネジメント刊行の行き過ぎを批判し、よりシンプルな基本に戻ることを説いている点にあります。

 第1部「優良企業の条件」第1章「成功しているアメリカ企業」では、自らが行った調査を元に、エクセレント・カンパニーに共通する8つの基本特性を挙げています。
1.行動の重視
2.顧客に密着する
3.自主性と企業家精神
4."ひと"を通じての生産性向上
5.価値観に基づく実践
6.基軸から離れない
7.単純な組織、小さな本社
8.厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ


 第2部「新しい理論の構築を求めて」第2章「『合理主義』的な考え方」では、行き過ぎた合理的な経営モデルを批判しています。
「私たちが異論を唱えたいのは、方向を誤った分析、複雑すぎて実用にならない分析、厳密すぎて扱いにくく柔軟性のない分析、本質的に予知不可能な分析、現場から離れた管理者が現場に対して管理中心の考え方で展開した分析などである。」

 第3章「人々は動機づけを望んでいる」では、プラスの動機づけを強化することの重要性を説き、超優良企業が超優良であるのは、平凡な人々から非凡な力を引き出すような組織を作っているからであり、そこには非凡なリーダーシップが働いているとしています。それは、「意味づけ」を求める人間の欲求に応え、組織の目標を創造するような「変容のリーダーシップ」であるとしています。
「『不合理な』人間欲求を満足させている超優良企業の体質をよく見るとき、その歴史の中には必ず、この『変容のリーダーシップ』を発見することができる。」

 本書の後半3分の2を占める第3部「基本に戻る」では、まず第4章「曖昧さと矛盾を扱う」で、これまでの経営理論の進展を顧みつつ、超優良企業にもしひとつの顕著な特徴があれば、それはこの、曖昧さと矛盾をうまく包括し、管理していく能力であるとし、第5章以下第12章までにおいて、先に挙げたエクセレント・カンパニーの8つの基本特性を、細かく検証・解説しています。

 第5章「行動の重視」では、行動の重視が8つの基本特性の中で最も重要であり、エクセレント・カンパニーは、非常に行動志向が強いとしています。
「『打ち方用意!撃て!狙え!』そして、『狙わずに撃ってしまったあとで、試行から学べ』。それで十分なのである。」

 第6章「顧客に密着する」では、エクセレント・カンパニーは顧客から学ぶとしています。IBMはテクノロジーではなく、顧客とマーケット優先主義を徹底し、ディズニーはひとを通じてのサービスを実践しているとのことです。
「顧客の声を聞き、顧客を会社に招き入れる。顧客をパートナーとする会社は優良な会社であり、その逆も真である。収益は顧客志向の結果として生まれるのである。」

 第7章「自主性と企業化精神」では、エクセレント・カンパニーは、社内に大勢のリーダーと創意ある社員をかかえており、それは私たちが「チャンピオン」と呼ぶ人々の巣箱であるとしています。GE:では大プロジェクトに自主参加できる仕組みがあり、3Mには失敗を支持する仕組みがあるとのことです。
「チャンピオンは先駆者であり、先駆者が力を発揮できるような、十分なバックアップが必要。バックアップがなければチャンピオンは生まれない。チャンピオンがいなければ革新はない。」

 第8章「"ひと"を通じての生産性向上」では、エクセレント・カンパニーは、ごく端末にいる一般社員を、品質および生産性向上の源泉のように扱っているとしています。例えば、ディズニーのファースト・ネーム・タグやキャストという呼称などは、企業をひとつの(拡大)家族であると見ている証しであるとしています。
「従業員を十分に教育し、妥当かつはっきりとした目標を与える。従業員に自主性を持たせ、すすんで業務改善、業績向上につとめるようにしむける。そうした意志と責任感を企業側が持つという意味で、人を大切にせよと言っているのである。」

 第9章「価値観に基づく実践」では、エクセレント・カンパニーは、エクセレント・カンパニーは、価値観を非常に大切にし、その指導者たちは、組織の末端にいたるまで、その価値観にもとづいた活気にみちた環境を作り出しているとしています。IBMのトーマス・ワトソン・ジュニアは、基本的な哲学、精神、組織としての推進力は、技術ないし経済的能力、組織構造、イノヴェーション、タイミングといったことより、組織としての成功にずっと深い関わりをもっていると述べているとのことです。
「自社の価値体系を確立せよ。自社の経営理念を確立せよ。働く人の誰もが仕事を誇りを持つようにするためになにをなしているか自問せよ。10年、20年先になって振り返ってみるとき、満足感をもって思い出せることをしているかと自問せよ。」

 第10章「基軸から離れない」では、エクセレント・カンパニーは、自分たちが熟知している業種(本業)に固執するとしています。そして、そんあ企業は、複雑化に向かう種々のプレッシャーにもかかわらず、ものごとをシンプルにしておくことの重要性を理解しているとのことです。ジョンソン&ジョンソンの創業者バード・ウッド・ジョンソンは、どんなビジネスにせよ、どう運営してはいいかわからないものに手を出してはいけないと述べていると。
「エクセレント・カンパニーでは、成長のほとんどすべてが、内部的に、自前の努力で達成されてきた。小さな会社を買ったり新しいビジネスに乗り出したりするのだが、十分に管理できる規模で行う。そして、明らかにリスクを小さくするのである。」

 第11章「単純な組織、小さな本社」では、エクセレント・カンパニーは、エクセレント・カンパニーの支柱になっている機構と体制は、すっきりと単純なものが多く、管理階層が薄く、本社の管理部門も小さいとしています。また、そうした企業では、"Small is beautiful"という考えに沿って、チーム制、プロジェクト制や自立型組織が機能し、 スピンオフや独立が奨励されているとしています。
「遺憾なことに、企業は大きくなるとともに複雑性を増す。そして、大会社のほとんどは、本質的な複雑さに対応するため、複雑なシステムと組織を考えだす。その結果、スタッフを増やしてその複雑さと取り組もうとするのだが、ここから誤りが始まるのである。」

 第12章「厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ」では、エクセレント・カンパニーは、工場の現場から製品開発チームにいたるまで、自主性を強調している反面、起業精神の中核となるいくつかの価値観については、狂信的ともいえるほど中央集権がきついとしています。共有された価値観が枠組を提供し、その範囲内の中で具体的な自主性が日常的に発揮され、外部を重視すること、外への視点、顧客への関心が、あらゆることのうちでもっとも厳しい自己規制の特性のひとつとなっていると。
「著しく厳格な文化が原動力となり、文化に管理される特性が、エクセレント・カンパニーを際立たせている。」

 著者ら掲げた優良さの判断基準には議論の余地もあり、また、本書で取り上げられた優良企業の中から業績不振に陥るものが出てくると批判に晒されたりもしました。しかし、著者ら自身が、「私たちは革新的な企業文化を持つ企業を挙げたが、それらの企業がいつまでも革新的といえるのかと聞かれる。答えはノーだ」(「ビジネスウィーク誌」1984)と警告しています。

 ビジネス書の進化の歴史の中でもターニング・ポイントなった本ですが。その理由の1つとして、組織の成功に関し、"人間は不合理で、人間をまとめる組織はその責任をとらなければならない"という考えのもとに、意義、最小限の管理など人道的価値観を唱え、ビジネスのソフト面、文化、社員が大事であるという結論を説いている点が、古典的な経営書と対照的であったということが挙げあっれるかと思います。

 また、著者らは、情熱的な観察者の視点から纏めているため、読んでいてまるで登場するエグゼクティブの話を役員会議室で聴いているような気持ちで読み進むことができるのも、本書の特長であるかと思います。

 従業員が、人間の不合理な行動や無分別ゆえに受け入れらる組織―本書はそうした時代を超えたビジネス組織のあり方を提示し、人間の変わり易い性質こそが組織を動かすエネルギーであることを示しているように思いました。

【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)
【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)
【2713】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『リーダーシップの名著を読む』 (2015/05 日経文庫)

【1986年文庫化[講談社文庫(上・下)]】

《読書MEMO》
●効果的なサービス思考に共通してみられる3つの特徴
1. 経営幹部が徹底的かつ積極的に参加していること
2. 従業員志向がきわだって強いこと
3. 従業員のサービスのチェック評価とそのフィードバックが徹底してること
●ニッチ戦略によって顧客に密着している企業の5つの特徴
1. テクノロジーを抜け目のないほど巧みに利用している
2. 価格設定がうまいこと
3. マーケット細分化に1日の長があること
4. 問題解決指向が強いこと
5. 差別化のために費用をかけるのを惜しまぬこと

     
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