【2756】 ◎ ロバート・C・タウンゼント (高橋 豊:訳) 『組織に活を入れろ (1970/08 ダイヤモンド社) ★★★★☆

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組織の制度化に押し潰されないためのゲリラ戦を開始する方法について述べた箴言集。

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組織に活を入れろ (1970年)』"Up the Organization: How to Stop the Corporation from Stifling People and Strangling Profits"

 原題は"Up the Organization: How to Stop the Organization from Stifling People and Strangling Profits"(1970)。著者のロバート・C・タウンゼント(Robert Townsend,1920-98)は、終戦後アメリカン・エクスプレス社に入り(1948-62)、同社の専任副社長兼取締役を経て、その後、ハーツ(Hertz)に次ぐ全米第2位のレンタカー会社エイビス(Avis)の社長に就任、「わが社は業界第2位にすぎませんが懸命に頑張っています」という有名なキャッチコピーで宣伝し、"ミスター・№2"という綽名で呼ばれた人です。彼が社長に就任してから2、3年の間に、エイビス社は驚異の成長を遂げましたが、1965年に巨大コングロマリットITT(International Telephone and Telegraph)に買収されてしまい(当時ITTエイビスレンタカー.jpgは『プロフェッショナルマネジャー ~58四半期連続増益の男』(`04年/プレジデント社)のハロルド・ジェニーンがトップを務めていたが、そのITTも今は存在しない。ただし、オンライン予約のエイビスレンタカー・システムという会社はグローバル企業として残っていて、日本でもオーバーシーズ・トラベルが運営しており、エイビスレンタカー名義として存在する)、ロバート・C・タウンゼントはその買収された時に即座に社長を辞めています(本書刊行時点で49歳。まだ50代の手前だった)。

組織に活を入れろ (1970年)L.jpg 本書は、マネジメントの要諦を随想風に綴った箴言集とでも言えるものであり、「広告(Advertisement)」から「あいそをつかされるな(Wearing out Your Welcome)」まで、おおよそ100近くの章がタイトルのアルファベット順に並んでいて、目次を見て関心のあるタイトルを選び、どこから読んでも読めるようになっていて、また、何れも含蓄に富んだ内容となっています。

 「側近」(p28)の章では、側近であることが楽しくてたまらないやつは吸血鬼だけだと言い、併せて、最も良い組織形態のあり方を説いています。「組織内の衝突」(p49)では、衝突は組織が健全であることを示す証拠ではあるが、それには限度があり、すぐれたマネジャーは衝突をなくしようとはせず、ただ、そのために部下のエネルギーが浪費されるのを防ごうとするとしています。「権限の委譲」(p60)では、口先だけの信頼を示す人は多いけれども、重要な問題を処理する権限を委譲する人は少ないとしています。

 周知の通りアメリカは契約社会ですが、「雇用契約なんか、くそ食らえ」(p72)では、雇用契約がなければ、会社はたえず挑戦的な溌剌とした雰囲気を保って、報酬が業績と見合うようにしなければならず、その方がいいとしています。「株主にたえず報告を送れ」(p112)では、株主は、会社の経営状態が順調なときはこうるさい存在にすぎないが、状態が悪化してくると、会社の存立を脅かす絶大な脅威となりうるとし、株主に対する情報連絡のコツを示しています。

 「職務明細書」(p115)では、ジョブ・ディスクリプションは職務の"冷凍品"にすぎず、いちばんまずいのは、その職務を理解していない人事部門の人間によって作成されていることであり、しょっちゅう改訂するので、むやみに金がかかるばかりか、社員の士気を大いに阻喪させるとしています。「弁護士は負債になりかねない」(p120)では、正しい法律的な助言を受けられるかどうかは、法律事務所の選び方よりも、弁護士そのものの選び方にかかっているとしています。

 「指導者とは」(p122)では、「人々を導かんとするならば、人々の後を行くべし」という老子の言葉を引いて、指導者の任務は部下の利益をはかることであって、自分の懐を肥やすことではなく、戦場において将官は最後に飯を食うべきだとしています。現代の大会社の人々は、管理されているだけで指導されてはおらず、人間ではなく職員なのだとも。「二つの経営者層」(p125)では、"トップ"マネジメントとはフクロウがわんさかたむろしている樹木のようなものであり、社長以下のマネジメントが森の中で道を間違えたりするとぶうぶうわめきたてるが、森がどこにあるかを彼が知っていたという話は一度も聞いたことがないと皮肉っています。

 「経営コンサルタント」(p129)では、有能な経営コンサルタントは一匹狼だけで、徒党を組んでいるやつは破壊的であり、時間を浪費し、金を使わせ、優秀な社員たちの頭を混乱させて士気をくじき、何の問題も解決しないどころか、問題を増やすばかりだとしています。「社員」(p166)では、マグレガ―のⅩ理論とY理論を分かり易く説いています(この章は8ページで、これで長めの方)。「人事」(p175)では、あまり大きな会社でなければ人事課はいらないとし、人事管理の専門家の悪い癖は、職務明細書、配置転換チャートなどといったカラクリを弄ぶことだとしています。

 その他、「死後硬直状態の組織図」(p164)、「内部の者を抜擢しろ」(p191)、「再組織化」(p201)、「給料が不当に安いとき」(p237)といった、組織と人事に関する章が数多くあり、人事パーソンにとっても読み所は多いと思われます。また、最後に附録として、「あなたのボスの指導者としての価値の採点法」というものも付されています。

 ピーター・ドラッカーは著者タウンゼントを評して、「無類の革命家であり、無類の風刺化であり、恐れることを知らぬ正義の人である。彼はいかにして人々に働く意欲をわかせるかということに焦点をおかない経営学には、いっさい目をもくれない。彼は偉大な実業家あるいは偉大な経営者の一人として歴史に名をとどめることはないだろう。彼は偉大な将軍ではなく、それよりも難しい、偉大なゲリラ指導者であるからだ」としています。

 冒頭の著者自身による覚え書には、たいがいの会社では、働いている人に共通するのは、従順であること、退屈していること、そして生気のないことであり、彼らは組織系列の小さな囲いの中に閉じ込められたまま、誰も変えることができないために惰性で運用されている階級制度の奴隷となっているとし、本書は、こうした状況を打開するために、「われわれが奉仕している組織の装備を片っ端から剥ぎ取って、組織がわれわれに奉仕している部分だけを残す」そのための非暴力のゲリラ戦を開始する方法について述べたものであり、非マンモス会社ないしはマンモス会社の非マンモス部門を、従業員が人間として扱われるように運営させる勇気と、ユーモアとエネルギーをもった人々に、この本を捧げたいとあります。

 語られている言葉が今もって全く風化していないことに、著者の慧眼が窺えます。人事パーソンのみならず、企業組織やマネジメントに関わる人に遍(あまね)くお薦めできる本です。

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【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)

   



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