【2752】 ◎ ダニエル・クイン・ミルズ (スコフィールド素子:訳) 『ハーバード流人的資源管理「入門」 (2007/02 ファーストプレス) ★★★★☆

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人的資源管理(HRM)の基本項目と、それらを実行し、成功に導くためのポイントを示す。

ハーバード流人的資源管理「入門」0.jpgハーバード流人的資源管理「入門」.jpg   D. Quinn Mills.jpg D. Quinn Mills
ハーバード流人的資源管理「入門」

ハーバード流リーダーシップ[入門].jpgハーバード流マネジメント[入門].jpg ハーバード・ビジネススクールでリーダーシップや経営戦略を教えるダニエル・クイン・ミルズ教授による、『ハーバード流リーダーシップ[入門]』『ハーバード流マネジメント[入門]』に続く[入門]シリーズの第3弾であり(D. Quinn Mills"Principles of Human Resource Management"(2006))、人的資源管理(HRM)の基本項目や課題と、それらを実行し、成功に導くためのポイントを示した本です。

ハーバード流リーダーシップ「入門」』『ハーバード流マネジメント「入門」 (マインドエッジ)
   
ハーバード流人的資源管理「入門」2.jpg 序章においてまず、本書は、ライン・マネジャーと人事部門の協力関係について書かれた本であるとしています(本書は、人的資源管理は、ライン・マネジャーと人事部門の協力関係なしには成立しないとの考えに立っている)。ライン・マネジャーの役割は、人事制度は何を目的に設計されているかを理解したうえで、それを十分に活用し、担当部門の業績を向上させることにあり、一方、人事部門の役割は、ライン・マネジャーを助け、カウンセリングを行い、サポートすることであるとしています。そのうえで、人的資源管理には、1.チームの編成と育成、2.チームへのインセンティブ、3.公正な待遇、4.ワーク・ライフ・バランスの4つの分野があるとし、以下4章にわたり、各分野にどういった基本項目が含まれるか、それらを効果的に実行していくにはどうすればよいか、その際の人事部門とライン・マネジャーのそれぞれの役割は何かを解説しています。

 第1章「チームの編成と育成」では、①人的資源計画、②採用、③人的資本の形成、④コミュニケーションの4つの項目について解説しています。この章では、まず、人的資源計画を立てる際にはマネジャーを参画させ、また、人的資源計画の目標を長期事業計画と連動させることが重要であるとしています。また、人材争奪戦に勝つためにはどうすればよいか、効果的な採用活動を行うための手法や考え方を説いています。更に、人的資本とは何か、研修や教育においては大切なことは何かを説き、また、コミュニケーションによって従業員の満足度を高めるにはどうすればよいかを、ステップごとに解説しています。

 第2章「チームへのインセンティブ」では、①パフォーマンス・マネジメント(社員の業績管理)、②報酬、③福利厚生の3つの項目について解説しています。会社の成否はパフォーマンスにかかっており、では、パフォーマンスを改善する人事考課とはどのようなものかをまず解説しています。また、報酬制度について、一般的な給与体系を説明するとともに、その仕組みの意義や重要性を解説し、勤労意欲を高めるための報酬制度などを紹介しています。更に、福利厚生とは何か、その主なものを取り上げ、解説しています。

 第3章「公正な待遇」では、①均等な雇用機会、②従業員の権利の2つの項目について解説しています。この章では、均等な雇用機会を与えることの重要性を説くとともに、従業員とパートナーとして関係を築くためには、従業員の権利を尊重することが大切であるとしています。

 第4章「ワーク・ライフ・バランス」では、ワーク・ライフ・バランスの重要性を考え、従業員に対してカウンセリングを行って、仕事と生活のバランスをとることなどを提案しています。

 経営戦略と人的資源管理の融合から、適切な人材の採用、配置、育成、評価まで、人的資源管理の課題や基本項目を広くカバーした入門書でありながら、真に人を育成し、自己実現をサポートすることで、企業も伸びていけるという確信のもと、人事部門の役割を非常に能動的(戦略的)なスタンスで説いている本であり、通常の入門書にありがちな無味乾燥感はありません。それどころか、ライン・マネジャーと協働して人的資源管理を成功に導くために、人事パーソンとして知っておくべき多くのヒントが含まれているように思いました。

 例えば、人的資本の形成(研修)のところでは、ともすれば「社員教育」で一括りにさえがちな概念を、WAHTを学ぶ「訓練」と、WHYを学ぶ「教育」に分けていますが、この違いが認識されるだけでも、本書を読む価値はあるのではないかと思われます。

 法律に関する記述などの面で日米の違いはあるかと思いますが、本書を読んでいてそれほど突っかかり無く読めるということは、人事部の役割=人的資源管理(HRM)という面で、かつてほどの日米の違いは無くなってきているのかもしれません。

《読書MEMO》
●訓練とは、物事をどのように行うかを教えることである。教育は、それになぜかが加わる。この違いは重要である。ほとんどの組織で は幹部と有望な幹部候補だけが教育を受ける。それ以外の社員が受けるのは訓練である。
●人的資源計画で重要な3つの活動
・適切なスキルを備えた人材を特定し、適正な数だけ揃える
・彼らの勤労意欲を高め、優れた業績を達成する
・事業目標と人的資源計画のお互いの連動をはかる
●(研修の)真価を評価するためには、次の三つの評価を行うとよい。 第一に、参加者が何を学んだかを直接テストする。第二に、学んだ ことを使って職場で以前と異なる行動をとっているかを研修後に調 査する。第三に、研修後、個人あるいはグループの業績は向上した かを評価する。
●組織が学習する方法はいくつかあるが、その主なものは、個人が学習し、個人から集団へと知識を移転する方法である。その仕組みが整っていれば、組織にとって大きな強みになる。
●メンタリングは、後輩にとって非常に貴重な経験となることが多い。経験を積んだ人に自分自身のキャリアについて、あるいは自分が抱えている問題について質問を投げかけ、相談する機会である
●給料を補足する目的の賞与は、社員の業績に基づく場合が多い。これは一般的に三種類ある。標準的な一時金、利益分配、成果分配である。こうしたものに多額の費用をかける企業は多いが、残念ながらモチベーション効果は大方失われている。

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