【2749】 ◎ シリル・ノースーコート・パーキンソン (森永春彦:訳) 『パーキンソンの法則―部下には読ませられぬ本』 (1961/07 至誠堂) 《(上野一郎:訳) 『新編 パーキンソンの法則―先進国病の処方箋』 (1981/03 ダイヤモンド社)》 ★★★★☆

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物事の本質を見透かす力と逆説的なユーモアのセンスが光る。

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パーキンソンの法則 (至誠堂選書)』['96年]/『新編パーキンソンの法則―先進国病の処方箋 (1981年)
パーキンソンの法則―部下にはよませられぬ本 (1965年) (至誠堂新書)
パーキンソンの法則―部下にはよませられぬ本 (1965年).jpg 1958 年に原著が刊行された「パーキンソンの法則(Parkinson's law)」は、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースーコート・パーキンソン(Cyril Northcote Parkinson)が英国エコノミスト誌(1955/11/19 号)に発表した風刺コラム「Parkinson's law」から始まっています。彼は英国の官僚制度に関する研究を行い、官僚制度(企業の管理機構等も含む) に内包する問題点・非合理性を鋭い観察眼で指摘して、世の共感を得、日本でも「パーキンソンの法則」が流行語になるほど普及しました。

 「パーキンソンの法則」とは―、
第1法則: 仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する、
第2法則: 支出の額は、収入の額に達するまで膨張する、
第3法則: 拡大は複雑化を意味し、組織を腐敗させる、
凡俗法則: 組織はどうでもいい物事に対して、不釣り合いなほど重点を置く、
 ―以上のようなものを指すとされていますが、第1法則も第2法則も官僚世界では「時間はあるだけ使ってしまう」「金はあるだけ使ってしまう」という「貴重な資源を使い切ってしまう」点で共通性があります。

 邦訳は、翻訳者によって取り上げる章とその順序が異なりますが、ここでは、原子核物理学者の森永晴彦氏の訳による至誠堂選書版『パーキンソンの法則―部下には読ませられぬ本』('81年4月)に概ね準拠します。

 第1章「パーキンソンの法則-公務員は如何にしてふえるか」では、役人の数は、仕事の量や有無に関係なく増えるとし(パーキンソンの第1法則)、①役人は部下を増やすことを望むが、ライバルは望まない、②役人は互いのために仕事をつくり合う、の2つがその動因だとしています。自分の仕事が過重だと感じるようになった役人Aは、1.辞めるか、2.同僚Bと仕事を分かち合うか、3.2人の部下C、Dの助力を求めるかで、この中で3番目の方法以外が選ばれたことは歴史的に殆どないとしています。そして、英国の植民地省の役人の人数が、英国の植民地が次々独立して植民地でなくなって行く過程でもその数は増え続けたという実証例に挙げ、時として大企業でも、役所と同類のこうした大企業病と言われる事態に陥ることがあるとしています。

 第2章「民衆の意思-中間派の理論」では、議会制度における(議題を理解する能力のない)中間派の操縦法を説いています。会議の決議においては中間派の票が最終的に重要であり、議会における勝利を得るためのキーは、反対者の説得ではなく、明確な意見を持たない中間層を引き込むことであり、それは会場の議席の配置によっても大きな影響を受けるとしています。

 第3章「高度財政術-関心喪失点」では、予算審議に必要な時間は、金額が巨大になりイメージが沸かなくなればなるほど短くなるとしています。内容が難しい事案ほど短時間で議決され、誰にでも判る簡単な事案の審議時間は長くなる、つまり、誰でも口を出せる事案では発言者が多くなり、審議時間が長くなるとしています(パーキンソンの凡俗法則)。本書では、原子力に関する議題は理解できる人が殆どいないために5分間で採決されてしまうが、役所で使う事務用品などの議題では誰もが一見識をひけらかし、採決に2時間もかかり、その後出席者は、自分は有益な仕事をしたとの満足感で議場を去る―と皮肉を込めて書かれています。

 第4章「閣僚の定数-非能率の係数」では、委員会の最適な人数は5人~7人程度で、20人を超えると運営不可能になるとしています。従って、内閣や委員会において、そのメンバーは22人未満とすべきであり、22人以上であればその組織は有効なものになり得ず、構成メンバーの機能としては、大蔵、外務、防衛、法務の5人に限ればそれが良いとしています。

 第5章「人選の原理―採用試験と求人広告」では、旧式の英国式面接では人材の採否は家柄で決定した一方、中国(科挙制度)では多くの選抜を経て官吏登用者が決まったとしています。今後の求人の在り方としては、人材取得に時間をかけることを避けたいのであれば、募集内容に具体的な内容を記載すれば良いとし、1人の求人に対して応募者1人というのが最も望ましいが、そのためにはどのような求人広告を出せばよいかをユーモラスに説いています。

 第6章「非建設的建築-行政のしこり」では、立派な建造物は組織の衰退の兆しであるとしています。ある組織の立派な建造物の建設計画はその組織の崩壊点に達成され、その建築が有効活用されることは少なくともそのとき必要とされた組織によってはされない。その完成は組織の終息や死を意味すること(パーキンソンの第3法則)を、ルイ王朝の宮殿を例に引いて説いています。

 第7章「人物映写幕―カクテル・パーティーの公式」では、カクテル・パーティーにおける重要人物の見分け方を説いています。その人物は、パーティ開始後75分から90分後に遅れてやって来て、E7(会場を左からA,B,...Eと分け、入り口から奥に向かって1,2,3...8と分けたときのE7の方形)の中におり、グループの中心となっている人物であるとしています。

 第8章「劣嫉症(インジェリティティス)-組織病理学」では、組織のマヒは、「劣嫉症の出現:劣嫉症(第1期)」→「優秀な人物の排除:独善(第2期)」→「劣嫉症のみの組織の形成:無関心(第3期)」の順で進行するとしています。治療の原則は、①治療を行うものと、治療をうけるものが同一人物ということはあってはいけない。②第1期と第2期は治療可能であるが、第3期は治療不可であること。治療の方向性として、第1期は、叱咤激励、報奨の実施、第2期は外部からの人材補充による組織の活性化、第3期は隔離し、速やかに組織を潰すことであるとしています。

 第9章「苦力(クーリー)百万長者の話―中国風成功」では、中国人のお金持ちは決して目立ってそれを表すことはなく、その理由は、目立てば、身代金、納税、マスコミ対策に対する出費がかさむからであり、逆に、目立ってそれを見せている人は、そのような対策を気にする必要も無いほどの権力を得た者たちであるとしています。

 第10章「恩給点の解析―退職の潮時」では、退職する側とその後を引き継ぐ者の年齢差から適切な退職時期について考察しており、退職させる方法としては、退職させるべき人を退職させるためには、海外の視察をハードスケジュールで行わすといったものが挙げられるとしています。

 本書の内容は、「膨大な研究のもとこれらが纏め上げられた」とのことですが、その中には確かに数学的根拠に基づいているものもありますが、むしろ、著者の経験則からくる物事の本質を見透かす力と逆説的でアイロニカルなユーモアのセンスが大きく反映されているように思います。

 本書が書かれた1950年代の終わりは、人間関係論学派が米国で開花し、大量生産と並んではびこっていた官僚主義が批判に晒されていた時期と一致します。マックス・ウェーバーの予言した「書類を生産する機会」という官僚モデルが現実のものとなり、何層にも重なる管理担当者によって組織の動脈硬化が進行していた時期に書かれたものではありますが、そうした1958年という企業における官僚主義の絶頂期において書かれたものが、今現在においても読む者の共感を呼ぶのは、人と組織の関係性というものは一定の普遍的特性を持っていて、変わろうとしてもそう簡単に変われるものではないということの証しではないでしょうか。

【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)

パーキンソンの法則―はだかの経営学.jpgパーキンソンの第2法則.jpg
森永晴彦 訳[至誠堂]...【1961年6月単行本(『パーキンソンの法則―部下には読ませられぬ本』)/1965年新書版(『パーキンソンの法則―部下にはよませられぬ本 (至誠堂新書)』)/1981年選書版(『パーキンソンの法則―部下には読ませられぬ本 (至誠堂選書2)』)】
上野一郎[ダイヤモンド社]...【1981年3月単行本(『新編 パーキンソンの法則―先進国病の処方箋』)】

パーキンソンの成功法則 (1963年)
パーキンソンの第2法則かねは入っただけ出る (1965年) (至誠堂新書)

《読書MEMO》
●至誠堂選書版『パーキンソンの法則―部下には読ませられぬ本』('81年4月)森永晴彦(原子核物理学者)氏訳
1 パーキンソンの法則―公務員は如何にしてふえるかパーキンソンの法則―公務員は如何にしてふえるか
2 民衆の意志―中間派の理論―
3 高度財政術―関心喪失点―
4 閣僚の定数―非能率の係数―
5 人選の原理―採用試験と求人広告―
6 非建設的建築―行政のしこり―
7 人物映写幕―カクテル・パーティーの公式―
8 劣嫉症(インジェリティティス)―組織病理学―
9 苦力(クーリー)百万長者の話―中国風成功法―
10 恩給点の解析―退職の潮時―
●ダイヤモンド社版『新編パーキンソンの法則―先進国病の処方箋』('81年3月)上野 一郎(学校法人産業能率大学理事長)氏訳
政府
1 パーキンソンの法則 ― 役人はどんどん増える(至誠堂版1 パーキンソンの法則―公務員は如何にしてふえるか)
2 二十一年後 ― 私の預言は当たったか
3 パーキンソンの第二法則 ― 金は入っただけ出る
財政
4 些事こだわりの法則 ― 関心得失の分岐点(至誠堂版3 高度財政術―関心喪失点)
5 課税の限界 ― 二0パーセントをこすと...
6 税金のがれ ― 節税と脱税
人事
7 適格者選択の原理 ― 総理大臣の選び方(至誠堂版5 人選の原理―採用試験と求人広告)
8 ナンバー2 ― あなたは社長になれるか
9 先輩を退陣させる法 ― 退職の潮時(至誠堂版10恩給点の解析―退職の潮時)
戦術
10 嫌な奴="ノー・マン" ― 役所でOKをもらう法
11 引延しの法則 ― 「ノー」といわずに「ノー」という法
12 大衆の意思 ― 中間派が決定を左右する(至誠堂版2 民衆の意志―中間派の理論)
組織
13 閣僚の数は何人が適性か ― 能率、非能率の分岐点(至誠堂版4 閣僚の定数―非能率の係数)
14 劣等感とやきもちの病 ― 停滞組織の治療法(至誠堂版8 劣嫉症(インジェリティティス)―組織病理学)
15 建物が豪華になると ― 組織衰退の徴候(至誠堂版6非建設的建築―行政のしこり)
法則
16 真空の法則 ― 打つ手が悪いと...

     
     




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