【2747】 ◎ リンダ グラットン (池村千秋:訳) 『ワーク・シフト─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>』 (2012/07 プレジデント社) ★★★★☆

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○経営思想家トップ50 ランクイン(リンダ・グラットン)

働き方の未来を明るいものとするための3つのシフト。"意識高い" 系だが、示唆に富む。

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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワークシフト1.jpg 2025年、われわれはどんなふうに働いているのか? ロンドンビジネススクール教授であり、経営組織論の世界的権威で働くことについて研究し続けてきた著者(英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりでもある)が、「働き方に大きく影響する『五つの要因(32の要素)』」を基に、2025年を想定した働き方の未来を予測した本です。

 序章において、未来を理解し、未来ストーリーを描いて自分の選択の手掛かりにし、職業生活に関するいくつかの常識を根本から〈シフト〉させれば、より好ましい未来を迎える確率を高められるとして、働き方を変える三つの〈シフト〉を提唱しています。

 第1部「なにが働き方の未来を変えるのか」(第1章)では、働き方の未来を形づくる五つの要因として、①テクノロジーの進化、②グローバル化の進化、③人口構成の変化と長寿化、④社会の変化、⑤エネルギー・環境問題の深刻化、を挙げて、それぞれ解説しています。

 第2部と第3部では、これら五つの要因の組み合わせを基に、2025年の人々の働き方の予測シナリオを架空の人物ストーリーとして描いています。

 第2部「『漫然と迎える未来』の暗い現実」(第2章~第4章)では、暗い未来予測図として5人のストーリーがあり、3分間隔でいつも時間に追われ続ける未来(第2章)、人とのつながりが断ち切られ、孤独にさいなまれる未来(第3章)、繁栄から締め出された新たな貧困層が生まれる未来(第4章)が描かれています。

 第3部「『主体的に築く未来』の明るい日々」(第5章~第7章)では、明るい未来予測図として7人のストーリーがあり、みんなの力で大きな仕事をやり遂げるコ・クリエーションの未来(第5章)、積極的に社会と関わることで共感とバランスのある人生を送ることができる未来(第3章)、ミニ起業家が活躍し、創造的な人生を切り開く未来(第4章)が描かれています。

 第4部「働き方を〈シフト〉する」(第8章~第10章)では、冒頭に示した第一のシフトとして、ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ(第8章)、第二のシフトとして、孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ(第9章)、第三のシフトとして、大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ(第10章)という三つのシフトについて解説しています。

 第8章「第一のシフト―ゼネラリストから『連続スペシャリスト』へ」では、なぜ、「広く浅く」ではだめなのか? 高い価値をもつ専門技能の三条件とは何か、未来に押しつぶされないキャリアと専門技能とは何かを解説し、あくまでも「好きな仕事」を選ぶこと、移動と脱皮で専門分野を広げること、セルフマーケティングを通して、カリヨン・ツリー型のキャリアを築くことの重要性を説いています。つまり、1つの企業でしか通用しない技能で満足せず、高度な専門技術を磨き、他者との差別化をするために「自分ブランド」を築くことが肝要であるということです。

 第9章「第二のシフト―孤独な競争から『協力して起こすイノベーション』へ」では、未来に必要となる三種類の人的ネットワークを掲げ、ポッセを築くこと、ビッグアイデア・クラウドを築くこと、自己再生のコミュニティを築くことを勧めています。難しい問題に取り組む上で頼りになる少人数の「同志(ポッセ)」グループとイノベーションの源泉となるバラエティに富んだ大勢のネットワーク(ビックアイデア・クラウド)と打算のない友人関係(自己再生のコミュニティ)という三種類のネットワークを構築することが求められるということです。

 第10章「第三のシフト―大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ」では、なぜ、私たちはお金と消費が好きになったのかを考察し、消費より経験に価値を置く生き方へシフトすることを説いています。経済・消費第一優先から、家族や趣味、社会との絆といった創造的経験を重んじる生き方に転換することになります。

 ある種「未来学」ではありますが、データの裏付けがあって説得力があり、また、働き方の未来図を人物ストーリーとして描いているために分かり易いです。一方で、著者が提唱する〈シフト〉は、あまりに"意識高い"系であり、ついていけないと感じる読者もいるかもしれません。しかし、世の中は次第に著者の描く未来図に近づいていくのではないでしょうか。それを「明るい未来」とするにはどうすればよいか考える上で多くの示唆を含んだ本であり、働き方のこれからやキャリアというもの考えるにあたって欠かせない1冊であることは間違いないと考えます。

【2298】 ○ 水野 俊哉 『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』 (2014/04 ティー・オーエンタテインメント) 
【2794】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『プロがすすめるベストセラー経営書』 (2018/06 日経文庫)

ライフ・シフト2.jpg リンダ・グラットン 来日1.jpgリンダ・グラットン 2016年10月来日『LIFE SHIFT』発売記念講演「100年時代の人生戦略」

《読書MEMO》
●未来を形づくる5つの要因と32の要
要因1.テクノロジーの進化
①テクノロジーが飛躍的に発展する。
②世界の50億人がインターネットで結ばれる。
③地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになる。
④生産性が向上し続ける。
⑤「ソーシャルな」参加が活発になる。
⑥知識のデジタル化が進む。
⑦メガ企業とミニ起業家が台頭する。
⑧バーチャル空間で働き、「アバタ―」を利用することが当たり前になる。
⑨「人工知能アシスタント」が普及する。
⑩テクノロジーが人間の労働者に取って代わる
要因2.グローバル化の進展
①24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現した。
②新興国が台頭した。
③中国とインドの経済が目覚ましく成長した。
④倹約型イノベーションの道が開けた。
⑤新たな人材輩出大国が登場しつつある。
⑥世界中で都市化が進行する。
⑦バブルの形成と崩壊が繰り返される。
⑧世界のさまざまな地域に貧困層が出現する。
要因3.人口構成の変化と長寿化
①Y世代の影響力が拡大する。
②寿命が長くなる。
③ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える。
④国境を越えた移住が活発になる。
要因4.社会の変化
①家族のあり方が変わる。
②自分を見つめ直す人が増える。
③女性の力が強くなる。
④バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える。
⑤大企業や政府に対する不信感が強まる。
⑥幸福感が弱まる。
⑦余暇時間が増える。
要因5.エネルギー・環境問題の深刻化
①エネルギー価格が上昇する。
②環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる。
③持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる。

●ワーク・シフト:3つのシフト
第一のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
•ゼネラリスト的な技能から専門技能の連続的習得へシフト
•資本:知的資本
•資質:①専門技能の連続的習得、②セルフマーケティング
•対応:広く浅い知識を持つのではなく、いくつかの専門技能を連続的に習得する。そのためには、時間とエネルギーをつぎ込む覚悟をする。
•高い価値を持つ専門技能の条件
①価値を生み出す、②希少性がある、③模倣されにくい。
•いくつもの小さな釣り鐘が連なって職業人生を形作る「カリヨン・ツリー型」のキャリアが主流となる。
第二のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
・個人主義、競争原理から人間同士の結びつき、コラボレーション、人的ネットワークへシフト
・資本:人間関係資本、人的ネットワークの強さと幅広さ
・対応:高度な専門知識と技能を持つ人たちと繋がり合って、イノベーションを成し遂げることを目指す姿勢に転換する。仕事とそれ以外の要素のバランスを取り、新たに重要となる活動に時間を割く。
・人的ネットワーク
①ボッセ:同じ志を持ち、頼りになり、長期にわたる互恵的な関係(少人数)
②ビックアイデア・クラウド:大きなアイデアの源となる群衆
③自己再生のコミュニティ:頻繁に会い、リラックスしできる人達
第三のシフト:大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
・貪欲に大量のモノを消費し続けるライフスタイルから質の高い経験と人生のバランスを重んじる姿勢へシフト
・資本:情緒的資本、自分の選択について深く考える能力、勇気ある行動を取るための強靭な精神を育む能力
•対応:際限ない消費に終始する生活をやめ、情熱を持って何かを生み出す生活に転換する。やりがいとバランスのとれた働き方に転換する。
・「お金のためだけに働く」という古い考えでなく、「働くのは、充実した経験をするためで、それが幸せの土台」となる。自分の生き方と選択に責任と理解を持つ。
自分の未来予想図を描くためのプロセス
1.不要な要素を捨てる。
2.重要な要素に肉づけをする。
3.足りない要素を探す。
4.集めた要素を分類し直す。
5.一つの図柄を見いだす。
未来に押しつぶされないキャリアと専門技能
1.今後価値が高まりそうなキャリアの道筋
・草の根の市民活動
・社会起業家
・ミニ起業家
2.特に重要性を増す専門技能
・生命科学・健康関連
・再生可能エネルギー関連
・創造性・イノベーション関連
・コーチング・ケア関連
第二のシフトは、難しい問題に取り組む上で頼りになる少人数の「同志(ポッセ)」グループとイノベーションの源泉となるバラエティに富んだ大勢のネットワーク(ビックアイデア・クラウド)と打算のない友人関係(自己再生のコミュニティ)という三種類のネットワークを構築すること。
第三のシフトは家族や趣味、社会との絆といった創造的経験を重んじる生き方に転換すること。

  



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