【2743】 ○ 朝日新聞出版 (編) 『私をリーダーに導いた250冊 (2016/10 朝日新聞出版) ★★★☆

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優れたリーダーはどんなに忙しくても本を読んでいる。女性が1人もいないのが残念。

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私をリーダーに導いた250冊 自分を変える読書』(2016/10 朝日新聞出版)

「リーダーたちの本棚」.jpg 2009年1月から2016年9月の間に「朝日新聞」の広告特集として掲載された連載「リーダーたちの本棚」から50回分を加筆修正して収録したものです。ビジネス界のトップリーダーが、自分が若い頃から今までに読んだ本の中で影響を受けた本について語り、他人に薦めたい本を5冊程選んで紹介するというものであり、延べ250冊がリストアップされています。

私をリーダーに導いた250冊SL.jpg リーダーがなぜその本を選んだのか、自らの幼少時代や学生時代、社会人になってからの新人時代や海外勤務時代、そして、組織のリーダーや企業のトップになった今におけるエピソードなどを交えて紹介しているので、その人がその本とどう出会い、それをどう読んだのか、そしてどういった影響を受けたのかなどが、その人の人生の軌跡とともに分かるのがいいです。

 50人のどの人についても、経営書だけで5冊選んでいる人はおらず、歴史書、小説、写真集、漫画までその種類は幅広く、また古典から比較的新刊の本まで多岐に及んでいます。よくこれだけの読書人を探したものだなあという気もするし、優れたリーダーというのは、どんなに忙しくても本を読んでいるものなのかもしれないと思ったりもしました。本を読むことを通して、勇気をもらったり、生き方を教わったり、ビジネスの参考にしたりしているのでしょう。

 「百冊の読書は百の人生経験、心に残れば生涯の指針です」「仕事にも息抜きにも本が助けに」「読書の妙味は仕事と同じ。自分にない価値観との出会いである」「読書せずに成長はない」「いろいろ読むほど先入観から解放される」「偏りなく読み、独自の道をさぐる」といったそれぞれの言葉には、実感と重みがあるように思いました。

 1人ずつの本の紹介の最後に、その人が選んだ5冊の書影と概要を整理して掲載してあり、さらに、本の最後の章で「こんな時読みたいブックリスト」として、それまでに紹介された本がジャンル・目的別にまとめられているため、ブックガイドとしても使いやすいものになっています。

 こうしてみると、確かにそれぞれのリーダーの本の選び方は個性的であり、選ばれた本も多様であり、昔のように山岡荘八の『徳川家康』に"一冊集中"するようなことはなくなっています(『徳川家康』を選んだ人も一人ぐらいいたが)。

司馬遼太郎.jpg ただ、それでも複数の人が推す本があったりします。例えば、ノンフィクションで言えば『失敗の本質』(野中郁次郎ほか)、『文明の衝突』(サミュエル・ハンチントン)、小説で言えば司馬遼太郎の『坂の上の雲』や童門冬二の『小説 上杉鷹山』などは3人から4人の人が薦めており(山岡荘八に代わるとすれば司馬遼太郎か。ただし、司馬遼太郎については、『峠』や『項羽と劉邦』、『竜馬がゆく』を選んだ人もいる)、そのほかに『成功の実現』(中村天風)、『道をひらく』(松下幸之助)、『ビジョナリー・カンパニー』(ジム・コリンズ)、『21世紀の資本』(トマ・ピケティ)なども複数の人が推しています。そうしたことから、伝統的な傾向に交じって新たな傾向が窺えるのも興味深いです。

 リーダーということに必ずしもこだわらなくとも、良書を読むことで得るものは何かと大きく、ビジネスの面でも広く人生全般においても、読書は無駄にならないということを改めて思わされるものでした。50人のリーダーが全員男性であり、女性が一人も取り上げられていないのが、海外などのこの種の本との大きな違いでしょうか。その点がやや残念でした。

《読書MEMO》
●本書で紹介されている本(一部)
『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』(武居俊樹著)
『いい加減 よい加減』(野村万之丞著)
『いかに生くべきか』(安岡正篤著)
『生き方』(稲盛和夫著)
『1分間マネジャー』(K・ブランチャードほか著)
『宇宙は何でできているのか』(村山 斉著)
『得手に帆あげて』(本田宗一郎著)
『「空気」の研究』(山本七平著)
『栗の木』(小林秀雄著)
『Googleの脳みそ』(三宅伸吾著)
『錯覚の科学』(C・チャブリスほか著)
『少しだけ、無理をして生きる』(城山三郎著)
『政治と秋刀魚』(J・カーティス著)
『西洋紀聞』(新井白石著)
『世阿弥に学ぶ100年ブランドの本質』(片平秀貴著)
『全一冊 小説 上杉鷹山』(童門冬二著)
『組織を変える〈常識〉』(遠田雄志著)
『知識創造企業』(野中郁次郎ほか著)
『沈黙の春』(R・カーソン著)
『遠き落日』(渡辺淳一著)
『督促OL 修行日記』(榎本まみ著)
『ドラッカーと論語』(安冨 歩著)
『ノムさんの目くばりのすすめ』(野村克也著)
『裸の独裁者 サダム』(A・バシールほか著)
『晩年のスタイル』(E・W・サイード著)
『ヒトは食べられて進化した』(D・ハートほか著)
『陽のあたる坂道』(石坂洋次郎著)
『複合汚染』(有吉佐和子著)
『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(国末憲人著)
『忘れられた日本人』(宮本常一著)ほか

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