【2738】 ○ 遠藤 功 『生きている会社、死んでいる会社―「創造的新陳代謝」を生み出す10の基本原則』 (2018/02 東洋経済新報社) ★★★☆

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「組織論」には違いないが、思った以上に精神論的な「啓発書」だった。

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生きている会社、死んでいる会社―ー「創造的新陳代謝」を生み出す10の基本原則』 遠藤 功 氏
生きている会社、死んでいる会社  image.jpg遠藤 功.jpg 30年にわたり経営コンサルタントとして多くの企業と接してきた著者による本書では、経営において本質的に大事なことはただ1つ、会社が「生きている」ことであり、経営とは「創造と代謝を繰り返す」ことであって、「死んでいる会社」は管理や抑制がメインになり、組織が停滞しているとしています。本書は、「生きている会社」になるための処方箋を明らかにしたものであるとのことです。

 第Ⅰ部では、「生きている会社」とは、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOが言うところのデーワン、つまり創業1日目の活力ある状態を保っている会社であるとしています。会社は「新陳代謝」しなければ創造はできず、「生きている会社」とは「新陳代謝」に長けている会社であり、「生きている会社」であり続けるには、「事業」「業務」「組織」「人」の4つを新陳代謝しなければならないとしています。また、会社は「生き物」であり、会社を「経済体」として捉えるだけでなく、「共同体」「生命体」としての会社を理解しなければならないとしています。

 第Ⅱ部では、「生きている会社」になるための必須条件として、「熱」「理」「情」の3つの要素を掲げています。まず、「生きている会社」は「熱」を帯びているとし、その「熱」の正体は何か、「熱」はどこからくるのか、どうしたら広がるのか、失ってしまった「熱」をどう取り戻すかを説いています。また、「生きている会社」は「理」を探究しているとし、会社は「合理的な存在」でなければならず、戦略レベルと実行レベルのそれぞれにおいて「理」をどう担保するかを説いています。さらに、「生きている会社」は「情」に満ち溢れているとし、「情」とは人の「心」であり、それを満たすことは最も合理的であるとして、仕事の「やりがい」をどう作り出すか、承認欲求をどう満たすかを説いています。

 第Ⅲ部では、どうすれば「生きている会社」を作ることができるかを説き、代謝のメカニズムを埋め込む、骨太かつシンプルな「大戦略」を定める等々、実践すべき「10の基本原則」を掲げています。また、会社が「生きている」かどうかは、ミドル(課長クラス)を見ればわかるとし、課長たちの「突破力」を磨くために必要な「6つの力」を掲げ、さらに、経営者の仕事とは何か、その「4つの仕事」(扇動者・羅針盤・指揮者・演出家)を説いています。

 会社というものを理解する際に、付加価値を生む「経済体」として捉えるほかに、そこにいる人たちの関係性(「共同体」)や人の営み(「生命体」)の集積としての会社に着眼している点は興味深かったです。「見た目の数字」や「業績」より「生きていること」が重要であるとし、「生きている会社」になるための必須条件に、「熱」「理」「情」の3要素を挙げているのは腑に落ちました。

 帯に「働き方が変わる!新しい組織論」とありましたが、全体としては、特に目新しいことを言っているわけではなく、オーソドックスと言えばオーソドックスな内容かと思います(結果的に"総花的"になった印象も)。前半部分は概念的で、かっちり纏まっていると思いましたが、それが中盤から後半にかけて具体的になっていくかと思ったら、確かに事例なども紹介されているものの、それほど深く突っ込んだ紹介でもなく、むしろ精神論の比重が高くなったような印象を受けました。経営コンサルタントの著書という先入観があったかもしれませんが、思いの外に"啓発書"であり、読み手によっては、もやっとした印象で終わってしまう可能性もあるかも。

《読書MEMO》
●生きている企業の3つの条件
「熱」...生きている企業は「熱」を帯びている。
「理」...生きている企業は「理」を探求している。
「情」...生きている企業は「情」に満ちている
●実践すべき「10の基本原則」
・代謝のメカニズムを埋め込む
・骨太かつシンプルな「大戦略」を定める
・「必死のコミュニケーション」に努める
・「言える化」を大切にし、管理を最小化する
●経営者の「4つの仕事」
・扇動者
・羅針盤
・指揮者
・演出家

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