【2737】 ◎ フレデリック・ラルー (鈴木立哉 :訳) 『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』 (2018/01 英治出版) ★★★★☆

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「ティール組織」という新しい組織モデル(パラダイム)を提唱して示唆に富む。

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ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 「ティール組織」という新しい組織モデルを提唱した本ですが、マッキンゼーで組織変革プロジェクトに関わり、現在はコーチ、ファシリテーターを生業とする著者による原著("Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness")は、2014年に自費出版されて以来、12か国語に翻訳されているビジネス書のベストセラーだそうです。著者は、組織の発展段階を色で表現していて、現在、世界中で五段階目の新たな進化型モデルが生まれ始めているとし、これを「ティール(鴨の羽色)」という色(本書カバーの色)で表現し、第Ⅰ部では、これまでの組織の歴史と進化を振り返っています。

ティール組織a.png それによれば、まず、組織形態の前段階として、「無色(グレー)」という血縁関係中心の小集団、「神秘的(マゼンタ)」という数百人の人々で構成される種族があり、組織形態の第一段階が「衝動型(レッド)」モデルで、これはマフィアやギャングなどに見られる、恐怖が支配するものであるといいます。第二段階は「順応型(アンバー)」モデルで、教会や軍隊に見られるように、ここでは規則、規律、規範による階層構造が支配していて、そして、現代の資本主義社会で主流になっているのが、第三段階の「達成型(オレンジ)」モデルであり、多国籍企業に見られるように、目標を設定して未来を予測し、効率を高めてイノベーションを起こすことで成果をあげようとするものであると。但し、達成型モデルにおいては、実力主義によって万人に機会が開かれているが、階層の上にいくほど権限が集中しやすいヒエラルキー構造になって、また、効率と成果を追求するあまり人間らしさを無視してしまいやすく、更には、ますます複雑化するビジネス環境において、計画と予測は機能しなくなる恐れがあるという欠点を抱えているとしています。そこで、達成型モデルへのアンチテーゼとして生まれたものが、第四段階の「多元型(グリーン)」モデルであり、人生には成功か失敗か以上の意味があるとして、平等と多様性を重視し、多様なステークホルダーを巻き込んで合意を形成して物事を進めようとするものであるといいます。しかし、このモデルの極端な平等主義は、多様な意見をまとめきれずに袋小路にはまってしまうリスクも孕んでいるとしています。そして、これらの問題を打破すべく生まれつつあるのが、第五段階の「進化型(ティール)」モデルであり、これは階層構造におけるトップダウン型の意思決定でも、ボトムアップ型の合意形成による意思決定でもない。上司も中間管理職もいなければ、組織図も職務権限規程も肩書もない、変化の激しい時代における生命型組織であるとしています。

 第Ⅱ部では、事例研究によって、ティール組織には、「自主経営(セルフ・マネジメント)」「全体性(ホールネス)」「存在目的」の三つの突破口(特徴)が備わっていること明らかになったとしています。つまり、組織を取り巻く環境の変化に対して、階層やコンセンサスに頼ることなく、適切なメンバーと連携しながら迅速に対応することが可能で(自主経営)、誰もが「本来の自分」の姿で職場に来ることができ、同僚、組織、社会との一体感を持てるような風土や慣行があって(全体性)、更に、組織自体が何のために存在し、将来どの方向に向かうのかを常に追求し続ける姿勢が見られる(存在目的)としています。そのうえで、そうしたティール組織が実際にどのように運営されているのかを、著者らが調査した12の組織の事例を通して"三つの突破口"の観点から紹介しています。

 例えば第Ⅱ部の第2章では、自主経営の例として、2006年に立ち上がったビュートゾルフという、在宅介護支援の新しいモデルを提供する組織の事例が紹介されていますが、その特徴は、マネジャーを持たないチームが、ビュートゾルフが進化するという目的のために完全に独立しているというもので、その特異な組織形態・介護システムによって、7年間で10名から7000名の介護士が働く組織に急成長を遂げたとのことです(より直近のデータによれば10年間で24ヶ国、850チーム、1万人以上)。他社の事例も含め、第3章にかけて、上司もミドルマネジメントも不在のチームが、どのように意思決定を行っているのかを紹介しています。第4章では、そうしたティール組織が全体性を支えるために、開放的な、真の意味で「安心」できる職場環境をどのように整えているのかなどを、第5章では、採用や研修、労働時間管理や評価など人事面でどのような慣行やプロセスを取っているのかを紹介しています。

 第Ⅲ部では、こうしたティール組織が機能するための条件は何か、新たにティール組織を立ち上げる際と、既存の組織をこの新たなパラダイムへと転換させる際のそれぞれについて、念頭に置くべきことは何かを示唆しています。

 本書によれば、ティール組織とは、社長や上司がマイクロマネジメントを行わなくても、組織の目的実現に向けて進むことが出来ている、独自の工夫に溢れた組織のことであり、実は、世界には既にそういった組織が実際に増えてきており、成果を上げている現状があるとのことです。序章で、こうした組織を、「昔のテレビ・シリーズに出てきたような親しみやすい宇宙人」に喩え、「人々の生活に溶け込み、超能力を備えているのだが、ほかの人々からはそのことを認知されていない」と言っています。とは言え、本書に出てくる12社もまだティール組織への移行段階にあり、「自主経営(セルフ・マネジメント)」「全体性(ホールネス)」「存在目的」の三つの条件の全てを完璧に満たしているわけではないとも言っています。

 わが国では現在「働き方改革」の議論は盛んですが、組織の在り方というのは、そうした議論の前提条件としてあるものではないかと思います。「ティール」という新しい組織モデルが(モデルと言うよりパラダイムに近いが)今後どれだけ浸透していくか、ひとつの潮流的なコンセプトとなり得るのか関心が持たれるとともに、これからの社会に適合した組織とはどのようなものかを考えるうえで、たいへん示唆に富む本であると思います。

《読書MEMO》 
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●組織形態の進化
・組織形態の前段階①=「無色(グレー)」:血縁関係中心の小集団
・組織形態の前段階②=「神秘的(マゼンタ)」:数百人の人々で構成される種族
・第1段階:「衝動型(レッド)」:ジャイアンの世界。人を動かすのには最も手っ取り早い豪族やマフィアによる支配。
・第2段階:「順応型(アンバー)」:ピラミッド時代のように身分で支配する世界。支持命令の組織。業務フローはここで登場した。
・第3段階:「達成型(オレンジ)」:技術が進化するとそれぞれの村や国が出会うようになり、武器を発明しないといけない時代。一人一人を測定した能力主義となり、上層部の指示に従う部品だけの人生を歩む人もいる。
・第4段階:「多元型(グリーン)」:家族をメタファとした組織。従業員としてではなく、家族・仲間としてみんなで話し合いエンパワーメントする。欠点としては、なかなか物事が決まらないことと、最終決定はトップ層が決める為、そことの溝だけは大きくなる。
・第5段階:「進化型(ティール)」:上司がおらず、一人一人が意思決定する信頼で成り立つ組織。
達成型パラダイムは組織を「機械」に喩えることが多く、多元型パラダイムでは組織は「家族」のようなものとされるが、進化型パラダイムにおいて組織は「生命体」や「生物」に喩えられる。
●進化型組織の三つの突破口
・「自主経営(セルフ・マネジメント)」:組織を取り巻く環境の変化に対して、階層やコンセンサスに頼ることなく、適切なメンバーと連携しながら迅速に対応すること。セルフ・マネジメントが浸透している組織では、お互いにアドバイスをしつつ、独立したひとり一人が積極的に意思決定をすることになる。
・「全体性(ホールネス)」:メンバーひとり一人が持っている潜在性を全て使って組織を運営することを指す。ここでは、誰もが「本来の自分」の姿で職場に来ることができ、同僚、組織、社会との一体感を持てるような風土や慣行がある。
・「存在目的」:創業者が決めたビジョンやミッション・ステートメントとは違い、変化に適応した方向性を指す。その方向性は一部の限られた人が決めて推し進めるのではなく、組織全体として探求し続けていく中で、組織自体が何のために存在し、将来どの方向に向かうのかを常に追求し続ける姿勢として立ち現れてくる。

  



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