【2725】 ○ 小野 善生 『リーダーシップ徹底講座―すぐれた管理者を目指す人のために』 (2018/04 中央経済社) ★★★★

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現役の管理職にとっても次世代の管理職を育成するためのツールとして活用できる。

リーダーシップ徹底講座.jpgリーダーシップ徹底講座』(2018/04 中央経済社)

 本書は、マネジャーに求められるリーダーシップとマネジメントに関する知識を身につけることを目的として、リーダーシップやマネジメントを学ぶ学生や大学院生、次世代の管理職候補となる若手や中堅の社会人、さらに、現にマネジメントに関わっている現役管理職を対象に書かれたものです。

 第1章では、「マネジメントそしてマネジャーとは?」として、マネジメントとは何かということをドラッカーの主張などに基づいて説明し、『ハーバード流ボス養成講座―優れたリーダーの3要素』(2012/01 日本経済新聞出版社)の著者リンダ・A・ヒルらの研究から導き出されたマネジメントに関する誤解や、マネジメントに関するさまざまな論点を考察、また、組織の概念について、『経営者の役割―その職能と組織』 (1956/09 ダイヤモンド社)の著者チェスター・I・バーナードの近代組織論に基づいて解説しています。

 第2章では、「マネジメントの基本」として、マネジメントの基本となるマネジャーの人間観について、エドガー・H・シャインが『組織心理学』(1981/03 岩波書店)で論じている人間観のモデル(経済人・社会人・自己実現人・複雑人)に基づいて解説し、マネジメントを実行する上で必要不可欠なパワーに関するJ・フレンチとB・H・レイブンによる5類型を取り上げています。

 第3章では、「リーダーシップの基本」と題して、リーダーとは一体何かを、R・J・ハウスらが主張するリーダーシップが生まれる3つのパターン(任命されたリーダー、選挙で選ばれたリーダー、自然発生的リーダー)で解説、次に、マーティン・M・チェマーズの『リーダーシップの統合理論』(1999/02 北大路書房)など、リーダーシップ論の代表的なテキストにおけるリーダーシップの定義を比較検討し、また、リーダーシップを語る上で必要不可欠なフォロワーの存在について、『最前線のリーダーシップ―危機を乗り越える技術』 (2007/11 ファーストプレス)の著者ロナルド・A・ハイフェッツらの主張を紹介、さらに、『サーバントリーダーシップ』(2008/12 英治出版)の著者であるロバート・K・グリーンリーフのサーバント・リーダーシップについて解説しています。

 第4章では、「リーダーシップ論の展開」と題して、リーダーシップ論の歩みを、初期リーダーシップ研究における資質的アプローチ、行動アプローチ、状況アプローチの順でそれぞれの代表的研究を紹介し、それに続く、『カリスマ的リーダーシップ―ベンチャーを志す人の必読書』(1999/12 流通科学大学出版)の著者ジェイ・A・ コンガー、ラビンドラ・N・ カヌンゴらによるカリスマ的リーダーシップ論や、B・J・アボリオの変革型リーダーシップ論について解説しています。

 第5章は、「フォロワーの目から見たリーダーシップ」として、フォロワーの視点を重視したリーダーシップ研究を説明、具体的には、E・P・ホランダーの特異性―信頼理論を取り上げています。また、フォロワーのリーダーシップ認知について、B・コールダーのリーダーシップ原因帰属モデル、R・G・ロードのリーダーシップ情報処理モデル、L・R・オファーマンのフォロワーが抱く暗黙のリーダーシップ論について説明しています。また、J・R・マインドルの提唱したリーダーシップの幻想について解説しています。

 第6章では、「フォロワーシップについて考える」ということで、リーダーシップを受け入れるフォロワーに求められる行動としてのフォロワーシップについて考察し、『指導力革命―リーダーシップからフォロワーシップへ』(1993/11 プレジデント社)の著者ロバート・E・ケリーの提唱した「模範的なフォロワー」や、『フォロワーシップ―上司を動かす賢い部下の教科書』(2009/11 ダイヤモンド社))の著者アイラ・チャレフの提唱した「勇敢なフォロワー」を取り上げています。

 第7章は、「マネジャーに求められるもの」として、管理者行動論の諸研究を説明し、具体的には、『ザ・ゼネラル・マネジャー―実力経営者の発想と行動』(1984/03 ダイヤモンド社)の著者ジョン・P・コッタ―の「ゼネラル・マネジャー」、『マネジャーの実像―「管理職」はなぜ仕事に追われているのか』(2011/01 日経BP社)の著者ヘンリー・ミンツバーグの「マネジャーの仕事」と「マネジャーの実像」の議論、リンダ・A・ヒルらによる「マネジャーの3つの課題」について説明しています。

 本書の前身である『リーダーシップ入門講座―まとめ役になれる!』(2011/03中央経済社)から7年ぶりの改訂であるとのことですが、リーダーシップ論だけでなくフォロワーシップ論についての解説がなされているのが特徴で、さらに最新のリーダーシップ理論も織り込まれてアップデートされています。また、前著に比べ、マネジメント及び管理者行動について掘り下げているのも特徴です。

 テキスト的な本ですが、序章で述べられているように、現役の管理職にとっても、管理職としての経験を振り返って整理し、次世代の管理職を育成するためのツールとして活用できる本であるかと思います(索引はあるが、文中のキーワードを太字にするようなことはしていないのは、読み物としても読めるようんすることを意識したのか)。

 初学者には、なぜリーダーシップ理論を学ぶのか、それが実務に何の役に立つのかといった抵抗感が往々にしてあるものですが、理論をそのまま現実に適用するのではなく、その理論の基本的エッセンスを応用の足掛かりとし、自分なりのリーダーシップ・スタイルを確立させ、自分自身のコアを持つことは大切であり、そのためには、理論体系をまず把握するのが、毎週のように刊行される自己啓発本みたいなものを読み漁るよりずっと効率的であると、個人的には考えます。

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