【2713】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『リーダーシップの名著を読む (2015/05 日経文庫) ★★★★

「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3380】 マイケル・アブラショフ 『アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方

「●本・読書」の インデックッスへ 「●日経文庫」の インデックッスへ

多彩な11冊を、実際にビジネスシーンでありそうなケーススタディで解説。

リーダーシップの名著を読む1.jpgリーダーシップの名著を読む2.JPG             マネジメントの名著を読む.jpg
企業変革の名著を読む (日経文庫)』['15年]  『マネジメントの名著を読む』['15年]

 実務経験豊富な5人の経営コンサルタントらが、リーダーシップについての不朽の名著と言われる11冊を選び、その内容を紹介するとともに、現代における意義を解説したもので、ウェブサイト「日経Bizアカデミー」で2011年10月から連載されている「日経キャリアアップ面連動企画」(経営書を読む)の内容を抜粋、加筆・修正し、再構成したものであり、先に刊行された『マネジメントの名著を読む』('15年1月/日経文庫)の姉妹編にあたります。

 取り上げられているのは、ジョン・コッタ―の『第2版 リーダーシップ論』に始まり、デール・カーネギーの『人を動かす』、スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』、ダニエル・ゴールマンの『EQ こころの知能指数』などの"有名どころ"から、エドガー・シャインの『組織文化とリーダーシップ』やトム・ピーターズらの『エクセレント・カンパニー』、更には、米国海軍の士官候補生向けに書かれた『リーダーシップ アメリカ海軍士官候補生読本』(個人的には"初モノ"だった)、2000年に邦訳が出たビジネス寓話『チーズはどこへ消えた?』、MLB弱小チームの再生を描き、映画化もされた『マネー・ボール』まで多彩です。

 そのラインナップと内容から、「体系」よりも「実践」を重視している印象を受けました。実際、9人のコンサルタントや大学教授が12冊の"座右の書"を紹介した『マネジメントの名著を読む』と同じく、単なる内容紹介にとどまらず、本の内容に関連して、実際にビジネスシーンでありそうなケーススタディを1冊につき4つ設定し、ケーススタディを通して本の内容を解説するというスタイルになっています。

 従って、11冊の中には、「天は自ら助くる者を助く」という序文で知られるサミュエル・スマイルズの『自助論』といった古典も含まれていますが、現代的なケーススタディに当てはめて解説されているため、19世紀半ばに英国で著され、明治時代に日本でベストセラーとなった古典でありながらも、その言わんとするところを身近に感じることができます。

 また、古典ばかりではなく、1990年に刊行され全世界で2000万部が売れたという『7つの習慣』についても、会社の上司と部下の関係をケースに引きながら、「真の成功とは、優れた人格を持つこと」という『7つの習慣』の根底に流れる考え方を提示していくスタイルをとっており、このように、本書自体がリーダーシップの"ケースブック"として読める点が、その特長と言えるかと思います。

 一方で、前著『マネジメントの名著を読む』よりも更に執筆陣の思い入れが強く感じられ(古今数多くあるリーダーシップに関する本の中から僅か11冊をまさに"厳選"しているわけだから、思い入れが無い方がむしろおかしいが)、切り口にも執筆者の経験や考え方が少なからず反映されているように思われました。

 その意味では、この1冊でリーダーシップに関するヒントを手っ取り早く頭に入れるのもいいですが、関心を持たれたもので原著を読んでいないものがあれば、そちらに当たるのもいいのではないでしょうか。そこでまた、執筆者とは違った見方が生じることも大いにあり得るのではないかと思います。

 同じ名著と呼ばれるものでも、「リーダーシップ系」のものは「マネジメント系」のものに比べて、読む人によって相性が良かったりそうでなかったりする傾向がより著しいように思います。「リーダーシップ」に関する本を読むということは、書かれていることを鵜呑みにするのではなく、また、書かれていることの全てに納得する必要もなく、自分にフィットしたものを探す「旅」のようなものではないかと思います。

《読書MEMO》
●取り上げている本
リーダーシップの名著を読む9_1.jpg第2版 リーダーシップ論 帯付 2.jpg1『第2版 リーダーシップ論ジョン・コッター ---- 変革を担うのがリーダーの使命・永田稔(タワーズワトソン)
2『人を動かす』デール・カーネギー ---- 誤りを指摘しても人は変われない・森下幸典(プライスウォーターハウスクーパース)
3『自助論』サミュエル・スマイルズ ---- 「道なくば道を造る」意志と活力・奥野慎太郎(ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン)
4『7つの習慣』スティーブン・コヴィー ---- 人格の成長を土台に相互依存関係を築く・奥野慎太郎
5『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン ---- 自制心と共感力で能力を発揮・永田稔
6『リーダーシップ アメリカ海軍士官候補生読本』アメリカ海軍協会 ---- 米国式リーダーシップの源流・高野研一(ヘイグループ)
7『組織文化とリーダーシップ』エドガー・シャイン ---- 変革はまず組織文化から・永田稔
エクセレント・カンパニー_.jpg8『エクセレント・カンパニートム・ピーターズ他 ---- 優れたリーダーの影響力は価値観にまで及ぶ・高野研一
9『なぜ、わかっていても実行できないのか』ジェフリー・フェファー他 ---- 成果ではなく行動したことを評価・森下幸典
10『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン ---- 変化を受け入れ、いち早く動く・森健太郎(ボストンコンサルティンググループ)
11『マネー・ボール』マイケル・ルイス ---- チーム編成のイノベーション・森健太郎
 
 

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1