【2712】 ◎ 森 摂/オルタナ編集部 『未来に選ばれる会社―CSRから始まるソーシャル・ブランディング』 (2015/09 学芸出版社) ★★★★☆

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CSRとは「企業の社会対応力」。「ソーシャル・ブランディング」の概念・方法論と豊富な成功事例。

未来に選ばれる会社.jpg未来に選ばれる会社:CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(2015/09 学芸出版社)

 企業のCSR(企業の社会的責任)活動に特化したビジネス情報誌「オルタナ」の編集長らによる本です。オルタナ編集部はCSRに特化した取材を8年間続けており、本書はその集大成であるとのことです。

 本書のタイトルである「未来に選ばれる会社」の「未来」とは、「未来の顧客」であり、「未来の社会」であり、「未来の従業員たち」であるとのことです。企業が永続的になるためにはただ営利を追求すれば良いのではなく、「顧客だけでなく社会全体から支持される」ことにより、「未来の顧客」に選ばれるための「強み」を作り上げるための作業が必要であるとし、本書ではそれを「ソーシャル・ブランディング」と呼び、CSRを起点としたその方法論を、国内外20社以上の成功例から実践的に解説しています。

 第1章では、今改めて企業に必要なCSRとは何かを問うています。CSRを訳すと「企業の社会的責任」となりますが、その言葉を、「偉そう」「押し付けがましい」「偽善的」ととらえる経営者は少なくなく、CSRを社会的責任ととらえてしまうと、「納税と雇用で十分」「発信するのはおこがましい」と考えてしまいがちであるとのことです。そもそも責任(responsibility)は、「response」(反応する)と「ability」(能力)から成る言葉で、その原義は「対応力」であるため、本書では、CSRを「企業の社会対応力」と定めています。そして、CSRによって企業価値を高める過程は、①ES(Employee Satisfaction=従業員満足度)、②CS(Customer Satisfaction=顧客満足度)、③SS(Social Satisfaction=社会満足度)、④CSRで株価を上げる、の4つがあるとしています。

 また、最近よく使われる「CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)」という言葉を、「攻めのCSR」という表現にしてもよいとし、「CSR/CSV」の定義として、次の3つを挙げています。
 ①「社会的課題の解決」と「経営的成果」の両方を目的としていること。
 ②企業内で完結する活動ではなく、自治体やNPOなど外部他者との「協働」であること。
 ③未来の顧客やファンを増やし、企業価値やブランド価値を高めるものであること。

 第2章では、ソーシャル・ブランディングの構造を解説しています。ここでは、ソーシャル・ブランディングの活動領域には、「E」(エコロジカル=環境)、「S」(ソーシャル=社会)、「G」(ガバナンス=組織統治)の3つがあるとし、企業のコア・バリューのうち、どの企業でも持っている社会的な部分の比重を高めること、「E」「S」「G」のそれぞれで、企業が「社会的課題の解決」につながる活動を選び、展開していくことが重要であるとし、「製品イノベーション型」(企業が社会的課題を解決するため、これまで市場になかった製品を開発・市場投入する)など、ソーシャル・ブランディングの7つの類型を示しています。

 更に、ソーシャル・ブランディングの8つのステップと27のポイントを示し、ソーシャル・ミッション(企業の社会的使命)をミッション・ステートメントとして明文化することを推奨し、社会的課題を自社製品で解決する「ソーシャル・プロダクツ」という視点とその事例や、ソーシャル・ブランディングの広報面での不可欠な要素(①ネーミング、②言える化、③デザイン化、④差異化、⑤見える化)を紹介しています。この事例編が本書の後半を占めます。

 第3章から第5章にかけては、ソーシャル・ブランディングの実践例が紹介されており、第3章は大企業編(「真のグローバル企業」には攻めのCSRが不可欠―味の素、トップの決断で始まったCSV―キリンほか)、第4章は中堅企業編(子どもの成長を支援し、会社を次世代へつなぐ―ギンザのサヱグサ、CSR/CSVで新マーケットを開拓―山陽製紙ほか)、第5章は海外企業編(競争への危機感がCSRの原動力―英国総論、CSV元祖の最大目標は資源の調達―ネスレほか)となっています。

 当然のことながら、それぞれの企業のコア・バリューは異なり、それを「社会的課題の解決」に活かす際の活動領域(ESG)もソーシャル・ブランディングの類型もこれまた様々であることから、ソーシャル・ブランディングの実践内容は実に多彩であるという印象を受けました。例えば、中堅企業編で、白井グループの「社員をサーフィンと田植えに行かせよう」などといったものもあり、興味深く読めましたが、最終的には、自社のソーシャル・ブランディングの在り方は、自社で頭を絞って考えることになるのではないでしょうか。

 CSRを「企業の社会対応力」ととらえている点は注目すべきであり、こうしたことは人事も無関係ではないはずです。「ソーシャル・ブランディング」という概念にはまだ馴染みのない人事パーソンもいるかと思われますが、本書は「概念・方法論」と「成功事例」の両面からアプローチされているため読み易く、また、大いに参考になるものと思われます。



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