【2708】 ○ 太田 肇 『最強のモチベーション術―人は何を考え、どう動くのか?』 (2016/07 日本実業出版社) ★★★★

「●マネジメント」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2709】 テレサ・アマビール/スティーブン・クレイマー 『マネジャーの最も大切な仕事

「モチベーション」の教科書、解説書、あるいは自省を促す啓発書として読める。

最強のモチベーション術3.JPG
最強のモチベーション術.jpg

最強のモチベーション術』(2016/07 日本実業出版社)

 著者によれば、「若手がなかなか定着しない」「昇進したがらない社員が増えた」「社員がダラダラ残業する」など、経営者が直面している問題のほとんどはモチベーションの問題であり、それだけモチベーションは、経営やマネジメントに深く関わっているにもかかわらず、多くの経営者や管理職はそのことに気づいていないか、気づいていても過小評価しているとのことです。そのため、何かあると見栄えのよい制度をつくるだけで満足したり、精神論やあるべき論で片づけたりしてしたりするとのことです。

 また、いざモチベーション問題に取り組むとして、学校で習ったモチベーション理論やビジネス書にある手法をそのまま試しても、うまくいかなかったり、かえって逆効果をもたらしたりするケースも多いとのことです。そこで、「現実の会社や職場の中の人間が何を考え、どのように行動するか」というところからモチベーションを説明し、「"やる気"は何によって、どうして生まれるか」「モチベーションをいかに高めるか」など、「人を動かす」ためのさまざまな問題を解決するのが本書の狙いであるとのことです。

 第1章では、モチベーションの理論と現実の世界とを照らし合わせながら、本当の「やる気」は何によってどのように生まれるのかを、古今の心理学の研究成果などを紹介しながら説明しています。ここでは、マズローの「欲求階層説」について、承認欲求の充足は、自己実現より重要であるとしており、これは従来からの著者の持論でもあります。また、「期待理論」を紹介し、人間は期待によって動き方を変え、仕事そのものに没頭したり、様々な計算を働かせたりして行動する存在だとしています。「計算づくではない」働き方をしているような場合でも、称賛や将来に対する貸しの意識が潜んでいて、そこにモチベーションが内包されているとの指摘は、納得感がありました。

 第2章では、モチベーションの「量」より「質」が問われている今の時代に、質の高いモチベーションを引き出すにはどうすればよいかが述べられています。まず、「やる気の足枷せ」となっているものを取り除くという観点から、長時間労働、人間関係、過剰な管理、不公平な人事評価、理不尽な待遇の引き下げ、の5つの足枷せをそれぞれ外す方法を説き、次に、やる気を倍増させるツボとして、自律性を高める、認められる機会を増やす、意識を「外」に向けさせる、の3つを挙げ、さらに、チーム力を高めるコツや、自分自身のモチベーションを高めるにはどうすればよいかを説いています。

 第3章では、相手のタイプに応じたモチベーションの高め方について述べられており、タイプによって効果が真逆にもなるとし、女性、中高年、派遣といった属性に応じた動機づけのコツを説いています。第4章では、「職場のコミュニケーションが不足している」「若手が消極的だ」などといった、現場でしばしば問題になる具体的なケースについて、その対策が示されています。

 モチベーション研究の第一人者として、これまで多くの著書を世に送り続けてきた著者が、職場環境や人間関係が複雑化している現代社会におけるモチベーションというテーマに向き合い、教科書的な原理原則から意外な事実、相手の心理を深読みする実践的な手法までを、豊富な事例やエピソードを交えながら説いた本と言えます。

 無理矢理、断定的なもの言いをしていない点が好感を持てましたが、一方で、その分ややもやっとした印象が残る箇所もありました。帯に「人を動かす究極の教科書」とあり、一方で「モチベーション解説書の決定版」ともありますが、そうした読み方もできるし、「管理職」(人事パーソンを含む)が読めば、日頃そこまでモチベーションの問題に取り組んでいるだろうかという職場のモチベーション問題への自ら取り組み姿勢について自覚と自省(リフレクション)を促す啓発書としても読めるように思いました。

 第2章の、やる気を倍増させるツボとしての「認められる機会を増やす」のところが、まさに著者の「承認欲求」論に呼応する箇所であり、表象制度などにも触れられていて、一番'力'が入っていたでしょうか。ここのところで、上手なほめ方、叱り方についても述べていますが、「叱る」という言葉を封印して「改善点を指摘する」へ言葉を置き換えた方がよいとしていて、これは、ケン・ブランチャード 、スペンサー・ジョンソン(著『1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!』('83年/ダイヤモンド社)が改訂されて『新1分間マネジャー―部下を成長させる3つの秘訣』('15年/ダイヤモンド社)になった際に、〈1分間で目標設定する〉〈1分間で褒める〉〈1分間で叱る〉の3つが、〈1分間目標〉〈1分間称賛〉〈1分間修正〉と3つ目が「叱る」から「修正する」に変わったことに対応しているように思いました(偶然ではないだろうと思う)。



ブログランキング・にほんブログ村へ banner_04.gif e_03.gif



和田泰明ブログ

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1