【2694】 ○ 浜屋 祐子/中原 淳 『育児は仕事の役に立つ―「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ』 (2017/03 光文社新書) ★★★★

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「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ移行と、その仕事上のメリットを説く。

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育児は仕事の役に立つ 「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ (光文社新書)』['17年]

 二人の識者の対話形式で成る本書は、書名がそのまま主張になっていて、①「育児をする経験」は、ビジネスパーソンの業務能力発達につながること、その際の育児は、②夫婦のうちのどちらかがひとりで抱えこむ「ワンオペ育児」ではなく、夫婦を中心とする「チーム」として育児を行う「チーム育児」であることを主張しています。本書での「育児をする経験」とは、「共働き世帯における夫婦で取り組む育児」をさしています。

 第1章「『専業主婦』は少数派になる?」では、「共働き家庭」が増加していることの社会的背景を探るとともに、共働き家庭における役割分担の負担が男女で均等になっていないこと、そこには日本の労働慣行や長時間労働の問題が横たわっていることを確認しています。

 第2章「『ワンオペ育児』から『チーム育児』へ」では、共働きしながら育児をする人が増加する中で、母親がひとりで抱え込む「ワンオペ育児」から、父親と母親、さらには祖父母、親戚、保育園などさまざまなサポートを得て行う「チーム育児」に移行することが必要であるとしています。

 第3章「チーム育児でリーダーシップを身につける」では、その「チーム育児」は、実は育児以外にも大きなメリットを持つことを紹介しています。チーム育児を通して、30代を中心とする子育て期の社員にとって、仕事の現場で求められるリーダーシップ行動が高まるという研究成果を示し、なぜリーダーシップ行動が高まるのか、チーム育児がリーダーシップ以外の仕事上の能力向上に与える効果についても考察しています。

 第4章「ママが管理職になると『いいこと』もある」では、第3章に引き続き、チーム育児のメリットとして、チーム育児を行うことをきっかけに、人はマネジメントに魅力を感じはじめるという研究知見を紹介しています。さらに、チーム育児は、親の人間的な成長をもたらすことも紹介しています。

 第5章「なぜママは「助けてほしい」と言えないのか」では、チーム育児が進まない原因のひとつとして、育児を妻かがひとりで抱えこむ「ワンオペ化」があるが、そこには企業の長時間労働の問題のほかに、妻自身が「育児を他に任せてはいけない」「他人に援助やサポートを求めてはならない」と思い込んでいるという心理的要因もあるとし、他人に助けを求めることを肯定的に捉える「ヘルプシーキング」という発想について対話しています。

 第6章「日本の働き方は、共働き世帯が変えていく」では、チーム育児を円滑に進めていくための「3ステップモデル」というものを紹介、最後に、共働き育児は今後どうなっていくのか、将来、人々の働き方や企業、社会、個人はどう変わっていくべきかを論じています。

 大括りすると、第1、第2章でチーム育児が必要となる社会的背景、第3、第4章でチーム育児の仕事への効果と親としての成長へのつながり、第5、第6章で「ヘルプシーキング」という発想と「3ステップモデル」について語られていることになりますが、人事パーソンへの啓発という意味では、第3、第4章が読みどころではないかと思います(同じく提案部分である第6章は、ややもやっとした印象か)。

 全編が対話形式であり、調査データや研究知見を織り込みながらも、それに呼応する対話者自身の経験談もふんだんに出てくるため、読みやすく、また内容がイメージしやすいものとなっているので(夫婦とも正社員で、子どもが2人以上いるケースを対象モデルとした対話になっている)、手にしてみるのもいいのではないかと思います。

 ひとつ意地悪な見方をすれば、「チーム育児」を通してリーダーシップや仕事上の能力向上ができる人は、もともとそうした素養がある人ではないかという気もしなくはありません。女性たちの間で、「育児経験が仕事に活きる」という幻想であり"今できないこと"は産んでもできないとの論もあり、男性についても同じこと("今できないこと"は産まれてもできない)が言えなくもない? 但し、全てを個人の資質論に還元してしまうと、世の中は何も変わらないというのもあるだろうなあ。要するに、どちらから論じるかの違いだけかもしれません。



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