【2687】 ◎ 水町 勇一郎 『労働法 [第7版] (2018/03 有斐閣) ★★★★★

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「事例」設定により、実際に起こり得る労働問題の労働法全体での位置づけが分かるようになっている。

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労働法 第7版』['18年]

 本書は、2007年に初版が刊行された労働法の教科書ですが、第2版以降2年ごとに改訂を重ね、今回が第7版になります。前々回から前回の改訂までの間に、次世代法、パートタイム労働法、労働者派遣法などの改正の動きがありましたが、今回は、雇用保険法、育児介護休業法、男女雇用機会均等法などの改正があり、また、「働き方改革」の実現に向け、労働基準法改正案等が国会に提出・審議され予定であることを踏まえ、そうした法改正(案)の動きを反映したものとなっています。

 全体の構成はこれまでと同じですが(第5版の時に第3編に「第3章 非正規労働者に関する法」が新設された)、本書の特徴は、労働法の背景にある歴史や社会の基盤を踏まえ、労働法の理論と動向を描出していることにあります。また、そうした視点で労働法全体を体系的に整理するとともに、「事例」(基本的には判例に準拠し簡素化されている)によりケーススタディ的に解説することで、実務において実際に起こり得る労働問題が、労働法全体の中でどのような位置づけになるのかが分かるようになっているのも、本書の特徴であるかと思います。

 そうした「事例」が設けられているため、セミナール形式の授業のテキストとしても使えるようになっていますが、「事例」から導かれるそれぞれの論点について、根拠となる条文や法理が網羅されているばかりでなく、そこから結論に至るまでの道筋も丁寧に解説されているため、一人で読むのにもまったく問題ありません。ただし、一人で読む際も、「事例」のところで自身で一度、その事案は労働法上どのような扱いになるかを考えてみたうえで、次に読み進むとよいかと思います。

 全体を通して、判例の立場を重視し、条件や背景の違いによって判決が違ってくる場合があることを、重要判例や最新の裁判例を理論的に分析しながら解説しています。さらには、時代の動向を踏まえつつ、著者なりの見解も述べられています。そうした著者なりの見解は、「考察」といった形で述べられていることもありますが、文中にある「コラム」欄においてもかなり言及されていて、できれば「コラム」欄は読み飛ばさない方がよいかと思います。

 教科書であり、ただし、内容レベル的には専門書でもありますが、一人の著者によって書かれたものであることもあり、全体の統一感があって、内容の硬さのわりには読みやすいです。少しずつ読み進めば、初学者であっても最後まで読み通せるものであり、多忙な企業内実務者についても同じことが言えるかと思います。

 取り上げている判例数も多く、労働法をある程度学んだことがある人にとっても、読み応えは十分かと思います。重要判例については『労働判例百選』(第9版)と対応しているため、さらに判例を堀下げて理解したければ、『百選』を参照しながら読むのもよいかと思います。ただし、読者に裁判例を多く知ってもらうことが本書の目的ではなく、労働法に関するセンスのようなものを身につけてもらうのが目的であると思いますので、まずは本書を通しで読んでみることをお勧めします。



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