「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【2686】 大内 伸哉 『雇用社会の25の疑問 [第3版]』
「柔らかい」けれども「骨のある」内容。初学者のみならず、人事パーソンに広くお薦め。
『プレップ労働法 第5版 (プレップシリーズ)』['16年]
「プレップ」(予習、準備の意味)という名の通り、労働法をこれから学び始める人や実務で労働法の知識が必要となった人向けの入門書です。2006年の初版以来10年を経ましたが、コンパクトながらも労働法の主要な部分を広くカバーしていることに加え、労働法が実際に当てはまる場面を、職場でリアルに交わされていそうな「会話」で織り込みながら分かり易く解説しているため、初学者だけでなく実務者の間でも安定した評価を得ているのではないかと思います([第5版]という改訂数からしても)。
今回は2013年刊行の[第4版]から3年ぶりの改訂ですが、労働者派遣法、障害者雇用促進法の改正に対応する一方で、全体でB6版300ページぐらいのボリュームに抑えているため([第3版]の時は330ページあった)、法律の本と言うより、やや厚めの新書本を読むような感覚で読めるのがいいです。
"職場でリアルに交わされていそうな「会話」"と書きましたが、
―イイズカ人事部長「キミは思ってたより使えないので、本採用しないことにします」
内定者マオさん「えー、そんなあ......今さらそんなこと言われたって困り ます。だいたいですね、そんなに使えるヤツだったらこんな会社に来てないと思います」
ストンと腑に落ちたイイズカ「......(一理あるな)」
―モンスター契約社員ナナコ「なんで私には通勤手当が支給されないんですか? ただ契約が有期だから、ですよね? これは不合理な契約条件の相違です! ああ差別! ああ格差社会!」
ヤマナカ人事部長「違うよ! 会社まで徒歩5分のところに住んでいるからだよ!」
などといった、漫才のような会話が満載で、楽しみながら読めることは請け合いです。分厚い教科書で労働法を勉強しようとして挫折した人も、本書であれば、軽いノリで学べるのではないでしょうか。
ただし、そうしたとっつきやすさもさることながら、解説の方は、最新の裁判例や近年の労働問題のポイントなども踏まえながら、かなり労働法の深い部分に分け入っているため、ただ書かれている内容を覚えると言うよりも、考えながら読む要素が大きく占める本でもあります。その意味では、テキストとして初学者向けに限られるものではなく、今まで労働法をある程度学んできた実務者が読んでも、もの足りなさを感じることはないのではないように思います。
いわば、「柔らかい」けれども「骨のある」内容です。実際、これまでも改訂の度に本書をこっそり(?)読んでいた人事部や法務部の人もおられるかもしれませんが、改めて人事パーソンに広くお薦めしたいと思います。
【2019年改訂第6版】