【2681】 ○ 大室 正志 『産業医が見る過労自殺企業の内側 (2017/06 集英社新書) ★★★★

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上司でも部下でも誰でも気軽に読めるが、人事パーソンにとっても示唆に富む内容。

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産業医が見る過労自殺企業の内側 (集英社新書)』['17年]

 著者によれば、人類は今、史上最も脳が疲れる生活を送っていて、そこに長時間労働や会社の人間関係などでストレスが加わると、「コップから水があふれるように」人はうつ状態になり、最悪、自殺に追い込まれるとのことです。本書は、約30社の産業医を務め、のべ数万人の社員を診てきた著者が、自殺する社員とはどんなタイプか、社員を自殺させる会社の問題点は何か、過労自殺の原因と対処法を説いた本です。

産業医が見る過労自殺企業の内側9.JPG 第1章では、産業医は現代、企業において健康・メンタル両面から働けるかを判断し、社員のカウンセリングとともに企業コンサルティング的役割も担うようになってきているとしています。また、人を過労自殺まで追い詰めるのは、個人的な要因以上に、会社のルール、常識など「構造」に原因があることの方が多いのではないかと感じるとしています。

 第2章では、電通・高橋まつりさん自殺事件の背景を検証し、電通の問題点を挙げていくとともに、他の企業にも思い当たるところがありそうな社員を自殺に追い込む要因や企業風土を解説しています。「業界トップ企業に入社したため逃げ場がない」状況だったとし、また、女性の総合職が少ない企業では、女性総合職の初期時代の、女性の方が体育会系男性カルチャーに合わせていかなければならない風土がまだ残る一方、現代の新卒女性は昔のように肩に力を入れて、男性社会の中でやっていくという気負いを持って入社していないため、そうした企業に入ってギャップに戸惑うことが少なくないと指摘しています。

 第3章では、会社でうつに追い詰められやすい人たちの特徴として、反射的に「大丈夫です」と答える、人に弱みを見せられない、「~すべきではない」という思考に陥りがち、などがあるとし、また、うつはベンチャー企業では軽症が多く、大企業では重篤化するケースが多いとしています。若年層に多い「ありのままの自分を他者に受け入れてもらう」ことにこだわる「アナ雪症候群」、上司の指導をすぐパワハラと思い、逆に放っておかれると不安になる「ネグレクトうつ」、横並び感覚で育ってきたため上下関係に慣れていない「ワンピース世代」、妻が会社を辞めさせてくれない「嫁ブロック問題」...等々、現代のうつの原因となる問題を分かりやすい言葉で説明しています。

 第4章では、社員をうつや自殺に追い込む会社の構造とはどのようなものかを考察。現代は日本企業の伝統的価値観である「家族主義」が崩壊し、新しい働き方へ移行する過渡期であるとし、そうした中、社員に負担をかけ自殺に追い込みかねない古い考えや上司はどんな人なのか、その構造を指摘するとともに、上司も変わらなければならないとしています。この中で、部下に「やりたいこと」ではなく、「絶対やりたくないこと」を聞いてみるというのは、逆転の発想で面白いと思いました。

 最後の第5章では、過労自殺を起こさないために、これからの上司はどんな人が望ましいのか、どういう改革や心構えが必要かを説き、「エンゲージメント・サーベイ」など、すでに始まっている取り組みを紹介しています。結語として、現在「働き方」に関して社会が変わろうとしている中、個人も組織も社会も、新しい時代の安定した状態をさぐるために、「バランス」を再考することが重要であるとしています。

 会社でうつに追い詰められやすい人たちの特徴や、社員をうつや自殺に追い込みやすい会社の特徴、これからの上司はどんな人が望ましいのか、といったことについて、上司でも部下でも誰でも気軽に読めるよう分かりやく書かれていますが、それでいて、人事パーソンにとっても示唆に富む内容の本であり、一読してみるのもいいかと思います。。

《読書MEMO》
[主な内容](Amazon.com 内容紹介より)
第1章 産業医とは何をするのか?
産業医の起源は軍医、つまり「戦場でまだ働けるか?」を判断していた。
現代は企業において健康・メンタル両面から働けるかを判断し、社員のカウンセリングとともに企業コンサルティング的役割も担うように。
第2章 電通自殺事件はなぜ起こったのか?
電通・高橋まつりさん自殺事件の背景を検証。電通の問題点を挙げていくとともに、他の企業にも思い当たるところがありそうな社員を自殺に追い込む要因や企業風土を解説していく。
第3章 会社でうつに追い詰められやすい人たち
●反射的に「大丈夫です」と答える。●「男は泣くな! 」と育てられた。●人に弱みを見せられない。●「~すべきではない」という思考に陥りがち。
●若年層に多い「アナ雪症候群」●上司の指導をすぐパワハラと思う。●逆に放っておかれると不安になる「ネグレクトうつ」●上下関係に慣れていない「ワンピース世代」●学生時代にあった裁量権がなくなった。●妻が会社を辞めさせてくれない「嫁ブロック問題」。...等々。
第4章 社員をうつや自殺に追い込む会社の構造
現代は日本企業の伝統的価値観である「家族主義」が崩壊し、新しい働き方へ移行する過渡期。社員に負担をかけ自殺に追い込みかねない古い考えや上司はどんな人なのか、構造を指摘する。
第5章 過労自殺を防ぐために個人と会社にできること
過労自殺を起こさないために、これからの上司はどんな人が望ましいのか、どういう改革や心構えが必要か、すでに始まっている取り組みなどを紹介。



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和田泰明

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