【2676】 ○ 藤本 雅彦 『若手社員を一人前に育てる―「スタンス」と「スコープ」が人を変える!』 (2018/04 産業能率大学出版部) ★★★★

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若手社員を3つの成長ステージに区分、各ステージの人材育成の要件やポイントを明らかに。

若手社員を一人前に育てる.jpg若手社員を一人前に育てる ~「スタンス」と「スコープ」が人を変える!』['17年]

 本書は、これまでのビジネスにおける人材育成の議論が若手社員や中堅社員を一括りにして論じられることが少なくなかったのに対し、入社直後の新入社員と5年目前後の半人前の中堅社員や9年目頃のベテラン中堅社員では、実際に担当する仕事内容の特性や求められる知識や能力も大きく異なるとの見方から、若手社員126名の成長過程を追った独自のアンケート調査をもとに、若手社員層を3つの成長ステージに区分し、ステージごとの人材育成の要件やポイントを明らかにしています。

 全3部構成の第Ⅰ部では、第1章で、OJTを中心とする職場教育の仕組みのこれまでを振り返るとともに、第2章で、今日の職場教育におけるOJTの在り方を探っています。この中で、意図的な教育が成立するためには、①将来のあるべき姿や到達目標(To be)、②現在の能力状況や課題(As is)、③将来への道筋(Story)が見渡せる「カー・ナビゲーションのような教育」を通して、何を学習し教育すべきかを明らかにする必要があるとしています。その上で、職務遂行に必要な要素を「宣言的知識」「手続的知識」「価値観・態度」「基礎的能力・資質」という4種類の学習成分に分け、さらに、職場における学習と教育の実践方法には、「概念的学習」「モデリング(観察)学習」「経験的学習」「対話による学習」の4種類の形態があるとしています。また、経験学習のメカニズムは、「具体的体験」「内省的観察」「抽象的概念化」「仮仮説検証」の4つのフェーズによるサイクルを回し続けることであるとした上で、第3章で、これからの職場教育の在り方として、徒弟教育と学校教育を融合させたハイブリッド型が望ましいとし、カー・ナビゲーション型の教育を定着させるためにどのような仕掛けや仕組みが必要かを考察しています。

 第Ⅱ部では、第4章で、米国企業と日本企業とでの若手社員の成長を左右する要因の違い調査から分析し、日本企業では入社時の上司が将来的な部下の昇進可能性を左右するとしています。第5章では、若手社員の、入社直後から一人前の中堅社員に成長するまでの9年間の成長プロセスと学習について行った追跡調査をもとに、一般的な日本企業の若手社員の熟達プロセスを探り、入社後9年間の成長の節目となる転機の推移から、若手社員としての初期(1年目から3年目)、半人前の中堅社員として中期(4年目から6年目)、そしてベテラン中堅社員としての後期(7年目から9年目)という3年ごとの成長プロセスの時期を区分しています。さらに、成長の節目となる転機に何を学習するのかを、「業務知識・スキル」「組織行動」「技術スコープ(視野)」「事業・組織スコープ(視野)」「スタンス(態度)」の5つの学習内容に区分し、「スタンス」についてはインタビューを基にさらに内容を分析、その中で「取り組み姿勢」という包括的な表現が圧倒的に多いことを浮き彫りにしています。また、3つのステージ区分のどのような時期に何を学習するのか明らかにしながら、学習と成長のメカニズムを探っています。その上で、一人前に成長した中堅社員のパフォーマンスの創意をもたらす成長プロセスの要因は何かを探り、第6章では、ハイパフォーマーに見られる特徴を、第7章では技術系若手社員の成長プロセスの特徴を、第8章では、事務系若手社員の成長プロセスの特徴を、明らかにし、第9章で、日本企業の若手社員が一人前の中堅社員に成長するための要件を探り、第10章でそのプロセス・モデルを示しています。それによれば、、前期の特徴は「人との出会い」と「基本的なスタンス」であり、中期の特徴は「仕事上の経験」と「セルフ・エフィカシー」(自己効力感)であり、後期の特徴は「挑戦的な仕事経験」と「スコープの拡大」であるとのことです。

 第Ⅲ部では、こうした成長ステージを踏まえ、第11章で入社3年目までの若手社員の人材育成について、第12章で入社5年目前後の半人前の中堅社員の人材育成について、第13章で入社7年目以降のベテラン中堅社員の人材育成について、それぞれの考え方とヒントを示しています。

 著者自身述べているように、「アカデミックなビジネス書」であり、分かりやすく学術的な研究成果を紹介しながら、それらを実践面でどう応用し活用するかということに主眼が置かれているが良いです。また、述べられていることも、実際の調査に基づいて分析しているため説得力があり、若手社員の人材育成について、多くの示唆やヒントを含んだ本であると思います。調査対象の若手社員126名の属性が充分に明かされていないのですが、読んでいて「当て嵌まるなあ」という感じはしました(伝統的日本企業が多い?)。著者自身、「日本企業の若手社員」と何度も断っていますが、こうした知見を実践していくことが、人材育成を重視してきた日本企業の良さというか強みを、改めて喚起することになるのかもしれません。

《読書MEMO》
●ハイパフォーマーに見られる特徴(成長プロセスの要因)(第6章)
・入社直後のネガティブなリアリティ・ショックが小さい
・仕事経験と人との出会いによる成長の転機数が多い
・社外の人との出会いによる成長の転機の頻度が多い
・入社直後の初期にスタンスを学習する頻度が多い
・7年目に成長の転機を経験する頻度が多い
・2年を超える成長の停滞がなく、レジリアンス(回復)力が高い
●日本企業の若手社員が一人前の中堅社員に成長するための要件(第9章)
・入社直後のリアリティ・ショックを回避するための現実的な仕事のプレビュー
・技術系は、入社2年目から困難で不確実な仕事に取り組み、早期かr技術的な視野を拡大する
・入社5年目までに、半人前の中堅社員として高度な業務知識やスキルを確実に習得して自信をつける
・入社9年目までにベテラン中堅社員として、組織的にインパクトの大きな仕事に挑戦し、事業や組織の視野を拡大する。
・「やるときは、やる!」というメリハリのあるワークライフを楽しむ



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和田泰明

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