【2673】 ○ 松丘 啓司 『人事評価はもういらない―成果主義人事の限界』 (2016/10 ファーストプレス) ★★★☆

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米国企業は年次考課をやめている! やめて次に何をあるかが大事。やや概念的すぎるか。

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人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』['16年]

 本書によれば、過去の日本における成果主義の導入に伴って、日本企業がアメリカ式の制度を輸入してきた経緯があり、それまでアメリカの企業においては年次評価と評価によるランク付けがずっと行なわれていたため、日本の制度はアメリカ式に似たものとなったとのことです。こうした目標管理・評価のプロセスを、アメリカでは「パフォーマンスマネジメント」と呼び、本書では目標管理と評価制度を一括りにした意味でそのまま用いています。

 第1章では、今アメリカでは、新たなパフォーマンスマネジメントのトレンドとして、年度目標設定の廃止、中間レビューの廃止、年次評価の廃止、期末フィードバックの廃止といった変化の兆しが見られ、そこには従来のパフォーマンスマネジメントではパフォーマンスの向上につながらないとの考え方があるとしています。アメリカ企業が年次評価を止める背景には、ビジネススピードの変化等ビジネスの要請があり、パフォーマンスマネジメントの変革を行った企業では、人中心経営に舵を切ろうとしているとのことです。

 第2章では、そうした新たなパフォーマンスマネジメントについて、年次評価を止める理由を踏まえて、①リアルタイム、②未来指向、③個人起点、④強み重視、⑤コラボレーション促進、の5つの基本原則を提示し、以下、個々の要素についてさらに詳しく解説しています。

 まず、個々の目標は、その時々の優先度において変化するものであり、その優先度=「プライオリティ」は、①顧客のニーズ・期待、②チームのニーズ・期待、③自分自身の価値観・動機、の3つの視点で設定されるとしています。

 また、目標管理において、メンバーの改善点ばかりを指摘するマネジャーも少なくないですが、新たなパフォーマンスマネジメントでは、弱みよりも強みに焦点を当てるとしています。成果を生み出すための「アクション」は個人の強みによって異なり、人それぞれの強みを活かしたアクションの工夫が望まれるとしています。

 そして、新たなパフォーマンスマネジメントの起点は個人であり、意思決定の主体はマネジャーではなくてメンバーであって、「リフレクション(内省)」と「フィードバック」による1to 1の対話が経験学習をより深めるとして、自分は将来どのように活躍したいのかという(相手の)「キャリアアスピレーション」(を理解すること)が対話を育むとしています。

 また、新たなパフォーマンスマネジメントは個人のパフォーマンスを高めるだけでなく、チーム全体のパフォーマンス向上も狙いとしており、チームエンゲージメントを高め、コラボレーションを促進するには、①コラボレーションの重要性を理解させる、②ゴール設定と方向付け、③自律的行動の奨励、④チーム内外へのコネクション、⑤情報の共有、⑥相互フィードバックの促進、⑦建設的コンフリクトの創出、が求められる行動としてあるとしています。

 さらに、1to 1の対話の内容は、データとして記録され、後から振り返ることができる状態にしておくべきであり、サポートツールはコラボレーションのツールでもあるとして、その活用イメージを示しています。

 第3章では、日本企業における目標管理・評価制度の問題点について、過去からの歴史を振り返り、現在の制度では、パフォーマンスマネジメントは、①形骸化、②業績偏重、③複雑化、といった問題を抱えているとしています。根本的な問題は「成果」の捉え方にあって、マネジャーが弱体化し、プロセス管理が成長意欲の阻害等の問題を生じさせている現状においては、メンバー一人ひとりを動機付け、個人とチームのパフォーマンス最大化を目指す「ピープルマネジメント」に軸足を移すことが求められるとしています。

 第4章では、ピープルマネジメントについて14の視点を挙げ、それらは、個人エンゲージメントを促す視点として、①個人の尊重、②成長意欲、③学習機会、④期待役割、⑤強みの発揮、⑥仕事への承認、⑦キャリアビジョン、チームエンゲージメントを促す視点として、⑧心理的安全、⑨明確なゴール、⑩失敗からの学習、⑪相互理解、⑫目標の共有、⑬情報共有、⑭相互貢献の、それぞれ7つずつであるとしています。

 著者あとがきによれば、本書はもともと第3章、第4章(後半50ページ)にあるピープルマネジメントを主題に執筆することを予定しており、アメリカ企業における年次評価廃止の流れは補足的な解説に留めるつもりであったのが、調査すればするほど、この潮流は一時的な流行ではないとの確信を強め、年次評価の廃止を主題にして第1章、第2章(前半100ページ)としたとのこと(そのため、第1、2章と第3、4章が、一応は後半が前半を受けている形にはなっているのだが、やや切り離されている印象も受けた)。著者自身、日本企業が年次評価をやめてパフォーマンスマネジメントを変革する決断ができるかは未知数であるとしつつも、少なくとも検討を始める価値のあるテーマであることには間違いないとしています。

 タイトルからしてそうですが、非常に刺激的かつ啓発的な内容であると思いました。ただ、年次評価を止めることよりも、次に何をやるのかということの方が大事なのでしょう。年度目標を廃止して、今度はリアルタイムの目標設定にするわけであり、中間レビューを廃止して、これもリアルタイムフィードバックにする。さらに、期末フィードバックも廃止してリアルタイムフィードバックにするわけであって、決して何もしなくともよいということではないので、勘違いしないようにしたいものです。

 全体として体系的によく纏まっていますが、概念的・抽象的なレベルに留まっている部分もあったように思いました(実務感がやや希薄か)。

《読書MEMO》
●【書籍の内容】(著者が代表を務めるエム・アイ・アソシエイツ株式会社のサイトより)
アメリカで年次の人事評価を廃止するトレンドが止まらない。
GE、マイクロソフト、アクセンチュア、ギャップ、アドビシステム、メドトロニックなど、名だたる企業が年次評価の廃止に踏み切っている。
その理由は、年次評価が個人と組織のパフォーマンス(業績)向上に役立っていないと判断されたからだ。
年次評価を廃止した企業では、新たなパフォーマンスマネジメントの導入のために多大な投資が行われている。
年次で社員にA・B・Cとレーティングするのに時間をかけるのではなく、リアルタイム、未来指向、個人起点、強み重視、コラボレーション促進といった原則に基づくパフォーマンスマネジメントを実現することで、より多様な人材を活かし、より変化に機敏な組織の構築を目指しているのだ。
それは、さらなる成長に照準を合わせた人材・組織戦略なのである。
翻って日本企業の現状を見ると、20年前に導入された成果主義人事の仕組みが制度疲労を起こしている。
 ・年次評価が社員の動機付けや成長につながっていない。
 ・目標設定や評価の面談が形骸化し、年中行事のような儀式になっている。
 ・上司が率直にフィードバックできず、評価結果が上振れする傾向にある。
 ・面談では評価の理由説明に終始し、前向きな話題がほとんどない。
 ・評価の内容が業績中心で、人材開発の要素が乏しい。
 ・会社の目標を個人にまで割り振ると全体の目標が達成できると信じられている
  (もはや幻想であるにもかかわらず)。
 ・評価制度を精緻化しようと工夫し続けた結果、複雑になりすぎて現場で運用できない。
 ・多様な専門性や価値観をもった人材を、画一的な尺度で評価すること自体が難しく
  なってきている。
 ・社員が個人主義的になり、コラボレーション力が低下している。
 ・成果主義人事がマネジャーの裁量の幅を狭め、ミドルアップダウンと言われたかつての
 日本企業の強みが失われている。
人事評価はあって当たり前という固定観念を、そろそろ払しょくすべき時期である。

  



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2018年10月 4日 03:55.

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